本日は、本の紹介です。
コンビニ人間
村田 沙耶香 文藝春秋 2016-07-27
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ブクログレビュー
生まれた時から、周りとは違う感性の主人公が「コンビニ店員」という生き方と、どう向き合っていくのかというストーリー
生まれた時からは「普通の人達」とはどうしても感性が違いすぎて、友人や家族からは疎まれる存在であった主人公。だが、オフィス街に迷い込んだコンビニで働くようになってから「自分がようやく社会の一員」として認められたような感覚になる。
それから18年。恋愛ももちろん結婚もしてこなかった主人公に「普通の人間になれ!」みたいな事件が起こり、コンビニをやめることになるが、やめて初めて分かったこととは…
こういう考え方(というか、かなり自分にとっては歪んでいると感じた)をどう受け入れるのかということを考えていかないとダメなのかとも思った。これはこれで正論な気もして、認めあっていく必要があるんだと感じた。
ちょっと変わった「コンビニ店員」
この作品は、昨年の芥川賞を受賞した小説です。
第155回「芥川賞」に村田沙耶香氏『コンビニ人間』 直木賞に荻原浩氏『海の見える理髪店』 | ORICON NEWS
その後に放送されたアメトーークの「読書芸人」でも紹介されていました。紹介されたときから、かなりいい評判だったので気にしていたのですが、このたび、ようやく手にすることにしました。
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— アメトーーク!(テレビ朝日公式) (@ame__talk) 2016年11月9日
主人公、古倉恵理は18年間あるコンビニでアルバイトをすることで生計を立てているのですが、そこに行き着くまでの半生が、かなりインパクトがあります。
まず「自分は普通と言われる人たちとは、感性がかなりずれている」ということ、そして「周りの人たちとは、相容れない何かを持っていて、それに適合できずにいても、何ら不自由は感じていない」のですが、自分たちの家族・友人からは「かなりの変人」扱いされていて、そんな恵理が、学生時代にひょんな事から務めることになったコンビニ店員が唯一「社会の歯車になることができる」方法だったと分かります。
そこから18年、ただ「コンビニ人間(店員)」として働くだけで満足していた恵理に、周りから「普通の人間になるように」ということで、結婚や就職をやたらとすすめてきたりします。そんな時、最低だったアルバイトの白羽という男と関わるようになってから「この人と一緒にいることで、自分がコンビニ人間をやりきることが出来るのではないか」と思うようになり、そういう部分を出していくのですが、これが反ってダメな方向にいくことになります。
最後には、自分がつとめていたコンビニをやめることになってしまいます。
なんか「不思議と」入ってくる
やめてから1ヶ月後に、ある企業の面接を受けに行くのですが、その時に自分は
という自覚が芽生えるという、なんとも不思議な感覚ですが、なんか腑に落ちるといいますか、そんな話です。
主人公の恵理の人間背景や同棲を始める白羽のやりとりがあるのですが、かなり歪んだ考え方だなぁと思います。ですが、何か分かる部分もあるのです。
自分たちは「社会からは取り除かれる」種類の人間であるとはいっても、それでも世の中は「コンビニの商品やそこに働く人たちが順番に入れ替わっていくかのように」変わっていく中で、自分たちらしく生きていく必要があるということを強く言っているようにおもいます。
逆に、そういった「自分らしさ」というものを押し殺して「普通の人間」として生きていくことも、選択としてはあるのかもしれませんが、そういう器用な生き方が出来なくてもいいんだということ。それも人生だと思います。
筆者の「適度に歪んだ」情景描写が、逆に心地よいというか、すっと読める感じもして、不思議と入ってくる小説でした。「恵理」や「白羽」のような人は、多分自分たちの周りにもいると思います。そういった人たちに対して「自分の普通」というものを押しつけないようにすることも多分、これからの生活の中では大事なんだと思うのです。
というわけで本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。
コンビニ人間
村田 沙耶香 文藝春秋 2016-07-27
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