本日は、本の紹介です。
i(アイ)
西 加奈子 ポプラ社 2016-11-30
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ブクログレビュー
シリア生まれのアイが、アメリカ人と日本人の養子として育てられ、高校生から一人の大人の女性に成長する仲で、様々な「生きること」への葛藤と、自己肯定に至るまでの物語
自分が「裕福」な家庭で育てられている事が、シリアの難民のこととかと照らし合わせて「どうして自分は裕福なのか」といったような葛藤を持って生きていた。高校生になって親友としてミナと出会ってからは、自分のおもいを全てうちあけられるような関係を持つことも出来たのに、それでも自分が「何故、私が世の中の犠牲にならないのだろうか」と思い悩む。
最後は自分が「生きる」ということを取り戻していく野だが、とにかく
「自分の周りでは、様々な事で人が亡くなっていて、それでいて人が生まれていく」
ということを想像するということを大事にして生きていく重要性を思い出させてくれる作品である。
生きるということの難しさ
この作品は「2017年度 本屋大賞」でもノミネートされた作品です。
この物語は、ひとりの外国人(シリア生まれ)のアイが数学の時間に
ということを授業で習うことから始まります。
数学の世界ではこの「i」という数字は虚数といわれるもので、詳細は本文でも出てきますが、この一言というが、アイにとっては、かなり重要な文言であるということなのです。
自分は、混乱の多かったシリアから、裕福なアメリカ人と日本人の夫婦に育てられてきて、それが何故か「どうして自分が裕福な生活を送れるのか」ということに罪悪感を覚えながら生活していくことに耐えられなくなっています。
また、世界では様々な事件や災害で、沢山の人々が亡くなっているという事実をみて「どうして自分がそこに選ばれないのだろうか」と思い悩みながら、高校〜大学と進んで行きます。
そんな高校時代に出会ったミナとは、両親と軽井沢に旅行に行くほどに仲良くなるのですが、そこで思わぬ告白をうけ、それもアイの中で色々と関わっていくようになります。
生きるということの本当の意味
この本のテーマとしては
ということだったのかなと思っています。
確かに、世界では戦争や災害で、何もなかったような人たちが、何の言われもなくなくなっているという事実。子供も大人も関係無いのです。
最近「災害があったからいろいろと自粛した方がいい」とか言われたりすることもあります。それは、その人が自分で想像して思いにふけるといいますか、そういう気持ちは大切だとは思います。
だからといって、みんながみんな「一辺倒」な考え方になる必要はないのです。
自分がどんな環境で育ってきたとか、どんな関わり合い方をしたとか関係無く「現に生を受けて生きている」と言うことに感謝して自分らしく生きていく必要があるということだと思います。
まずは「自分がこの世界に存在しているということ」に感謝して、それで周りに対して愛(アイ)を向けて言ったら良いのではないでしょうか。
そういったことを思い起こさせてくれた作品でした。もし「自分はどうして〜なの」といったことが頭に浮かんでくるような時には、この本を読んでみるといいと思います。
というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。
i(アイ)
西 加奈子 ポプラ社 2016-11-30
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