【読書】「怒り(下)」吉田 修一 著

本日は、読み終わった本を紹介します。

怒り(下) (中公文庫)

吉田 修一 中央公論新社 2016-01-21
売り上げランキング : 81

by ヨメレバ

ブクログレビュー

著者 : 吉田修一
中央公論新社
発売日 : 2016-01-21
読書日数 13日

映画化された原作本の後半。八王子で起こった夫婦殺人事件がの捜査されているなかで、千葉、沖縄、東京それぞれで、突如現れた謎の人物が、容疑者に似ているのではないかと疑いを持つようになり、急展開を迎える。

千葉では、自分の娘が愛した男が、前歴不詳で偽名まで使っていたことが分かり、信頼することができなくなってしまう。警察に「容疑者らしい人と住んでいた」と、娘が通報した途端に行方が分からなくなる。

東京では、立て続けに自分の知り合いの家に空き巣が入り、また別の場所で見知らぬ女と出会っているところを見かけると「殺人」を犯して逃げ回ってるんではないのかと疑いを持ってしまい、その翌日に姿を消してしまう。

沖縄では、好きな人がレイプされてしまったことを忘れさせるために自分にできることがあるのかと思い悩んでいたところ、謎の男とマラソン練習を始める。だが、ふとしたきっかけで行った、謎の男が住んでいた廃墟には「怒」という、あの落書きが見つかり、それ以外に衝撃の書き込みを見つけてしまう。

最後は、それぞれに悲しい結末があったのだが「人を信じることの難しさ」というものを感じてしまった。もし、自分の周りに指名手配の犯人とそっくりな奴がいたとしたら…それでも信じることができるのか。

考えさせられるミステリーでもあった。

いきなり急展開!

映画『怒り』公式サイト

前回のレビューはこちらです。
【読書】「怒り」(上) 吉田 修一 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所

前半の最後で「田代(愛子の彼氏)が働いていたペンションで別の偽名を使っていた」事実が分かる洋平。それがどこか心に引っかかります。そしてそれが「自分の娘にはそういういわく付きの人間しかついてこないのか」という思いにかられます。

そんな時期にテレビで「八王子夫婦殺人事件」の特番が流れます。そこで出された容疑者 山神の写真を見て姪っ子 明日香の息子が「田代のおじちゃんに似てる」と言ったことで「殺人犯だから、偽名を使っているのか」と思い悩み、明日香に相談する事にしますが、明日香は愛子にその事を話してしまいます。

愛子は八王子夫婦殺人事件の被害者にものすごく感情移入してしまっていたので、愛した男であったとしても「殺人者かもしれない」と警察に通報してしまいます。どんな気持ちだったか想像に絶えませんね。その時には田代はいなくなってしまいます。

東京の優馬のところでも、自分の周りで2件空き巣が入ります。その時と同時に直人が失踪してしまいます。その時と気持ちだったか「直人がやったのではないか」と思い悩みます。また、そんな時に八王子夫婦殺人事件の特番を目にする優馬。特徴に「右頬に3つのほくろ」という情報を見て、直人にもそれがあった事を思い出し。「殺人を犯して逃げるために自分とあんな場所で会い、一緒に暮らすことで自分の知り合いの情報を集め、逃げるための資金集めとして空き巣に入ってんだ」というストーリーを組み立てて、信じられなくなります。

沖縄では、星島で暮らしていた田中が、泉の友人の辰哉の所で働くようになります。辰哉は泉が米兵に襲われた事による心の傷を癒すために何をしてあげれば良いのか思い悩みます。で、マラソンに出ようと田中と走るようになります。

そんな時に、星島に行く事になった泉は、田中が住み着いていた廃墟で「怒」の落書きを見つけます。しかも草葉の影に隠れていた、黒マジックで書かれていた文を見て驚愕します。

後日、辰哉にも見てもらう事になるのですが、そこからラストに向かって急展開していきます。

切ないミステリー

最後のオチの部分は、ご興味あれば読んでいただければ良いのですが、かなり悲しい結末でした。

犯人じゃなかった謎の男たちの最後も、結構壮絶な過去を背負って生きていて、最後もやっぱり壮絶な最後でした。

もし、自分のまわりで「指名手配犯に似た顔の謎の人物がいたら」という事を想像してみてください。平常を保って生活できるのでしょうか?相手を信用してあげられるのでしょうか。自分には分かりません。ここに出てくる人達と同様、どこかで信用しきれないかもしれません。そうやって人を傷つけるという事の恐ろしさというか、せつなさというか、そんな事を考えてしまいました。

映画も絶賛公開中ですが、役どころが結構変わっている気がします。映画館では観たいとは思いませんが、機会あればテレビでやって欲しいですね。

本日はここまでです。ありがとうございました。

怒り(下) (中公文庫)

吉田 修一 中央公論新社 2016-01-21
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by ヨメレバ

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。