【読書】「最終退行」池井戸潤 著

本日は、朝の読書時間で読み終わった本を紹介します。

最終退行 (小学館文庫)

池井戸 潤 小学館 2007-05-10
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by ヨメレバ

ブクログレビュー

読書日数 20日

日本型金融システムの崩壊を背景に描かれた社会派ミステリー。(解説引用)

副支店長の蓮沼は、出世街道を順調に歩んできてはいたが、勤務する支店では融資課長との兼務で、夜の遅くまでぼろぼろになりながら働いていた。そんな折に、とある会社のよくわからない融資の稟議書を見つける。その会社の決算書等に不明な点はなかったが、聞いたことのない会社に5000億もの融資がされていた。

その会社を辿っていくと、実は調査会社という名目で「M資金詐欺」を会長の久遠に仕掛けようとしていた。

その久遠は、自分が現役時代に調査をしてことのあるこの「M資金詐欺」のことを逆手に、銀行からの裏金の受け取るためのマネーロンダリングを試みようとしていたからである。

そんな折に、蓮沼自身に「融資予約」の疑いがかけられ、一人の経営者を自殺に追い込んでしまったのだが、じつは支店長の罠でもあった。

最後には大団円となるのだが、ここに至るまでの経緯が本当に読み応えがあった。(『最終退行』のレビュー 池井戸潤 (prelude2777さん) – ブクログ

銀行で働くのは…

主人公は毎日こんな感じだったのでしょう
主人公は毎日こんな感じだったのでしょう

今回のお話は「銀行で働くこととは何か?」といったところがテーマだったのではないかなぁと思いました。

主人公の蓮沼は副支店長の肩書きがありながら、融資課長も兼任している、いわば「激務な銀行マン」です。仕事がよくできるようですが、今の現状に不満だらけです。

社内恋愛で結婚したが、その奥さんも蓋を開ければ「自分の金と出世だけにしか興味がなく」全くの意思疎通もできてない。(まあ、だからと言って何ですが)同じ支店で働く摩矢との不倫が唯一の救いになっているという状態です。

そこに「トレジャーハンター」という謎の職業が出てきたりします。また、これが胡散臭いんですが、この会社が「M資金詐欺」を企てようとしていることがわかります。

でも、それを逆手に利用しようとする久遠会長。自分の裏金をどうやって表の金に持っていくのか。それを解明していくのも、この作品の醍醐味です。

銀行の本来の姿とは

ここでは「貸しはがし」と「融資予約」という言葉が出てきます。

貸し剥がしは、銀行などの金融機関が既に融資している資金を積極的に回収することをいいます。これは、金融機関が自己の経営安定を最優先し、返済の滞ったことのない企業等に対して、融資を減額したり取りやめたり、あるいは返済期限の到来前に返済を迫ったりするなど、相手先の事情を考えずに資金を強引に回収することを指します。(本用語には、「ひどい仕打ち」という意味が含まれており、金融機関に対する不満が込められている)

一般に貸し剥がしは、融資に消極的になる「貸し渋り」と共に、不景気の時(景気減速の局面)に顕著となり、不良債権のリスクを回避したい金融機関が所定の自己資本比率を確保するため、自己防衛として行うものです。通常、その対象先は、業績が低迷する大企業や資本力のない中小企業などであり、時として経営に大きな問題がないのに、倒産に追い込まれることもあります。(貸し剥がしとは|金融経済用語集

銀行に融資を申し込んだ時や、銀行と融資について交渉している時、

「融資は大丈夫です。」

というように、銀行員から言われることもあるかもしれません。

しかし、融資を最終的に出すかどうかの決定権は、支店長や本部の部長などにあり、その決裁を得ていない段階で、「融資は出ますよ。」と言うのは、「融資予約」と言って、銀行はそのように言わないように銀行員を指導しています。

ただ、本部の部長などの決裁権者が融資の決裁をしていないにもかかわらず、銀行の営業マンや支店の役付行員などで、融資は大丈夫というようなことを簡単に言ってしまう銀行員もいます。

その場合、口約束でも、契約は有効となります。

そのため、融資は出る、と銀行員から言われた後、やっぱりだめだった、というのは契約違反となり、損害賠償の請求もできるのです。(融資予約|事業再生コンサルティングなら株式会社フィナンシャル・インスティチュート

「ノルマを達成するためには手段を選ばない」というのが如実に描かれていますが、これで人がひとり死んでます。

銀行のノルマのためだけに人が死んでいるその裏で、自らは私欲のだめだけに「銀行の裏金」を貪り取ろうとする。

最後は勧善懲悪になりましたが、本当にこんなことが世の中でも行われているんでしょうね。

自分が仕事をするにあたって、確かに「稼ぐ」ということは絶対に必要です。ですが「お金をいただくかたが、ちゃんと幸せにならないといけない」と思います。

そのためにも「寄り添うことができるのなら、できるだけ寄り添う」ということをきちんとして働きたいと思います。

というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。

最終退行 (小学館文庫)

池井戸 潤 小学館 2007-05-10
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この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。