【読書】「地下の鳩」西 加奈子 著

本日は、読書時間で読んだ本を紹介いたします。

ブクログレビュー

読書日数 13日

大阪のミナミの街で起こった、一組の男女と一人のオカマ(という表現は適切ではないかも)の物語。

「地下の鳩」では、街角のコンビニで自転車の鍵を落としたクラブのママ、みさをと、昔はイケメンで、女に不自由していなかったが、そのイキリ癖が傷になって、今ではキャバレーの呼び込みとなった吉田との出会いから始まる。

そこから「みさをが食べ続け、吐き続けるのを、吉田がただただ見ながら飲む」という不思議なデートが繰り返されていくが、その時のお互いの心情の変化が、なんとも言えない感じたった。

ところが、ミミィというおかまが起こした事件がきっかけで吉田は怪我をしてしまう。それをきっかけに、二人は仕事を辞めて香港に旅行に行く。みさをはそこで「自分をリセットするために、とにかく今のお金を食べ続け吐き続けながら、自分というものを削ぎ落としていく」のを吉田はヒモとして見届けながらも、本当に自分にとって必要な女となっていく。

「タイムカプセル」では、一人のオカマ、ミミィが経営する「クラブあだん」で起こった一つの傷害事件がきっかけとなる。

ミミィは島で育った幼少期、とにかく苛められていて、なかばトラウマのようになっていたが、それと同時に「性同一性障がい」に気づいていく。

だが、小学校の時の卒業する時の手紙で「嘘」の夢を語って、みんなからの拍手を貰ったのだが、そのことがなんとなく心に引っかかっていて、それを事件を起こしたことをきっかけに、帰らないと決めていた故郷に帰って、タイムカプセルを掘りに行く。

この短編集では、互いのエピソードが少し火リンクしていて、「ミナミで起こった二つのエピソード」が同時に進行しているという変わった短編だった。

そんな中で必死に生きようとしている3人の男女の姿に、引き込まれるような感じがして、少し泣け多様な気がした。(『地下の鳩』のレビュー 西加奈子 (prelude2777さん) – ブクログ

大阪「ミナミ」の泥臭い人間模様

私自身は、そんなに通ったりしたことはありませんが、まぁ関西に住んでいたら、噂はかねがね聞いていたりします。

3/3 大阪の「キタ」「ミナミ」ってどんな都市? [大阪の観光・旅行] All About

今回の短編集の舞台は、現代のというよりかは「昭和の古き良き時代」のミナミの街が舞台になっているように思います。

「地下の鳩」では、昔は持てた(というより女に不自由しなかった)吉田と、学生時代に先生との恋愛関係に落ちたが、そこでの出来事がトラウマとなってしまった、左右の瞳の大きさが違う「素人のような」ホステスのみさをが、コンビニの角で「自転車の鍵騒動」の時に出会うところから、物語が動き出します。

みさをがただひたすら、食べでは吐いての繰り返しをしていくのを吉田が見ている(その時の勘定は全て吉田持ち)という、一風変わったデートが繰り返されているのですが、ある日、おかまのミミィが起こした傷害事件に吉田が巻き込まれてしまうことで、みさをが吉田を養い出すようになっていきます。

そして、急に香港に二人で旅にでて、そこでもひたすら、「食べては戻し」の繰り返す毎日。ですが、みさをが病気になったりしたことや、吉田の怪我が悪化しているのをみさをが看病をしていったりすることで、互いのことに惹かれるようになっていきます。その心情の移り変わりが描かれています。

「タイムカプセル」では、その傷害事件が起こった理由も描かれていて、それがこの短編集の醍醐味だと思うのですが、ミミィの幼少時代の思い出(トラウマ)を思う中、「クラブあだん」を営んでいる情景が描かれています。

ある日脚として訪れた、二人のイケメンの一人が、ホステス「ことり」に付く常連客「菱野」の小学校の時の苛めっ子だということがわかり、そのことを、自慢げに話すのを聞いたミミィが、自分の小学校の時のトラウマがフラッシュバックして感情が抑えられなくなり、傷害事件を起こしてしまいます。

被害者は告訴することがなかったので、勾留だけで済んだミミィが、自分が育った嫌な「島」に帰ることを決めます。それは、小学校の時に「嘘」の夢を語った手紙を確認するために、小学校の庭に埋めた「タイムカプセル」を掘り起こしに行くためです。

そこで、思うミミィの「今を生きているということ」を、どんな感情で思っているのか。そんなことが書き綴られています。

自分らしく「必死」に生きる

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ここに登場した3人の主人公と、他の登場人物全て、とにかく「自分の精一杯を生きる」ということをやっています。

人は、どうしても背伸びをしていい格好をしたり、逆にないものをねだって拗ねてみたりしますが、それでは身がもたないですよね。私もそれは気をつけて生きているつもりです。

今回の短編集は、2つのエピソードで共通する場面が、それぞれの主人公目線で描かれていて、そのことで「2つのエピソードが同時進行していたんだ」ということを分からせるという手法が取り入れられていて読んでなんとも言えない感じがしました。

また、古き良き時代の男女の心情の移り変わりというか、そういったところを、小気味良い文章て綴られています。

読む時間は少しかかりましたが、それでもよかった作品です。また、この人の作品は追っていきたいと考えています。

本日はここままです。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。