以前から興味のあった「上田調査」ようやく聴くことができました。
研修ログ
第1部 2012年の上田調査の報告及び分析
- 平成24年〜25年で実施した面談形式による市民実態調査→司法書士はどのように市民に写っているのか
- 昭和56年に実施した「上田調査」がベースになっている(長野県上田市の住民190人を対象)
- テーマ「暮らしの法律家」の検証と地域法律専門家の在り方創造→身近な法律家というのは本当か?
- 社会調査というのは鮮度が大事→業務との並行でやっていたため5年ほどかかった
- 市民調査と会員向け調査の結果に寸評をつけて掲載→全国大会・法社会学会・月報などに掲載
- 今回は「つなぐ」→市民と法制度をつなぐ役割を司法書士が担えているのかということにテーマを絞る
- 司法書士は「法的な助言をして法的な解決をすること」を発想しがちだが→無料相談では38%、有料相談では46%不満を言っている→法的な助言だけではダメなのでは
- 内容が相談にふさわしいかどうか不安(市民43% 司法書士26%)→法律相談になってないかもと考えている
- 市民が紛争と考えているものと司法書士が紛争と考えていることが違う
- 紛争を同解決するか→市民「責任追及」司法書士「お金」→お金では満足しない傾向にある
- 本人の真の願いをかなえるための解決手段→訴訟に限らない→ADR(知名度5%)→市民と法制度をつなげる(ADRの知名度を上げる)
- 市民に対して様々な法制度を教育していくことが司法書士として大事になる(法教育など)
- 優良な法律相談にあり理専門家を選択するとき、何を重視するか→(会員)専門性・資格の種類・評判(市民)専門性・人柄・評判→資格の種類はそんなに重要視されない
- 紛争の解決の段階→専門性・人柄・評判→全く同じ
- 法律相談に行く理由→身近な人に詳しい人がいないから(87%)
- 法専門家との関わり方→日常的関与=46% 特定の誰かである必要性=69%
- 司法書士は身近なくらしの法律家なのか→司法書士は自己評価が高い(市民と法制度をつなぐ身近な存在である)
- 市民が司法書士について持つイメージ→「行政書士」との区別が付かない→何をしているのかわからない→「カバチタレ」のイメージ→資格者としては身近ではない
- 「登記」をしているのはという回答に「行政書士」と答えたのが18%→登記という業務の中で「司法書士」が認識されていない→他の資格者と比べて、市民から認知されていない
- 市民が必要としている専門家像を認識して、それを目指す必要がある
- <最終提言>司法書士がなにをすべきか
- 法律相談から「くらしの悩み相談」にシフトすべき(身の上相談や人生相談でも構わない)
- 法律相談→法律問題にふさわしいということを「市民」に委ねている
- たとえ法律で解決しなくても、それ以外の部分で満足するのである(法律相談であるか否かが問題ではない)
- 相談の姿勢・相談手法を向上させること→満足度を客観的に測るシステムがない→市民のニーズに合致したものにしていく
- 資格の種類ではなく、業務内容を市民に示すべき→司法書士が悩み・トラブルの解決の専門家であることを示していくべきである
- 「出来ないこと」をいいのではなく「(権限の中で)何が出来るのか」を示していく必要がある
- 地域社会に密着した「特定の相談先」となることを目指す→市民は「何かあったら特定の」相談先があると嬉しい→「紹介者中心主義」から「依頼者中心主義」
- 地位社会においては、適正な司法書士の配置も重要
- 対面調査による市民実態調査は継続していくべき→対面調査には「司法書士に対する市民意識」を肌をもって感じることが出来る
第2部 パネルディスカッション
- 「法律相談」から「暮らしの悩み相談」にシフトすべき→エンパワーメントにも繋がる(話を一緒に聞く、一緒に考える)→解決だけが相談の全てではない→出来ないことは出来ないというべきである
- 一事務所としては、話をする中で同じ地元民として話を聴くのは当然である→先ずは「相談にのる」
- 相談というもの「どちらのフレーム」でみるか(司法書士か相談者か)→相談者からのフレームで見るべき
- 相談姿勢、手法を向上させるためには→テクニカルなもの(技法や手法)で考えるのは良くない→一人一人の考え方や姿勢が大事である→客観的に満足度を測るものがない→相談についてのアンケートを実施して、より客観的にデータを取得して調査・分析をする→調査のやり方をキチンと整備したモデルを外注をする(学者とか)
