前回の予告通り、分科会参加レポです。
【司法書士会】「第45回 全国青年司法書士会かながわ全国研修会」基調講演レポ(研修ログ) | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
基調講演のログです!!
1日目の基調講演後の分科会は「第5分科会 実践・養育費問題〜子どもたちを貧困から救うため、司法書士ができること〜」2日目の分科会では「第8分科会 大人社会で生きる共生力を育む児童養護施設法律教室」に参加しました。
第5分科会は、かなりの盛況ぶりでした。びっくりしました。先日に行われた「養育費無料相談会」も開催されたことも受けて、関心が高かったように思います。
2日目の分科会はグループワーク中心のものだったので、かなりのめり込めたように思います。自分たちで「法教育の教材をつくる」ということすると言うことで、テンションは上がったように思いました。
第5分科会「実践・養育費問題〜子どもたちを貧困から救うため、司法書士ができること〜」
第1部 「養育費実務の基礎・相談について」
- 母子家庭になったからといって、生活が苦しくなるというのは社会的におかしいのではないか?
- 相対的貧困→格差による貧困→6人に1人が貧困
- ひとり親世帯の半分以上が貧困(54.6%)
- 国が貧困を放置していることになる→非正規雇用→52.1%
- 離婚母子世帯→176万円(200万以下は64%)
- 貧困という状態を引き継いでしまう(社会的相続)
- 進学できないと正社員となることが難しく、非正規雇用だと、子供も貧困になる
- 司法書士としてできること①養育費の取り決め、支払いの推進②社会給付の改善に向けた活動→児童扶養手当(ひとり親世帯対象の給付)→所得算定に際し「受け取った養育費の8割が所得として参入される」→即刻廃止すべき③保育料などの無償化、減税、給付の拡大、授業料以外の無償化へと活動
- 9割が協議離婚→養育費の取り決めができてないことが多い
- 代理人なしが半分以上→司法書士が支援することの意味!
- 養育費の決め方→一括払いの相談(再婚する場合は特に!)→避けたほうが良い。または信託(手数料は高いため、多額の養育費でないと意味がない)
- 算定表は「個別の事案」が勘案できていないので、あくまでも参考程度に→日弁連で新たな表を作成しているとのこと→それぞれの親が納得できるのであれば問題ない。
- 合意書や離婚協議書は執行力がない→不払いだと再度調停が必要
- 養育費の代理交渉は弁護士に→実務的にはあんまりない。
- 調停は法律論を展開するようなことはない
- 調停の内容は、付き添いの時にメモを取ること!
- 期日は原則別席調停(交互に話を聞く)
- 調停・審判で養育費を定めていたら執行文は不要
- 間接強制→払わなかったら別途払え(罰則金)→心理的効果は高いが、あまり実例がない。
- 履行勧告→口頭で申し立て可能で、申し立て費用も無料
- 履行命令→なかなか受理されない。
- 大きな事情の変更がなければ、基本的に減額の変更はできない。
- 文書提出命令が機能していない→命令を出してくれない→裁判所が義務者の口座を特定する制度の創設の可能性(早ければ今秋)
- ひとり親世帯支援制度は知っておかないと恥である。
- 児童手当→子供がいればもらえる
- 児童扶養手当→18歳到達の年度末までの児童を対象
- 母子・父子寡婦福祉基金の貸付はかなり使える。
- 離婚協議書の作製は事実文書の作成に当たるので「行政書士」の業務にかかるかも
- 感情面に配慮すること!→法律家に不信感を持っている
- 毅然と「こどものため!」とする
- 単なる取り立て屋にならない!
