【読書】「サブマリン」伊坂 幸太郎 著

本日は、読み終わった本の紹介です。

サブマリン

伊坂 幸太郎 講談社 2016-03-30
売り上げランキング : 9012

by ヨメレバ

ブクログレビュー

講談社
発売日 : 2016-03-30
読書日数 10日

前作「チルドレン」から12年後に出された長編小説。主人公は、あの破茶滅茶でかっこいい「陣内」である。

家庭調査官としてベテランの域に入ってきた陣内と、後輩の武藤が、とある少年が起こした自動車事故に関わるようになる。

この少年は、両親を事故で失っただけではなく、小学生の時に自動車事故に巻き込まれて親友を亡くしていた。その事件の加害者の担当が陣内だということがわかる。

この事件は少年事件だったため、少年院から更生して出てきているのだが、果たしてそれがいいことなのかどうかを、加害者の少年は思い悩み、それを陣内に尋ねたりするが、相変わらずの破茶滅茶でかっこいい陣内なので、時にはストレート過ぎて傷もつけたりしながらも、少年の言葉をきちんと聞いて信用して、それに寄り添うかっこよさがうかがえる。

また、後輩の武藤は自分が調査官としてどうやって立ち振る舞ったらいいのかを悩み、もがきながらも懸命に職務を全うしていく。

そんな事件の調査の中で、陣内の親友の永瀬(前作でも出てきた盲目のキレ者)にジャズを通して陣内の人間性を知ることになり、信頼関係を築きながら成長していくのも分かる。

いかに家裁調査官という仕事、特に少年事件を扱うのが難しいかということを知ることができた。自分も法律家の端くれとして、学ぶべき執務姿勢(全てではないけれど)とか本質的な考え方は参考になるなぁと思った。

前作からの続編

【読書】「チルドレン」伊坂 幸太郎 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
前作のレビューです。

こういった位置付けていいのかなあと思います。

前作の短編集「チルドレン」では、「破茶滅茶恰好良い」陣内が家裁調査官になった経緯が描かれていましたが、それから12年経過し、立派ベテラン調査官として働いています。武藤は、何箇所かの地方巡りがあって、また東京で陣内の部下になるという巡り合わせに「また、この人を相手にするのか」みたいな感じになります。

物語は、とある交通事故の加害者の少年を護送するシーンから始まります。この少年は、両親を交通事故で失い、10年前の小学生時分に親友を交通事故で失っています。それが10年経過して今度は加害者になってしまう、なんともやりきれない事件の担当に武藤が当てがわれるのですが、聞き取りを進めていくと「10年前に親友を奪った犯人を見つけて復讐する」目的だったということが分かります。

で、その10年前の交通事故の加害者の担当が、実は陣内であったわけなのです。

武藤が、その少年から「自分のせいで、その少年を犯罪者にしてしまった。そんな自分に生きる資格があるのか?」と迫られるシーンがあるのですが、そんないい答えが、瞬発的に出るわけが無いですよね。武藤は陣内に助けを求めます。その後の陣内の対応は、無茶苦茶ですけど、恰好良い!ですね。

当の武藤はどうかというと、この件を調査していく中で、事件に巻き込まれます。生死を一旦は彷徨うといったところまでいくんですが、その行動が少年を救うことにもなっていたりと、もがきながらも成長していく様を見て、グッとくるものがありました。

誰がいいのか悪いのか

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今回のテーマは、

「されたことを仕返す事が、なんでダメなのか」

という、一言では答えが出るもんでもないほど、難しいものでした。

「復讐する事はいけないこと」ということは、わかりきっているとは思うのですが、いざ自分がその立場になった時に、果たしてその感情がコントロールできるのか?また大人の自分達でもそうなのに、子供がそういう感情を持った時に、大人達はどういう対応をすることがいいのか?そういったことを仮に、依頼者が言った場合に、本当にその人のことを思っていえるのかどうかは、全く自信がありません。ただ、陣内の執務(考え方)に共感できる部分が多々あります。気になる方は一度手にとって読んでみてほしいと思います。

ちなみに、この作家さんは、前々から気にかかっていたのですが、連作で読んでみて、結構読みやすかったので、追ってみたいと思います。

本日はここまでです。ありがとうございました。

サブマリン

伊坂 幸太郎 講談社 2016-03-30
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by ヨメレバ

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。