本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第19回です。
法律家である以上は…
前回に続き「登記申請に関する説明・助言義務について」のレビューになります。
【司法書士業務】司法書士の専門家責任⑱〜登記申請に関する説明・助言義務〔その1〕〜 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
前回のエントリーです
前回は「登記申請手続それ自体に関する説明・助言義務」についてでしたが、今回は「法律上の効果に関する説明・助言義務の類型」になります。
登記の手続の説明もそうですが、登記というのは前提として「法律上、一定の効果が発生して」初めてできるというものです。なので、当事者間で争いがあるような場合、「法律的にどうなのか」ということについて依頼者から説明を求められた場合、司法書士の職務の範囲内では、きっちりと答えていたなくてはなりません。
登記の申請手続の委任を受けた場合には、委任の本旨に従い、当該登記の原因となる契約等の目的が委任者の意図のとおり達成されるように、善良な管理者として注意をする義務がある。(司法書士の専門家責任p254)
ので、もし仮に
委任者の一方又は双方から、登記申請手続に関し、特定の事項について指示があった場合においても、その指示に合意的理由がなく、これに従うことにより、委任者の一方の利益が著しく害され、申請の原因たる契約等により当該委任者が意図した目的が達成されないおそれがあることが明らかであるときは、司法書士は、当該委任者に対し、指示事項に関する登記法上の効果を説明し、これに関する誤解がないことを確認する注意義務がある(司法書士の専門家責任p254)
ということになります。
どこまでの説明が求められるか
前回のエントリーでも書きましたが「説明・助言義務は、委任者の属性との関連においてその内容・程度が判定され(本書p256)」ます。最初にも書きましたが「司法書士としての職務の範囲内で」ということです。
基本的には
司法書士が登記手続きの委託を受ける際に、その委託内容である登記の種類、登記原因を最終的に決定するのは、委託者であって、受任者である司法書士ではない(司法書士の専門家責任p258)
のです。よって、
Xら(依頼者)の事情を熟知しているわけではない司法書士は、Xらから具体的な質問や依頼を受けていないにもかかわらず、司法書士としてなすべき一般的な説明を超えて、登記原因を説明し、洗濯を進めなければならない義務を負うものではない。更に言えば、特定の登記原因を勧めることは、司法書士の権限外の行為ともなりかねない。(司法書士の専門家責任p258に一部加筆)
のです。「なんとかするのは我々専門家ではなく、当事者であるあなた自身です」ということを私は依頼者様に常々申し上げております。なぜなら、
司法書士は、当事者と一時的接触しか持たず、通常は登記に至るまでの当事者の事情に通じていないため、単に登記の局面からでは真に的確かつ専門的な助言をないえないはずである(司法書士の専門家責任p260)
だからです。
まとめ
ただ、説明といってもどういう風にすればいいのかということですが、基本的に「法律に関しては」依頼者の方と私たち司法書士との間に情報の格差があります。また、依頼者の方がいくらインターネット上の情報からある程度取れるとはいっても、どうしても「自分の都合のいいように」解釈してしまいがちです。
司法書士が説明義務を負うといっても当該登記手続に関する事項を満遍なく説明しなければならないものではなく、事柄の軽重、依頼者の属性や状況に応じた発現形態がある(司法書士の専門家責任p264)
つまり「依頼者に応じて、説明する形態を変える必要がある」ことになります。特に法律問題に関して言うとそうなると思います。
なので、全然分からないからといって、こちらのことを全て鵜呑みにするということは避けるべきだと思うのです。どんな些細なことでも結構ですので「何をやっているのか」ということをしっかり理解していただきたいと思います。
というわけで、本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。