本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第15回です。
本人確認は、もはや「宿命」!
不動産の名義を書き換える手続ー不動産登記申請ーを代理するにあたっては「申請人が本人であり、登記申請の意思を有するものであることを信頼可能な手段により確認すること(司法書士の専門家責任p181)」が司法書士には求められています。
「今、目の前にいる人が、本当に登記記録に書かれている権利者(現在の登記名義人)なのか?」
「この人が物件を取得する、真の人物なのか?」
など、これらを本当にキッチリとやらないと「ウソ(虚偽)の登記記録ができてしまう」ことになってしまいます。なので、司法書士としては慎重に事を運ばなければなりません。
登記記録上、不動産の権利者と表示されている登記義務者と登記申請代理の依頼者の同一性を確認することは、実体的権利関係に密接に関連するものである。そうした意味では、登記義務者の本人性の確認は、まさに実質的な調査義務にほかならない。
(司法書士の専門家責任p181)
と、本書でも指摘されています。
司法書士に対する期待の現れなのかも…
平成17年に改正された不動産登記法によって、司法書士などの「資格者代理人」に大きな役割が与えられています。
これは平成20年の判例においても下記のとおり、改正された理由が説明されています。
そこで、改正法においては、保証書制度を廃止する代わりに、登記義務者について住所変更登記がされている場合には、現住所のほかるに前住所にも通知書を発送し(不動産登記法第23条第2項)かつ本人限定郵便によって通知する(不動産登記規則第70条)こととするなど厳格な手続によって登記義務者に事前通知をする一方、司法書士や公証人等の資格を有する者が、登記申請者が登記義務者本人であることを確認するために必要な情報を提供し、かつ、登記官がその内容を相当と認めたときは、事前通知をしないまま登記手続を行うこととされた
(司法書士の専門家責任p183)
この赤字部分なんですが、こういう風にも考える事ができます。
この本人確認情報が不適切に行われた場合には、登記義務者にとってみれば、自分が関与しないところで何も知らされないまま登記手続が行われてしまうという結果が生ずる危険がある(司法書士の専門家責任p194)
とも言えますし、反対に、
登記権利者にとっても、登記義務者に対する通知という事前の意思確認手続を経ないまま登記手続が進められてしまう結果、その登記を信用して思わぬ損害を受ける危険があることも明らかである。(司法書士の専門家責任p194)
わけなんです。だからこそ、
提供された本人情報については、登記官の審査も予定されているとはいえ、登記義務者本人に直接会って意思確認する者が、どれだけ慎重かつ適正に本人確認するのかが、この制度を適正に運用されるかどうかを左右するのは明らかであり、そうであるからこそ、不動産登記法も、本人確認情報の提供を行うことができる者を公証人や司法書士等一定の職種の者に限定している(司法書士の専門家責任p194)
わけなんですね。これは「登記申請手続におけるヒト・モノ・意思の確認を求めることが基本的執務として(司法書士の専門家責任p183)」長い年月をかけて司法書士が「登記制度」というものを先頭で守ってきたことが評価されたことが、このような法改正になってとも言われています。ですが残念な事に司法書士による「本人確認義務違反」といった事故も起こってしまっているのも事実です。
免許証を確認するときの注意点!
このセクションでも判例が出ていましたが、その中で印象に残ったのは「免許証の確認の仕方」についてでした。
司法書士の本人確認義務違反になっている事例としては以下の通りでした。
- 本件免許証に貼付された写真とAの容貌を照合して同一人物であると判断したものであるところ、ケース入りのままでは運転免許証の外観、形状に異常がないかどうかを十分に確認することができないことはあきらかである(司法書士の専門家責任p195ー東京地判平成20・11・27ー)
- 本件免許証の厚みについても、自動車運転免許証の真正判断の専門家ではない代理人Aでさえ気がついていたことからするとY(司法書士)としても慎重に精査することにより識別できたと認められ、更に上記事実をもとに運転免許試験場に問い合わせる、ないしは、自称Bに問い質すなどすれば本件免許証が偽造であることは十分に発見し得た(司法書士の専門家責任p191ー大阪地判平成9.9.17ーより一部加筆)
とにかく免許証は「ケースから出して、触って確認すること」は必須です!!
本人確認へのご協力 : 兵庫県司法書士会
ぜひ本人確認業務へのご理解のほど、お願いいたします