【読書】「チルドレン」伊坂 幸太郎 著

本日は、読み終わった本の紹介です。

チルドレン (講談社文庫)

伊坂 幸太郎 講談社 2007-05-15
売り上げランキング : 2365

by ヨメレバ

ブクログレビュー

読書日数 14日

5編の短編集。「ばかばかしくも、恰好よい」という帯の言葉が、心に響く。

三人がとある銀行で奇妙な銀行強盗事件に巻き込まれるが、そこで謎を解いていくうちに、友情が芽生えていく。

5つの短編は,それぞれ主人公が違うのだが、すべて「陣内」という、変わり者を中心に物語が回っているという書き方が印象的。

パンクをこよなく愛し、純粋(という言い方でいいのか)物事の本質を斜めから見通す力があって、言動はむちゃくちゃだけど魅力的である。

その陣内が家庭調査官という、とてもなれそうにないような職業についているのだが、適当にやっているようで、子供の心をつかむのが本当に旨いと思う。

初めての作家で、先ずはコレという言葉に惹かれて読んでみたが、視点が変わっていて、面白く読めた。

破天荒「陣内」とその仲間たち

はちゃめちゃです!
はちゃめちゃです!

こんな見出しをつけてみましたが、本当です。短編集になっていて、5篇入っていますが、すべてに「破天荒な陣内」と、その仲間たちが繰り広げる、不思議なストーリーが展開します。

1話目の「バンク」では、その陣内と親友の鴨居、そして全盲の永瀬(盲導犬のベスも一緒に)が、銀行強盗に巻き込まれます。ですが、時間が経過していくうちに「自分たち以外全員が(人質になっている銀行員まで)が共犯者なのではないか」ということに全盲の永瀬が気づいていきます。

本来なら、もっとスマートに運ぶと踏んでいた犯人側なのですが、陣内が急に「パンクとは立ち向かうことなんだよ!」と言って犯人にぐんぐんと近づいていき「その銃はフェイクなんだろ」と詰め寄ったことで、犯人は銃を撃つ羽目になります。そのせいで、警察が囲むことになり、物事が次第に大きくなっていきます。

自分たちも解放される時間が遅くなってしまったのもそうですが、犯人側まで、余計なストーリーを考えなくてはならない始末。結局は無事に解放されるのですが、周りにいる人すべてに(善人も悪人にも)迷惑をかけてしまう男、陣内。でも、それがなんかふっと笑えて、かっこいい。不思議な魅力です。

陣内は本当にめちゃくちゃな思考回路の持ち主ですが、そんな男が大学卒業後、家裁調査官になり、後輩の「武藤」と、とある離婚案件のことで話を展開させていく「チルドレン」。その結論を出す経緯がホントに破茶滅茶でありながらも、的を得た行動と言動で解決していく様が「ばかばかしくも、恰好よい」んです。

変わった短編集

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この短編集は、基本的に「陣内」という男が中心に話が展開していくのですが、目線は「陣内」ではなく、その周りの仲間たち目線で描かれています。なので、謎の行動をとる陣内が、内心どんな事を考えて、感じているのかが本当に分からないのです。でも、その謎めいている感じが、読んでいて心地良かったのです。

また「バンク(銀行強盗事件のお話)」のオチや、最後の「イン(陣内が自分の親父を殴った日に居合わせていた、全盲の友人、永瀬が思うところ)」でのストーリー展開が面白く、そして「おおっ!」とも感じれる作品でした。

この短編集のあとに、12年の時を経て「サブマリン」という書き下ろし長編小説が出たとのことで、それを踏まえて読みました。

サブマリン

伊坂 幸太郎 講談社 2016-03-30
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サブマリン」では、家裁調査官としての「陣内」が活躍するようですね。とても楽しみです。

チルドレン (講談社文庫)

伊坂 幸太郎 講談社 2007-05-15
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本日はここまでです。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

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