【読書】「死神の浮力」伊坂 幸太郎 著

本日は、読み終わった本を紹介します。

ブクログレビュー

読書日数 21日

死神「千葉」が担当した、作家とサイコパスとの対決録。前作「死神の制度」の続編という位置付けになっている。

ある作家の娘が、サイコパスに残酷なやり方で命を奪われてしまうが、その刑事裁判で無罪が確定することで、作家夫婦は復讐を企てる。決意をきめた雨の夜に、自転車でやってきたのが死神「千葉」である。

相変わらず「死神」の仕事を真正面から取り組む姿勢は素晴らしいが、やっぱり何処かずれていて、それが主人公を怒らずこともあるが、何処かほっこりする場面もある。

娘を奪われてしまったその悲しみに暮れてしまい「生きているのかどうかもわからない」状態で、ただ復讐するという目的で生き続けいたのが「なぜ復讐をするのか」とか「どんな覚悟でやるのか」ということに向き合う主人公の心情には、かなり考えさせられ「人というものは、弱いものであり、それでもいつかは死ぬことになる」ということを思い知らされる。

今回はサイコパスとの対決ということで、その推理や犯人に迫る時に「千葉」独特の能力(以上に聴力、視力がいい。体がとてつとなく頑丈である)が力をかなり発揮し、主人公達がかなり助けられたのではあるが、最期はやっぱりという感じだった。でも、それを受け入れて前を向く姿を見ることもできて、少し泣けた。

あと、死神の世界でのルール変更があったらしく、今回の担当では「見送り」もしていい、みたいなことにもなっていた。またそのサイコパスにも死神が付いていたことも、またこの話を面白くしていると思う。

今回は長編

ここまで愛想は良くない!

前回の「死神の精度」は短編でしたが、今回は長編です。「チルドレン」と「サブマリン」との関係と似てますね。

【読書】「チルドレン」伊坂 幸太郎 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所

【読書】「サブマリン」伊坂 幸太郎 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所

今作も、死神「千葉」が活躍しますが、全体の話はかなり重い内容です。

作家である山野辺遼は娘の菜摘を1年前に殺害されてしまいます。そのことでマスコミ達は「山野辺自身が殺したのではないか」と疑いをかけられるほど注目されるのですが、実は犯人であるサイコパスの本城から、菜摘に毒を注射される動画をメールで送りつけられているのです。その動画はウイルスによって削除されていて、証拠はありません。

裁判にもなるのですが、決定的な証拠として出されていた動画が、証言によって覆ってしまい、無罪が確定します。でも、それを山野辺は望んでいたのです。

「自分たちが、菜摘に与えた苦しみと同じように与えてやる」

そういう決意をした、そんな雨の降る夜に、千葉が「死神の」担当者として訪ねてくるところから物語が始まります。

初めは、本城の居場所をつけ止めて、拉致しようと試みますが、千葉が見事に邪魔をします。かなり予定が狂ってしまうことになるのですが、千葉は「死神の仕事」を全うすべく、全力で山野辺夫妻に寄り添い、適度に事件に巻き込まれながら、助けたりもしていきます。

ちょっと泣けた

まあ、こんな感じで進んでいるので「復讐」については、なんとなく予想がつきましたが、最期のオチは、意外でした。

また、途中で「死神界のルール変更があったこと」が、この話をさらに面白くしていて、それも良かったと思います。

このシリーズでは、とにかく「人間の死、人間の命」というものをについて考えさせられます。復讐という行為や殺人といったことはダメなのはわかると思います。それでも昔から「仇討ち」とかがあったことに触れられていて、それに対する考え方が興味深く読めたりします。

「人は最後には死ぬ」

この言葉の重みというか、それでも前を向いて生きていく姿とか「(死神のついた)最後の1週間(晩年)をどう生きるのか」など、私自身も興味あるテーマなので、楽しく深く考えさせられる作品です。

あと、この話では最後の1週間を1日単位でセクションになっているのですが、奇数日が千葉目線、偶数日が山野辺目線で書かれているのも面白く読ませてもらえました。

ただ、相変わらず日数はかかりました。今年もこんな感じで読んでいこうとは思っているのですが、ペースを上げていかないととは思います。

本日はここまでです。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

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