【読書】「仏果を得ず」三浦しをん 著

本日は、朝の読書時間で読み終わった本を紹介します。

ブクログレビュー

読書時間 4時間50分(読書日数 17日)

高校の修学旅行の時に人形浄瑠璃に出会い、衝撃を受けた主人公が、義太夫という芸の真髄を極めていかんとする様を描いた青春小説。

一話一話、数々の義太夫の題目になぞらえて話が展開していく。基本的にこういった世界を知らないのでどうかなぁと思っていたが、案外すんなりと入り込めたように思う。筆者が文楽に惚れたということが伝わってくるようだった。

主人公の周りで、様々な人たちが登場する。師匠、兄弟子、三味線弾き。みんなちょっと変わり者だが、芸にかける意気込みは全員すごいのだ。「道を極める」ということはそうでもしないとダメなのだ。

筆者は、本当にいろんな引き出しがある方だと改めて思う。これからも読み続けていこうと思う。(『仏果を得ず』のレビュー 三浦しをん (prelude2777さん) – ブクログ

テーマは「文楽」

また変わったテーマでの作品でした。主人公の健(たける)は、やんちゃだった高校時代の修学旅行で、文楽を見る機会を得ます。当然ながら寝ながら鑑賞だったのですが、あるところで突然「何かをぶつけられたような」衝撃を受けます。それが後々、師匠となる銀大夫の義太夫が発するエネルギーだったのです。そこから「メンチを切り合う」のですが、負けてしまいます。それがきっかけで健も義太夫の世界に身を投じる訳です。

話の中で、小学校に義太夫を教えにいくのですが、1人の熱心な小学生ミラに出会い、とあるきっかけでミラの母親である真智に恋心を寄せるようになります。義太夫を極めようと毎日必死に稽古をしていく中で恋心に揺れる健、それを銀大夫を始めとする様々な登場人物がいい感じに絡まって、最後に感動させてくれます。

まとめ

最後に健が真智に告白するシーンの中で、

「俺にとっての一番は未来永劫、義太夫なんです。真智さんは二番目なんです。それでもええですか」(本書305ページ)

とあります。

また『仮名手本忠臣蔵』のクライマックスでは、

金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない。
健は内心で叫ぶ。
仏に義太夫が語れるか。単なる器にすぎぬ人形に、死人が魂を吹き込めるか。
本書310ページ)

とあって、健の義太夫に対する向き合い方が垣間見えるシーンとなっています。

あぁ、これがプロとして覚悟を決めていくということなんだなぁと思いました。

私も今の「司法書士」という仕事は、初めから好きな仕事ではなかったのです。でも、やっていくにつれて好きになってきました。ですが、健の義太夫に対する思いの大きさから比べれば、まだまだ私は情熱が足りないかもしれません。本当にこの仕事で、この資格で全うしたいのであれば、もっと深いところに潜っていかないといけませんね。

今回も楽しく読ませていただきました。やっぱり面白いです。ちなみに本書は2007年に書かれたものだったんですね。というわけで本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。