【読書】「漁港の肉子ちゃん」西 加奈子 著

習慣化の読書時間で読み終わった本を紹介します。

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

西 加奈子 幻冬舎 2014-04-10
売り上げランキング : 1129

by ヨメレバ

ブクログレビュー

読書日数 10日

とある漁港で暮らす、とある家族(?)の物語。西加奈子ワールドが、程なく涙を誘う。本当に読み終わって、心があったかくなる。

主人公は「キクりん」という、小学5年生。なんでも客観的に見る、悪く言えば「斜に構える」おませな女の子である。「肉子ちゃん」はこの子のお母さんらしいが、とても抜けていて、アッケラカンとした性格である。漢字を分解して叫ぶとか、いびきがとてつもなく下品だったりとか、勝手に名前を変えて読んだりとか、ほんとうに自由奔放である。そして何より「糞男」に何度も騙されていたとしても、それをなんとも感じず、ひたすら前向きに生きているそんな姿に、キクりんは腹立たしさを覚えたりしている。

漁港の日常が、テンポ良く描かれているのだが、そこでのキクりんの心情は、なんとも切ない。クラスの女子の派閥争いに巻き込まれたり、二宮という男子とのやり取りだったり、そして何より「うをがし」を通じての、漁港の住民とのやりとりを見ていると、キクりんの「望んで生まれてこなかったという劣等感」がにじみ出ている。

だが、クリスマスの日に盲腸になった時に、肉子ちゃんとの関係を語り合い、最後は「家族」というものがなんなのかを改めて思い知らされるのである。

この「肉子ちゃん」の「多大なる無償の愛」を受け続けていたんだと。こういった人は、そういない。そんな人が周りにいたら、自分はどう考えるのだろうか。

笑えるポイントもたくさんあって、本当にいいお話だった。(『漁港の肉子ちゃん』のレビュー 西加奈子 (prelude2777さん) – ブクログ

愛すべき「肉子ちゃん」

このお話は、とある漁港での日常が中心となっています。北の寒い漁港のそばの「焼き肉屋」が舞台となっています。

そこで働いている「肉子ちゃん」。主人公の「キクりん」の母親ですが、まぁとにかく、不細工で、太っていて、不器用なんです。漢字を分解して叫んだり(「自らが大きいと書いて、臭いって読むのやから(本書p6)」という具合に)、水族館にいるペンギン「カンコ」に「ペン太」と勝手に名前を変えて呼んだり、とにかく自由奔放です。

そんな「キクりん」は母親の存在が恥ずかしく思っています。自分がしっかりしていないとと常に思っていて、とにかく母親である「肉子ちゃん」が恥ずかしいことをしないようにして欲しいと願っています。

漁港の日常での出来事が淡々とかかれていますが、そんな中でも主人公の「劣等感」がにじみ出でいます。とにかく否定的で、冷めた目で自分の周りに起きている出来事を見ています。

ですが、最後クリスマスの日に盲腸になった時、様々なことがわかってきます。最後には「家族とは一体何か」というような話にまでなってくるのです。

だから「生きていい!」

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読んでいる時、思ったのは「最後の方、どうなるんやろ」ということでした。というのは、物語の3分の2ほどは、途中途中に程よく笑いがちりばめられているとはいっても、日常の出来事が「キクりん」目線で展開していくだけだったからです。

ですが、最後の3分の1で一気に「グッ」ときました。

先ほどのシーンで「キクりん」が「サッさん」に諭されるシーンがあります。

「生きてる限り、恥かくんら、怖がっちゃなんねえ。子供らしくせぇ、とは言わね。子どもらしさなんて、大人がこしらえた幻想らすけな。みんな、それぞれでいればいいんらて。ただな、それと同じように、ちゃんとした大人なんてものも、いねんら。だすけ、おめさんが、いっくら頑張っていい大人になろうとしても、辛え思いや恥しい思いは、絶対に、絶対に、することになる。それは避けられねぇて。だすけの。そのときのために、備えておくんだ。子供のうちに、いーっぺ恥かいて、怒られたり、いちいち傷ついたりして、そんでまた、生きていくんらて。」(本書p291〜一部加筆)

最近では「とにかく自分を変えていきましょう」とか「自己否定を解放しましょう」とかイロイロと言われてますが、それを言っている人たちみんなが「ちゃんとした大人」なのかどうか。そういった視点を持っていないとダメだなぁと改めて思いました。

自分なりに、自分らしく生きていく。それがたとえ「自己否定」の繰り返しであったとしても。それが自分で、それにあまんじて生きていくのもいいじゃないか!

この物語は「家族の形」といった内容の物語でしたが、こういった見方をしてしまいました。

ちなみに、この本もここで紹介された本でした。
【まとめ】アメトーク「読書芸人」がオススメする10冊 x 3人分(ピース又吉、オアシズ光浦、オードリー若林) – ライフハックブログKo’s Style

「ラスト100ページ!」まさにその通りでした!笑えます。そして、ジワッときます。ぜひ手にとって読んで欲しい一作です。
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本日はここまでです。ありがとうございました。

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

西 加奈子 幻冬舎 2014-04-10
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この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。