本日は、朝の読書時間で読み終わった本を紹介します。
ブクログレビュー
読書日数 5日
主人公の半生を綴った小説(これは、全てがフィクションだというが、そうでもないのかもしれない)の後半。高校卒業してから、この原稿を書くに至った37歳までの事となっている。
高校から大学、就職活動せずバイトから認められ、ライターの仕事をするようになった20代は、自分がバラ色の人生を謳歌していたが、30にさしかかり、髪が抜け始めるようになると、自分というものを見失うようになってくる。
20代のときの姉は、相変わらず無茶苦茶な行動を繰り返すばかりだし、母親は祖母が死んだ時にすぐ再婚。父親はそれを見計らって出家するという、とにかく自分勝手に人生を歩む。
でも、それが全て「自分自身の事は自分で決めていく」という、強い信念のもとに、各々が行動をしてきただけで、それで変わっていっていた。
だが自分だけ変わることができず、ただ逃げ回っていたんだと姉に諭される。
その一言で、自分の信じるものを見つけるために、幼少期に過ごしたエジプトにかえり、親友のヤコブとの再会を果たす。
その時に互いに出た言葉が「サラバ!」その一言で、20数年の時間が、埋められた。
その時に感じた事を、ありのままに書き記した物語である。
筆者の作品は、今回初めて読んだ。いろんなエピソードが畳み掛けるように前振りになっていて、最後のオチまで一気に読めたのは、本当に久しぶりの感覚だった。
また、一人追いかけたい作家に出会えた。(『サラバ! 下』のレビュー 西加奈子 (prelude2777さん) – ブクログ)
自分の事だけは信じていなくては!
前回の作品の後半部です。
【読書】「サラバ!」西 加奈子 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
前半のレビューです。
このお話の最大のテーマは
という事になるのではと思います。
前半の姉の貴子の奇行や、母の「自分が幸せになるんだ」といって、数々の恋愛をする事、そして父親が、お金の面倒を最後までみて、挙句に出家する事。すべてが「自分のやりたい事を、ただひたすらに貫いていた事」でしかなかったという事です。
結婚にいたたった経緯、7歳あたりで感じるようになった「不穏」、離婚しなければならなかった理由、姉が「サトラコウモンサマ」から身を隠すようになり、急に巻貝アーティストとして奇行しながら注目を浴びるようになった事。全ての行動がそれだったのです。
主人公はもともと「誰かの目の色を伺いながら【いい子】として育ってきた」せいか、要領よく過ごしてきた20代とは違い、30に差し掛かった時、「ただ逃げてばっかりで、他人の事ばかり羨ましがっていた」という事を、姉に気づかされます。
私自身にも身に覚えがある感覚になり、胸がちょっと締め付けられました。
主人公は、そこから「自分の信じられるものーを追い求めるため」に、幼少期過ごしたエジプトに旅立ちます。
そして親友の「ヤコブ」との再会を果たします。その時に、互いの事を結びつけたのは、あの言葉、
「サラバ!」
でした。
私自身の人生の中で、こんな気持ちになれるような親友は一人もいません。残念ながら。
ただ
「自分の信じる何かに向かって、ただ突き進むこと」
この想いだけは、しっかり持って生きていきたいですね!
一気に読めた!
エピソードに、主人公が高校2年の時に「阪神淡路大震災」が、そして34歳の時に「東日本大震災」を経験するというくたりが出てきます。その震災の前後で、様々な人間模様が描かれています。
「阪神大震災」の時は、主人公の周りで、いろんな人が離れていき、家族が崩壊していきますが、「東日本大震災」の時は、その事から逃げ出そうとして、自分の幼少期に過ごしたエジプトに行く決意をし、それがきっかけで「自分の信じるもの」が見つかります。
こういう身近なニュースを題材に、そこに絡んでくる主人公や周りのキャラクターの心情の変化や行動が、本当に心にズバズバと入ってきて、後半は前半の半分の日数で読んでしまいました。こんなに没頭して読めた本も久し振りだったと思います。
最後に
ここに書かれている出来事のいくつかは嘘だし、もしかしたらすべてが嘘かもしれない。(中略)
あなたは、あなたの信じるものを見つけてほしい。
そしてこの物語に、信じるものを見つけることが出来なかったのならば、他の物語を読んでほしい。(中略)
恥ずかしいが、姉の言葉をここで引用したい。
「あなたが信じるものを、誰かに決めさせては行けないわ」(サラバ! 下357p)
と締められています。
最近では「好きなことで食っていく」的な事がよく言われている中で、多分こういった感覚になれるほうがベストだとは思います。ですが、それは「人それぞれ」でいいわけだし、そういった事を「無理やり選択させられる必要はない」とも思うわけです。
この本を読み終わった時、改めて思いました。
初めてこの方の作品を読みましたが、こんなにすんなりと読めた印象だったので、追いかけてみたいと思います。
本日はここまでです。ありがとうございました。