「面会交流とDVについて」
- 民766→「父又は母と子との面会及びその他の交流」
- 子供の利益を最優先に
- 面会交流は「親の権利ではない」(養育費払ってるから合わせろ!ではない)
- 協議離婚(9割)の中で取り決めがしているのが20%以下
- 面会交流を行った事がないのは半分以上→取り決めをしておけば、交流する割合がぐっと上がる
- 実現できるルールを決めること→回数・場所・内容(直接だけでなく間接のものも)など
- DVについての理解→身体的暴力だけではない。親密な関係において暴力により相手を支配すること
- DVがあった時は、面会交流の直前で体をこわすこともある
- 調停の場所でDVが立証できるのか?(調停では原則として面会を実施する方向に)
「相談について考えよう」
- 法的な部分だけを抽出をしようとするのはダメ
- まずは「依頼者の気持ち」を理解をすること→相談者に話してもらうこと
- 相談内容だけでなく「相談者に」興味を持つ→相談者の個性や性格を知る
- 相談者のできることを後押し→「伴奏者」として
- 相手と会う時に共通の知人と会う
- 調停は相手が出てこなければ、意味がない
- 子供の写真を送るというのも一つの方法
- 福祉的な手続きに関する知識も持っておく→窓口となって、しかるべきところにつなぐ必要もある。
第2部 パネルディスカッション「子供の貧困対策を考える〜司法書士ができること〜」
- 施設に住んでいる子供は「大人」や「社会」のせいで、こんなことになっているのに、それに対する支援が全然行き届いていない。
- 子供に寄り添っていく大人は絶対必要
- 鬱積された子供の感情をどこかで発散させないといけない
- 経済的によくない子供が不登校になると、社会的に不利になる。→不登校は17万人、引きこもりは大人も入れて100万人
- 子供に関する支援をするには「大人の支援」をしなくてはいけない
- 女性の司法書士が合格者の割合よりも下がっているのは「家事をしながら」と言うのが難しい
- 「母子生活支援施設」(全国272カ所)→母子が自立できるようになるまでサポートする。逃げてくる母子のことがあるので、あんまり大っぴらにはなっていない。→夫から逃げてきていることが殆どなので養育費の相談はない。
- DVを受けている人は「判断ができない」ことが多いので、同席できないというのは痛い。
- 書面を提出をしていても、調停委員が読んでいないことが多い。
- 子供支援についてのポイント①背景を知る→子供の目に見えてる部分だけでなく裏側を見る②ストレスを持ちながら、笑顔で暮らしていけるのかという視点→困難性を抱えた家庭はストレスフルだから③自己肯定感を作る→自分たちでできるという気持ちをもたせてあげる(両親の自己肯定感を上げることが、子供にも影響を与える)
- 子供の支援をするにあたって「どうやって学校に入っていって、学校との信頼関係を築くのか」というのが、司法書士の支援の方法につながる→学校というのは情報源となる→それぞれの事例に対して、機動的に動く。
- 母親の利益が子供の利益となるのか?(面会交流など)
- どうやって相談事例を拾っていくか?(連携方法)→児童養護施設などでの地道な活動をしていくことで、行政に絡むことがあった。
- 一つの相談事例から別の問題を見つけて、それに対しても対応することで信頼関係を築いていく。
- 福祉関係の人たちとの勉強会を開くことで、その連携ができる。
- お互いの存在を認識して、理解を深めていく
- 全青司として「常設的に」養育費相談会をやったほうがいい
- もっと困難な「子供」もいるはず→こちらからもアプローチしていかなくはならない→法律教室の活動を続けていくこと!
