久しぶりの「倫理研修」
この年次制研修は、司法書士の規則に則って、入会3年目とそれ以降からは5年ごとに必ず受講しなければならない研修です。
ほぼ半日を費やして、司法書士業務を行うに欠かせない「職業倫理」というものについて考えるという目的で執り行われます。
この研修の重要さは身に染みているつもりです。
【司法書士会】「年次研修」は司法書士の職業倫理感をリフレッシュさせる大事なモノであるということ | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
今回は入会8年目を無事に迎えることができたということで、先日参加をしてきました。
この研修は
- 基調講演
- グループディスカッション
- 総括講義
という構成になっています。単なる「情報を伝達するだけ」の研修ではありません。「考える研修会」となっています。
結構たくさんの参加者です。
準備も万全です。
基調講演(研修ログ)
- 他人の財産を預かり管理する業務が増えてきている
- 職域が拡大したときは、職責の拡充が必要になってくる。
- 法律家の基本的な要件→陽気(前向き)・勤勉・誠実(仕事をごまかさない)
- 一緒になって困っていたら仕事にならない。
- 倫理をより深めることに努める。
- この研修は、信頼性を確保するための具体的なツールとなっている
- きっかけは訴訟代理獲得→それだけではない。もともと有資格者専門職としてあった
- 司法書士の代理権→法的サービスを提供できる・アクセスができる・職域改革に繋がる
- プロフェッション性を強化
- 理想的なもので、その通りやれば、利用者の期待通りの働きをすることになる。
- 安心して自分の財産や権利を委ねられることになる
- 関与した司法書士の陳述書が民訴での事実として認定される。(証拠価値が高い)
- 認定司法書士が「振り込め詐欺救済法第3条」の捜査機関等に含まれている。
- 報酬の取り過ぎの新聞記事→リーズナブルな報酬で仕事をしてくれるという期待。
- 大多数では信用されているが、不祥事が起こるとブランドに傷か付く
- 「誰のために、何を、どのようにするのか」と言うことを押さえることは必須!→倫理と言うより「ルール」を遵守するということ
- 倫理とは→人倫の道・実際道徳の規範となる原理(広辞苑)
- 司法書士倫理は単なる倫理ではない→一般の方の倫理と同じところもあれば、それ以上に求められることもある。
- 依頼者に最も利益が出るような訴訟行為をする必要があるので、考え方を変えることは何ら問題ない。
- 司法書士が主体としてやっていなかったにもかかわらず、それに関わったことで実刑も免れない。
- 医師・聖職者・法律家→伝統的プロフェッション
- リーガルプロフェッション→高度の専門的知識・高い職業倫理・職能団体による自治
- 倫理があることで、依頼者が安心して事件を任せられることになる。
- 専門家が手抜きをしても分からない→インフォームドコンセントが必要(自己決定権の尊重)
- 当事者の代理人的役割の限界を画するものが公共的役割(「目的のためには手段を選ばない」はダメ)
- 司法書士はサービス業である→顧客の利益を最大限に実現するためだけに行動するのか→公共的な部分(プロフェッションの部分)が欠けているようではダメである。
- 登記は何故双方代理できるか→公法上の行為で被法律行為(ただの義務履行)
- 訴訟するかどうかは自由である。
- 有能である必要がある(法令実務に精通)→当事者の話を法的に整理するのが不得手である場合→一生懸命やればいいというのではない。よく知っている人に頼むというのも依頼者の利益を守ることにもなる。
- 登記業務については、受任する義務がある→法律上独占業務が与えられているから。
- 司法書士が断れるのは「事務が煩雑すぎる」という理由だけ
- 名板貸し→司法書士の資格を「利用してやろう」とする
- 合意規範→民644〜646 関係規範→品位保持・法令実務精通・公正誠実
- 裁判の仕事をするときは「相手方から嫌われる」と言うこともあるので、きちんと仕事をすること
- スクリーニング→相手方からの言い分をそのまま鵜呑みにしない。(下手すると相手方の名誉毀損になる)
- 司法書士と弁護士の倫理の体系構造は一緒
- 倫理を知らなければ実践できず、知っただけで実践しなければ意味が無い。
