ブクログレビュー
読書日数 8日
カルト教団をめぐる、4人の男女の運命の物語。
とある振興宗教から教祖が分裂して対立をしていくのだが、そこに関わる4名の男女。彼らが、何を持ってその宗教に共感していくのか。原点は「宗教」なのだが、それをどういう風に解釈をし、何を信じていくのか。そして最後は対立していく中、国をも巻き込んでいくんだが、4名の運命は如何に…
読後感でいち早く思ったのは
「哲学書だなぁ」というとだった。
話の難解さもすごくて、読みにくさもあったが、教祖達がはなす「人間とは」「命とは」「戦争とは」という話が、殊の外興味深く読むことができた。
また、様々な境遇や立場の人たちが、こう言ったテーマで語るというのも面白かった。悪の権化とも思われる教団Xの教祖だが、その狂気が生まれた一つの理由(考え方)が、なるほどとも思ってしまう。
筆者の今の日本(というかこの世界)に対しておもっていることを登場人物を使って、思いの丈をぶつけているという印象を受けた。
また、様々参考文献を読まれていて、それを分かりやすくしてくれているのも、本当にためになった。
いいか悪いかは別にして、この本は「自分の人生とは、どういうものなのか」ということを考えさせてくれるきっかけになりそうだ。
(『教団X』のレビュー 中村文則 (prelude2777さん) – ブクログ)
ものすごい世界観!
先日、「アメトーーク 読書芸人」で紹介されていたものの一つでした。最近、こういったことをきっかけとして、読書を本格的に始めてみようと思い立ち、今まで、あまり興味がなかった方の小説を読むことにしました。
アメトーーク読書芸人がオススメする本10冊をを紹介!【又吉・光浦・若林】 | オススメメディアなんでもニュース
そのうちの一冊です。
だいたいのあらすじは
という感じになると思います。
主人公が、とある女性を探すというところから始まるのですが、相手の教団に洗脳されていって、最後にどうなるのかという感じのストーリーが展開されるのですが、この作品に出てくる登場人物が語る言葉がものすごいんです。
教祖が二人出てくるのですが、それぞれ立場や考え方の違いがあります。正しい(と思われる)側の教祖からは「人間とは何か」とか「宗教とは、どういった概念で構成されているか」などが語られ、最後には「戦争は、なぜやってはならないのか」とか「宗教とはどういうことなのか」といった、ものすごい大きなテーマを信者に語ります。
かたや悪(といっても過言ではない)側の教祖は、基本的に人間というものを信用していないのですが、そこに自分の快楽を求めるために、医者という立場を使って人を凌駕することに人生を捧げるのです。そこに至るまでの考え方が、何か納得してしまう、圧倒的な説明力といいますか、読んでるこっちが変に洗脳されそうになります。
物語の詳細は読んでもらうとわかるのですが、カルト教団での洗脳の様子や、最後のテロ事件でのストーリー展開など、とにかく描写がすごいです。筆者の圧倒的なパワーを感じます。ですが、最後は、こんなふうに締められています。
「(人間として)生きていたら、その中で、どんな小さなことでも肯定できるものがある。私達は、全ての人たちがこの世界の一部でも肯定できるように、一つでも多く、そういう肯定できるものを増やすことができるように、努力していきましょう。善を行うことに構えてはいけません。気軽な善でいい。(中略)日々の中で、少しでもいい。何かに関心を持って世界を善へ動かす歯車になりましょう。」(教団X564P)
もう「哲学書」だ!
この装丁を見てもらうと「なんかすごそうな本やなぁ」という印象を持たれると思います。単行本で560Pを超える小説で、筆者本人も「一番長い小説です」とおっしゃっています。
小説家 中村文則公式サイト -プロフィール-
で、最後に「参考文献」が載っているのですが、ものすごい量でした。宗教・科学から靖国神社などの歴史、はたまた「テロ」のことまで、幅広いジャンルの著書が参考になって、この小説ができているんだと実感しました。
私が読み終えた時に思ったのは、
ということでした。
もし、そういったことを少しでも体験してみたいと思われた方には、オススメの小説です。
本日はここまでです。ありがとうございました。