- 抱え込み過ぎないように!→連携して解決する(子供の支援をする必要は有るが「子供支援の専門家」ではない)
第8分科会「大人社会で生きる共生力を育む児童養護施設法律教室」
- 児童福祉法41→保護者がいない、虐待、養護を要する児童を養護し、退社者に対しても自立のための援助をするための施設
- 虐待を受けた経験は6割→ほとんど受けている
- ネグレクトが6割・身体的虐待が4割
- 虐待者→実母が半数以上(育児からのストレスからくるもの)
- 虐待を受けた子供の印象→自己肯定感を持てない!→どんな苦境にてたっても助けを求められない→社会的養護が必要になる。
- 「環境上養護を要する」→親の離婚・死亡・精神疾患など
- 養護→児童の心身の穏やかな成長とその自立を支援するために様々な支援をする①安定した生活環境②生活・学習・職業指導③家庭環境の整備
- 生活指導→社会にでで行く準備をする(親が子供を育てるのと同じことを求められる)
- 家庭環境の調整は「親子関係の再構築等が図られるように」しなければならない→無理矢理構築する必要は無い
- 児童養護施設(601施設 3万人)→マンツーマンなら可能だが、今の現状ではカバー仕切れない
- 職員の方が留意しているのは「児童の心の安定」と「人間関係(友達、家族)→法律に書かれている部分全部をすべて出来ているかはわからない→どの部分に司法書士が関わるのか
- 自主性・社会性→前提として「自己肯定感」→役割を与える・任される・褒められる
- 「自立のための知識・経験」→注意喚起的なことも必要である
- どんな苦境に立たされても相談出来ない→トラブルに巻き込まれやすい→知識を入れることでトラブルから遠ざける。
- 特にお金に関わる問題は「司法書士として」ネタはごろごろある。
- 様々なトラブル→失敗の疑似体験をしてもらう→仮に、思ってもいなかったトラブルにあっても「寸劇」のイメージをしてもらうことで「この状況が危ない」という嗅覚を備える可能性がある。
- 退所後の児童のケアが結構大変(施設の先生も替わったりすることもある)→司法書士が相談に乗れるということをアピールすることで「相談先がある」ことを認識してもらう。(相談することで解決する道筋をつける)
- 司法書士がする法律教室は楽しい物としてやる→子供が飽きる→飽きさせない工夫(寸劇・クイズ・ゲーム)→創作活動であるので、楽しい
- スーツを着ない→施設が子供たちの生活の場なので、スーツ姿だと威圧感を与えるから
- 学校では「物の貸し借り」を禁止しているため、「お金の貸し借り」という場面という現実場面を法律教室で伝える
- 利息の恐ろしさという失敗を描く→「知識を得ること」「自分で自分の身を守る」
- 寸劇をする場合、重要部分を何度も振り返ることが重要である。
- 小道具にカンペを貼り付けることで成立する。
- 演技の上手下手はあるが、稽古をすることで「子供たちにわかってもらう」こと
- ちょい役を施設の先生に頼む。
- 子供の生育環境や生活環境に配慮する→「親権者を思い出させない」(親を登場させない)「暴力的な表現を思い出させない」
- フィルターを通す→ありのままに伝えることでも傷つくことがあるため
- 法律教室→トラブルを避けるための注意喚起・応用力(子供の生きる力を育むこと)
- 3割ぐらいは障害を持っている子供もいる→情報を仕入れてからする。
- 児童養護施設での法律教室では「毎年同じものはつかえない」→作り続けることが重要になる
- 司法書士としての部分だけではなく「人生」「経験」からの部分も話すことが出来るように→自分の経験を切り売りしてまでも、子供に伝えたいこと・役立ちたいことを発信していくこと
- 人数が増えることで、よりアイデアが出るようになる。その積み重ねが子供たちにとって大きな糧になる。
分科会まとめ
今回の【共生(共にいきる)】ということをうけて、私の中では先日の「養育費の相談」そして、3年ほど前から課交わさせてもらっている「法律教室」というものを通して「子供たちの生きやすい社会」というものに、なんとなく興味を抱いていたので、今回の分科会をセレクトしてみました。
第5分科会では先日に養育費の研修を受講したこともうけて、座学については理解がより深まりました。が、それより「地域の子供たちは、もっと困っていて、それにどうやって手を差し伸べるのか?そのためには、周りの専門家との連携が大切で、その関わりを作ることが重要だ」とわかりました。
第8分科会では「法律教室を運営していくことの楽しさを見いだす。その中で、どうやって施設の子供たちと向き合う必要があるか。環境が普通ではない状態で育ってきた子供たちに自己肯定感を持ってもらうような工夫をすること。そして、大人社会と共生していく子供たちの相談相手として、司法書士が関わっていくことが重要である」ということが理解できました。
第5分科会のパネルディスカッション、第8分科会のグループワークともに、斬新で、自分の経験したことのないものを味わうことが出来たのが、本当に良かったと実感しています。
閉会式は見ずに帰宅の路につきましたが、2年間の準備を経てのこの研修会。本当に実行委員会の方々、お疲れ様でした。私も「共生」というキーワードを胸に、できることから実践をしていきたいと思います。
本日はここまでです。ありがとうございました。