- 司法制度改革で成功したのが、やっかみにもなっている→適切な制度運用をすること
- 今は特に大事な時期である
グループディスカッション
ここでは、司法書士の懲戒事例などを参考にしながら、事例を3つほど検討しました。内容としては
- 立会業務の意義
- 相続に関する業務の関わり合い方
- インターネット広告の留意点
結構闊達な意見が飛び交いました。このグループディスカッションの良さは、
「正解がどうとかということではなく、経験年数や業務内容、世代を超えて、意見を聞くことによって自分の振り返りにかなり役に立つ」
ということです。
自分の事案で体験したことなんかを話すことで「あの時こうしといたらよかった」みたいなことを参考にできるのがいいなぁと思います。
総括講義(研修ログ)
- 倫理研修はどうしたらいいか→他人の意見を聞く(自分の問題として)
- 意見の交換をする(経験年数・執務の内容・世代)
- 立会業務→当事者及びその意思並びに目的物の確認等を通じて、実体的権利関係を的確に把握しなければならない(倫54)
- 立会→利害関係にある当事者が出席式いる不動産に関する取引の場で、司法書士がその登記手続きに関する諸条件(人定質問、不動産の特定など)について審査し、事案の内容を総合判断して登記の申請を受託することによって、不動産に関する取引完結すること。
- 司法書士の最後の登記の実行の意思確認表示→それらの義務も履行され、所有権移転登記手続きをして良いかどうかの当事者に対する登記申請前の最終の意思確認作業
- 売買契約上の義務の履行が果たされたかどうかを含めて、売買当事者に対し最終の登記申請意思を確認できる場は立会以外にない→実質的に見ても依頼を受けた司法書士自らが行う必要がある→登記の真正担保のため決済当日の権利調査や取引を完結させるに当たり、専門家としての判断が求められるので、補助者立会は相当ではない。
- 他の司法書士に立会を行わせるには①直接2人と契約するか②復代理しかない→事実上の委任はダメである
- 既に成立している協議の書面化であれば問題ないが、そうじゃなければ問題あり。
- 交渉となる事務は、司法書士の業務範囲外なので、受任できないことも含めて、受任できる範囲内で最大限のサービスを提供することも考慮する必要がある。
- 代理人として見なされてしまうとダメである→封筒の使用や、とりまとめの方法など
- 基本的な部分は当事者にやってもらうが、役務提供者として最大限提供できることも考えて仕事をする→簡単に手放さないことも重要ではないか。
- 匿名の書き込みだからいいとは限らない→守秘義務との関係性
- 経験豊富というのは、何処までのことを言うのか
- 過度の期待を持たせるようなものでなければOK(広告基準3)
まとめ
今回はグループディスカッションのリーダーを務めました。なので、お弁当があったので嬉しかったなぁと。
今回の基調講演は、あの「加藤新太郎」先生です。やっぱり良かったですね。DVD研修だということもあってか、若干聞き取れない部分もあり、また理解が追いつかなかったこともありましたが、概ね良かったです。
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【司法書士業務】「司法書士の専門家責任」について〜プロローグ〜 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
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今回の研修では
「常に、知識をアップデートしなければならない」
ということを強く仰っていたように思います。
学び続けるというのは若干苦手ではありますが、それでもこの仕事で全うする為には絶対必要なことですね。
また、知るだけではなく実践することが大切です。お昼休みの時にグループディスカッションのリーダーの先生方とお話をさせてもらったのですが、懲戒になった事例のほとんどが「研修を全く受けてない」「倫理についての実践が全くされていない」人であるということだったのです。
私自身もしっかり実践していきたいです。それが頼りにしていただける依頼者様の為に一番なることなのですから。
ということで、5年間しっかり実践します。本日はここまでです。ありがとうございました。