本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第24回です。
大きな役割を担っている!
平成14年の大改正により、司法書士にも簡易裁判所(訴額は140万円まで)では弁護士と同じように訴訟代理人として裁判業務に携わることができるようになりました。そのおかげで「債務整理業務」というのも一般的にできるようになり、ここ数年間は、いわゆる「カード破産」やクレジット問題・消費者問題にも私たち司法書士が問題対決に一役かうことができるようになっています。
日本司法書士会連合会 | 司法書士関連法の変遷
どの世界でもそうかもしれませんが、最近では司法書士による、裁判事務等での問題報道もたくさん出てきているように思います。
では、司法書士として債務整理を受任した場合、どういった責任があるのかということについて考えていきたいと思います。
依頼者に対する説明義務
まずはこれです。
法律事務を受任した弁護士(司法書士)には、法律の専門家として当該事務の処理について一定の裁量が認められ、その範囲は委任契約によって定まるものではあるが、特段の事情がない限り、依頼者の権利義務に重大な影響を及ぼす方針を決定し実行するに際しては、あらかじめ依頼者の承諾を得ることが必要であり、その前提として、当該方針の内容、当該方針が具体的な不利益やリスク等の内容、また、他に考えられる現実的な選択肢がある場合にはその選択肢について、依頼者に説明すべき義務を負うと解される。(司法書士の専門家責任p345 一部加筆)
これは必ずやらなくてはいけません。なぜなら「方針を決めるのは、依頼者様自身だから」です。その手助けをするために私たちは存在しているといっても過言ではないからです。
報告義務
ことが起こって場合には、依頼者に報告をしていく必要があります。本書では「状況即応的報告義務がある」というふうに書かれています。
特段の事情がない限り、速やかにその内容及び結果を依頼者に報告すべき義務を負うものと解される(司法書士の専門家責任p345)
善管注意義務との関連性
上記の2つの専門家に課せられた義務は、委任契約に基づくものであるということは、何度か書かせていただいてはおりますが、
法律専門職の善管注意義務の発現として、依頼者の当面の問題を解決するため、自らの専門的知識・経験に基づき、どのような活動をしていくかの具体的措置を選択する段階では、一般的には、「問題解決にふさわしい措置を選択すべき義務」があり、選択した措置について依頼者に対して説明して承諾を得る段階では、「依頼者が意思決定をするのに必要にして十分な説明をする義務がある(司法書士の専門家責任p344)
ということが、再度念を押すように言われています。
依頼者が抱える問題に対して、
ということをキチンと説明していく必要があります。裁判業務を依頼するときは、「そういったことをキチンとしてくれるかどうか」ということを目安にしていただければと思います。
時効待ち方針について
今回のセクションでは、弁護士が方針としてあげた「時効待ち方針」というものがピックアップされています。
債務整理での「時効待ち」手法はNGに。ではどうする?|福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ
詳細はこちらをご覧ください。この判例は、弁護士業界では有名なようですね
本書でも、
時効待ち方針は、時効期間満了まで債務者を不安定な状態におき、その間に約定遅延損害金がかさむほか、差押えを受け経済再生の支障をきたしかねないなどデメリットが大きく、原則不適切である(司法書士の専門家責任p354)
となっています。
時効待ちといえば聞こえは良いが、要は何もしないという対応である。これは、極めて安直で、ある意味では手抜きともいえるような手法と評されてもやむを得ない面がある(司法書士の専門家責任p355)
ということのようですね。昔はマニュアル化されていたようですが、特別な事情がない限りは、この方針は使わないということです。
いよいよ次回で、この専門書レビューが終了します。本日はここまでです。ありがとうございました。