習慣化の読書時間で読み終わった本を紹介します。
漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫) | ||||
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ブクログレビュー
読書日数 10日
とある漁港で暮らす、とある家族(?)の物語。西加奈子ワールドが、程なく涙を誘う。本当に読み終わって、心があったかくなる。
主人公は「キクりん」という、小学5年生。なんでも客観的に見る、悪く言えば「斜に構える」おませな女の子である。「肉子ちゃん」はこの子のお母さんらしいが、とても抜けていて、アッケラカンとした性格である。漢字を分解して叫ぶとか、いびきがとてつもなく下品だったりとか、勝手に名前を変えて読んだりとか、ほんとうに自由奔放である。そして何より「糞男」に何度も騙されていたとしても、それをなんとも感じず、ひたすら前向きに生きているそんな姿に、キクりんは腹立たしさを覚えたりしている。
漁港の日常が、テンポ良く描かれているのだが、そこでのキクりんの心情は、なんとも切ない。クラスの女子の派閥争いに巻き込まれたり、二宮という男子とのやり取りだったり、そして何より「うをがし」を通じての、漁港の住民とのやりとりを見ていると、キクりんの「望んで生まれてこなかったという劣等感」がにじみ出ている。
だが、クリスマスの日に盲腸になった時に、肉子ちゃんとの関係を語り合い、最後は「家族」というものがなんなのかを改めて思い知らされるのである。
この「肉子ちゃん」の「多大なる無償の愛」を受け続けていたんだと。こういった人は、そういない。そんな人が周りにいたら、自分はどう考えるのだろうか。
笑えるポイントもたくさんあって、本当にいいお話だった。(『漁港の肉子ちゃん』のレビュー 西加奈子 (prelude2777さん) – ブクログ)
愛すべき「肉子ちゃん」
このお話は、とある漁港での日常が中心となっています。北の寒い漁港のそばの「焼き肉屋」が舞台となっています。
そこで働いている「肉子ちゃん」。主人公の「キクりん」の母親ですが、まぁとにかく、不細工で、太っていて、不器用なんです。漢字を分解して叫んだり(「自らが大きいと書いて、臭いって読むのやから(本書p6)」という具合に)、水族館にいるペンギン「カンコ」に「ペン太」と勝手に名前を変えて呼んだり、とにかく自由奔放です。
そんな「キクりん」は母親の存在が恥ずかしく思っています。自分がしっかりしていないとと常に思っていて、とにかく母親である「肉子ちゃん」が恥ずかしいことをしないようにして欲しいと願っています。
漁港の日常での出来事が淡々とかかれていますが、そんな中でも主人公の「劣等感」がにじみ出でいます。とにかく否定的で、冷めた目で自分の周りに起きている出来事を見ています。
ですが、最後クリスマスの日に盲腸になった時、様々なことがわかってきます。最後には「家族とは一体何か」というような話にまでなってくるのです。
だから「生きていい!」
読んでいる時、思ったのは「最後の方、どうなるんやろ」ということでした。というのは、物語の3分の2ほどは、途中途中に程よく笑いがちりばめられているとはいっても、日常の出来事が「キクりん」目線で展開していくだけだったからです。
ですが、最後の3分の1で一気に「グッ」ときました。
先ほどのシーンで「キクりん」が「サッさん」に諭されるシーンがあります。
「生きてる限り、恥かくんら、怖がっちゃなんねえ。子供らしくせぇ、とは言わね。子どもらしさなんて、大人がこしらえた幻想らすけな。みんな、それぞれでいればいいんらて。ただな、それと同じように、ちゃんとした大人なんてものも、いねんら。だすけ、おめさんが、いっくら頑張っていい大人になろうとしても、辛え思いや恥しい思いは、絶対に、絶対に、することになる。それは避けられねぇて。だすけの。そのときのために、備えておくんだ。子供のうちに、いーっぺ恥かいて、怒られたり、いちいち傷ついたりして、そんでまた、生きていくんらて。」(本書p291〜一部加筆)
最近では「とにかく自分を変えていきましょう」とか「自己否定を解放しましょう」とかイロイロと言われてますが、それを言っている人たちみんなが「ちゃんとした大人」なのかどうか。そういった視点を持っていないとダメだなぁと改めて思いました。
この物語は「家族の形」といった内容の物語でしたが、こういった見方をしてしまいました。
ちなみに、この本もここで紹介された本でした。
【まとめ】アメトーク「読書芸人」がオススメする10冊 x 3人分(ピース又吉、オアシズ光浦、オードリー若林) – ライフハックブログKo’s Style
「ラスト100ページ!」まさにその通りでした!笑えます。そして、ジワッときます。ぜひ手にとって読んで欲しい一作です。
本日はここまでです。ありがとうございました。
漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫) | ||||
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