【読書】「シャイロックの子供たち」池井戸 潤 著

本日は、本の紹介です。

シャイロックの子供たち (文春文庫)

池井戸 潤 文藝春秋 2008-11-10
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by ヨメレバ

ブクログレビュー

読書日数 19日

とある銀行で起こった様々な人間模様、そして一つの事件を織り交ぜながら「理不尽な中でのバンカーとしての在りかた」を様々な人間を主人公にして描かれた短編集。

「シャイロック」というのはシェイクスピアの「ベニスの商人」に出てくる強欲な金貸しらしい。そういう題材をモチーフにしただけあって、様々な銀行マンが出てくる。

業績だけのことだけを考えて、そのためなら不正でもやってしまう支店のトップ。そして部下を只々叱責するだけで、そのために精神が崩壊してしまった元スポーツマン。銀行のエースと言われているエリートは、別の支店で取り扱った会社に不正融資をしてしまい、その尻拭いのために、今の支店から現金を盗む。など、挙げだしたらきりがない。

だが、そんな体質の中でも、きちんと仕事をこなしながら三枚目を演じる奴もいたり、とにかく読んでいて「銀行の体質」はこんなんだったんだと思ってしまうほど、リアル感がすごい。

この作品はかなり初期の作品のようで、のちの「半沢直樹シリーズ」の原点になったようなものらしいのだが、大団円七日ものはほとんどなかった。それでも銀行で働くということ、家族を背負って闘っているバンカーというのは、本当に過酷なんだなぁと思う。でも「仕事は心が伴わないといけない」ということを改めて感じることができる作品だと思う。

「銀行ミステリー」の原点

『半沢直樹』だけじゃない。原作 池井戸潤 ドラマ化作品 – NAVER まとめ
ドラマ化も相当されてますね!

この作品はかなり前の作品(2008年)らしく、半沢直樹シリーズの原点になった作品のようです。
日曜劇場『半沢直樹』|TBSテレビ
続編やっていただきたい!

短編集にはなっていますが、全て「第一中央銀行長浜支店」で働くバンカーの物語となっていて、主人公は違うのですが、全てのストーリーがリンクしています。それも面白く読ませてもらえました。

で、ここに出てくるバンカーは、多分筆者もバンカー時代に感じていたことだったんだと思います。

只、部下を叱責して、自分の支店の成績を上げるためには、意味のない金融商品を押し売りする支店のツートップ。

それに媚を売りながらも、とにかく「銀行で生きやすく働くには『客の事は考えない』こと」をモットーに働くが、最後には犯罪に手を染めてしまう業務課のエース。

元スポーツマンで、宴会部長だったが、副支店長の叱責があまりにも酷く、結果、人格が壊れてしまう新人営業マン。

犯罪の発覚に気づき、その犯人を追い詰めるが、実はそれは、自分の被ってしまった10億の連帯保証債務を払うための工作を図ったお調子者の融資課長。

とにかくいろんなバンカーが出てきて、こんなところで働く銀行マンはさぞかし辛いんだろうなぁと思ってしまいます。

家族を守ること


それと同時に「家族を守ること」についても結構深く描かれていると思います。

「ヒーローの食卓」では、犯罪を犯してしまった銀行のエースが、逮捕される直前に家族と一緒に食べる食卓の風景が描かれていて「組織で働くこと」の理不尽の中で家族を思う銀行マンの哀愁を感じます。

確かに不正はいけない。そんな事は分かってると思うんです。でも「出世することだけが、家族を思うこと」みたいな偏った考え方ではダメなんだと思うんです。自分には縁遠い話だとは思いますが、肝に命じて働きたいと思います。

本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

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