- 司法書士会として相談手法を上げるためのもの検討する必要がある→OJTに力を入れている必要性もある(配属研修だけでは弱い→実践的なものをやる時間が余り取られていない)
- 相談の研修というものは中々ない(多分受けることがない)
- 市民に業務内容を示す(広報)→今の「司法書士」という知名度を上げるようなものになっている→効果があるかないか分からないようなものに投資されているように思える→市民が重視するのは「専門性と人柄・評判」である
- 「どのように依頼者と接するのか」(共感・エンパワメント)→これが最終的に司法書士の人柄に繋がるのではないか
- 個人が司法書士の広報をやる意味があまりない→司法書士制度を出すしかない(連合会)→他団体もそれに乗っかる事になる→そのうち訳が分からなくなる
- 「法律教室」などを地道にやることで「司法書士」というものを認知してもらう→それそのものが広報の効果になっている
- 「司法書士」ということが重要ではない→市民が困ったときに「どこに行くのか」ということを調査して、そこに対してキチンとアプローチをしていくことが重要である
- 電話番号をお互いに交換して、LINEなどを使うことで「敷居を低くする」(繋がっている)
- 依頼者とのやりとり(中間報告など)キチンとすることが重要→相談しやすい環境をする必要がある
- データの分析については、また次の調査をすることで分かっていく→この調査というのは大変な時間と労力がかかっている
- まだまだ分析が出来ていない(無限な解釈が出来る)→司法書士「マニア」となる研究職を探すことが重要になってくる
- 隣接法専門職の解体論(司法書士制度)→市民と法律専門家との関係性の変化→説明責任が問われる時代
- キチンとした専門家がキチンとデータを出して、分析することが重要である
- 「情報化社会」だといって、何でもかんでも自分でやるということにはならない。
- 資格試験の受験者数の減少(司法書士だけではない)→制度が潰されるということはない
- AIによる法律相談機能が構築されようとしている→かなり制度の高いもの→パラリーガルの人数が減る→登記は例外があるものなので、しばらく無くなるということはない
- 専門分野ごとにタテ割りの資格制度→解体すると㋐弁護士に統合㋑他の隣接法専門職㋒独立を維持(統合はしない)㋓その他
- 外国での法専門職の解体を、他人行儀でみることは危険である
- 外国での弁護士は「ビジネス」資格者が多い→一元になっても仕事が分かれている
- 司法書士は幾度か法改正を通じて専門性を高めてきた→それは弁護士への統合に至る道程なのか→弁護士とは一線引いている→あくまでも「現状必要である」ということを法改正に盛り込んでいる(必ずしも弁護士化を目指しているものではない)
- 専門性を磨くものの「身近で」利用しやすい専門家を目指す→それを目指す制度設計(パラダイム変換)をめざすのか
- 裁判のオンライン化→2020年に向かって全ての行政手続のオンライン化を目指している(登記のオンライン化)
- ほとんどのことをコンピューターでしようとしている(ブロックチェーン技術による登記情報の開示など)
- 顔認証が一番信頼ある(本人確認)→具体的なその人の性格背景にあった情報の提供が重要になる(アナログ的なつながり→意思確認)
- 世の中が変わろうとしているのに司法書士が変わろうとしないのはダメ→対応出来なければ淘汰される
- 制度の方向性がとても重要である(潰すときはいろんな理由をつけてくるから)→イメージがとても重要である(司法書士に対して研究者が興味が無い)
- 制度が潰れても「仕事」は残る→「國の根幹に関わっている」という意識を持った人たちがスキルと想いをもって担えば良いのではないか→学校にしっかり「制度的に関わって」専門家として地域に貢献することができる
- 我々の職業は一歩間違うと「搾取」産業になる→公共とか教育のほうに注力する必要がある
まとめ
本格的にこの件について、受講したのは初めてでした。自分も制度のことについては、かなり深く考えているつもりではあるんですけど、かなり興味深いものとなりました。
「依頼者は資格に興味がなく、評判と人柄に興味がある」
これは、本当に感じていて、だからこそこのブログがあるんだと認識を再確認できました。
もっと、自己開示をして「人柄」をみせていきたいと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。