本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第17回です。
イシ確認はホント大事です
私たち司法書士が大事にしている「ヒト・モノ・イシの確認」があることは、ここでも何度か書かせていただいております。
何故、これが問われるのかといいますと、「そもそも、不動産登記が義務化されてない」ということと「書類さえ揃えて申請すれば、登記ができてしまうシステムになっている」からです。
なので、私たちがプロの登記申請代理人として関わるのであれば、
依頼者の代理権の存在を疑うに足りる事情がある場合には、登記義務者本人について代理権授与の有無を確かめ、不正な登記がされることのないように注意を払う義務がある(司法書士の専門家責任p220)
のです。
どこまでの責任が課せられるのか
これは私たち司法書士としては、永遠のテーマでもあります。前回のエントリーでも書きましたが「依頼者に対する、過度な確認までは問われない」というのが前提になっています。それは「内情までを細かく知れることは、当事者(依頼者自身)でない限りは、ほぼ不可能だから」です。
ですが、
登記申請の依頼の経緯、状況および当事者間の関係などから、代理権の有無や登記意思の有無について疑念があるのに、司法書士がその点につき確認義務違反をした場合には、司法書士の第三者に対する不法行為責任の要件となる過失と評価される(司法書士の専門家責任p221)
こともあります。「プロとして最低限度の調査」は行わないといけないということになります。
権利証をつける意味としては、こちらでご紹介しましたが
権利証書(正しい名称は「所有権登記済権利証書」となります)とは、カンタンに言うと「この不動産(土地もしくは建物)の所有者であるという本人の証である」ということです。
なので、これを登記申請の時に添付するということは「登記義務者(権利を失うヒト)」自身がきちんと関わっているということを登記所にわかってもらう手段の一つなのです。ですが、全然違うヒトが権利証を冒用して(その人になりすまして)登記をしようとしてもできてしまう可能性があります。
なので、司法書士が登記申請人の代理人として関わる場合、
登記義務者が人違いでないことの保証とは、登記申請名義人が登記簿上の権利名義人と形式的に符合することだけでなく、現に登記義務者として登記の申請をする者が登記簿上の権利名義人と同一人であることを保証することであり、代理人によって登記申請する場合には、その代理人が正当な代理権を有するものであることまで確知すべきである(司法書士の専門家責任p223)
と言えるでしょう。
まとめ
登記申請の意思の確認、すなわち「この不動産につき権利の変動が起こったが、それを登記手続きしていいのかという意思の確認」を代理人である司法書士が行う場合、
原則として、司法書士には、依頼者でもある登記権利者が登記無効によって不測の損害を被ることのないよう、登記義務者本人の意思を確認すべき義務がある(司法書士の専門家責任p231)
だと言えます。
ですが、判例の変遷を見てますと、
司法書士には、真正な登記の実現に努める職務上の義務がある一方、取引の動的安全を保護するため登記申請を迅速に処理する要請にも答えなければならないとしている点に着目し、後者に配慮することで、代理人の授権の存在を疑うに足りる事情の存否については、消極的な結論が導かれやすくなる(司法書士の専門家責任p227)
にもなっているようです。
だからと言って「明らかな確認義務違反」だけはダメですよね。そういったことをやらないようにするためには「とにかく真正面から案件と向き合うこと」が日々求められるということになります。
というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。