本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第13回です。
司法書士の花形業務「立会業務」
司法書士の業務として大きなものの一つとして「(不動産売買における)取引の立会」があります。
不動産取引における司法書士の業務は登記申請代理が中心であるが、司法書士は、ときに登記の原因行為たる不動産取引の契約締結時や代金決済時に同席して実体関係にも一定の関与をすることもある。これが、いわゆる立会である。(司法書士の専門家責任p148)
家を購入する時には、たいてい不動産屋さんと司法書士が登場します。司法書士は「実際に売買があったのか」という事をこの目で確認することで、依頼者様から登記申請の委任を受けて登記申請手続を代理して行うというのが主流です。
この「立会は、登記申請代理とは、別個の委任契約に基づくものであり、その目的を異にする(同p148)」ものだと言われております。
本書では、立会とは
当事者の一方または双方の依頼に基づき、取引の現場に同席し、登記申請代理を受任するとともに、実体的権利の移転および代金の決済など取引を円滑かつ実効的なものとするために必要な助力をすること(司法書士の専門家責任p149)
とされています。つまりは
重要な事項に関しては、登記手続に関連する限度で進んで実体関係に立ち入り、当事者に対し、その当時の権利関係における法律上、取引上の常識を助言する事により、当事者の登記申請意思を実質的に確認する義務を負う(司法書士の専門家責任p149)
ことになるという事です。
ただの「登記手続のお手伝いさん」ではない!
いくつかの判決が事例として本書で紹介されていますが、結論としては
依頼者としては、司法書士に対して、具体的に取引内容に立ち入ってまで適否の判断を求めているわけではないが、司法書士の備える専門的知見から客観的・外形的に認識することができる取引のリスク等についての助言・説明を求めたいということが多いのではないかと思われる。
このように、司法書士としては、依頼者との間で、委任契約の内容について十分なコミュニケーションを図って、自ら負うべき債務を確認することが執務の基本である。
(中略)
専門家責任論は、こうした司法書士として可能な配慮(サービス)が、立会いの趣旨との関係から法的義務になり得るという構造とメカニズムを備えているのである。
一定の配慮をすることが司法書士の法的義務になるかどうかという議論と、司法書士がその執務においてどのようなパフォーマンスを展開していくことがプロフェッションとして望ましいかという議論とは、別の次元の問題である(司法書士の専門家責任p163~164より抜粋)
しっかりとコミュニケーションを取っていくというのは、本当に大事なことであると思います。少なくとも「社会的に信用のおける人物であり、かつ、一般の法律関係にも明るい準法律家として(司法書士の専門家責任p148)」関わる訳ですから、そういう立場で業務を行うことが私たちには求められています。
司法書士は、ただの「手続き屋さん」ではないという事がお分かりいただけましたでしょうか?皆様の「権利を擁護するために」存在している司法書士。ぜひとも活用していただければと思います。
本日は、ここまでです。ありがとうございました。