土曜日の研修参加は、たぶん初めてです!
「職務上請求」というもの
司法書士には、他人の戸籍謄本や住民票を請求するという権限が与えられています。ですが、ここ最近、そのことで様々なトラブルが発生しているように思います。
日本司法書士会連合会 | 綱紀事案公表一覧
たくさんあります
個人情報保護法の観点からみても、私たち司法書士は「他人のデリケートな情報」を扱う専門家として、しっかりと勉強して取り扱わないといけないわけです。
そこで、本日は東京から「日本司法書士会連合会司法書士執務調査室執務部会」の野中政志先生にお越しいただき、職務上請求について約3時間ほど、そして、1時間は、本会の綱紀委員会の先生に「綱紀について」お話しいただきました。
土曜日の開催にもかかわらず、多数の参加者がおられました。
研修ログ
第1部 職務上請求について
- 職務上請求用紙の取り扱いは、みんな関心がある。
- 戸籍は「法務省」住民票は「総務省」
- 平成20年5月に住基法や戸籍法が改正になった→初めはなかなか理解できなかった。
- 旧戸籍法→何人でも戸籍を請求できる→司法書士であれば明らかにしなくていい(法務省令で定める場合を除き)
- 旧住基法→何人でも住民票を請求できる→司法書士であればいい
- 旧法では「職務上請求」というものの概念がはっきりしてなかった。
- 法務省令に根拠がある→役人で変更できる→今は法律で決まっているので、国会を通さないといけない。
- 平成20年に一斉に変わった。偽造防止が施されている。
- 昔は、戸籍を勝手に変更することで様々なことが発生した(携帯、借金など)→従来の公開原則を改め、第三者が戸籍謄本の交付請求ができる場合を制限した。
- 戸籍法第10条(コレがベース)→本人等請求→請求の理由を明らかにする必要はない
- 10条の2(戸籍記載者等以外の請求)の中に何通りかある
- 「自己の権利を行使」「自己の義務の履行」のための理由があれば、他人の戸籍を取って良い
- 法定相続登記の保存行為として一人が申請する場合、その他の兄弟の戸籍を取ることも良い
- 第3項「受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要がある場合は」→受任してないといけない→司法書士業務でないといけない→必要がないといけない(抄本で足りるのであれば、謄本はいらない)
- 第4項<紛争事件代理>→依頼者の氏名や該当事由は書かなくて良い。
- 現に受任をしていないと駄目、受任予定は不可!→「いつ何の業務を受任したのか」と言うことを明らかにしておかないと駄目なので、そういったものを物理的にもっておくこと。
- 「現に請求の任に当たっている者」→窓口に書面を取得しにやってきた者
- 住民票も基本的には一緒
- 住民票の本人等請求→世帯縛り(cf戸籍→家族縛り)になるので、住民票が違っていれば、親であっても別住所の子供の住民票がとれない。
- 住基法12条の2→第三者請求(公用請求)
- 戸籍は「請求」→住民票は「申出」
- 第三者請求→申出かつ申出が相当でないと受けられない
- 戸籍と求められているものと同じである。
- 基礎証明事項以外→世帯主・続柄・本籍など→「本籍」だけは相続人を証明するために必要
- 戸籍の附票→管轄は総務省(住基法)→附票は戸籍単位なので「親族縛り」
- 依頼者自身が戸籍法や住基法の根拠によって請求できなければ、司法書士でもできない!(司法書士が取れる戸籍は、依頼者自身もとれる)→司法書士に何か特別な権限があるわけではない!
- 先ずは、自分たちの業務(司法書士法3条)を考える必要がある→本来業務のみに職務上請求用紙を使える→31条業務では該当しない可能性がある。
- 職務上請求を使うのではなく「第三者請求」を使って、報酬を取ってもよい。
- 旧法では「資格者」だからなのか→国民の利便のためである。
- 法律に権限を書いてあるため→司法書士から権限を奪おうと思えば「国会」を通らないとダメ→むしろパワーアップしている。
- 戸籍法・住基法に書いてあるから取れる→「弁護士だからとれる」とかではない
- 自分の書いた職務上請求は「誰でも見れる」という認識をもつ→取った理由をきちんと使う必要がある
- 第三者請求の委任状だと「本人の住所」でしかとれない→場合によっては「個人保護」上問題になる
- 戸籍法や住基法が代理人による請求方法を定めている以上、司法書士が職務上請求できる→何でも「第三者請求」をすることがいいのではない
- 事件が中断した場合、今までの戸籍を単純に返還していいのか?→ケースバイケースで考える必要がある。(依頼者がうそを言っていることも考える)
- いったん懲戒のレールに乗ってしまうと大変になる
- 業務禁止をくらうと、事実上アウトになる(再登録しても、日司連がはねる)
- 基本的に、懲戒を食らっているパターンとして「初めから不正目的で使うこと」(いわゆる確信犯)。
- 連合会HPに「職務上請求用紙の紛失」に関する情報がある。
- 2号様式は「職務上請求書」ではない→成年後見人として請求者本人を「代理して」請求するための様式である→権限を証明するための書面(登記記録)をつける
- 「後見申し立てに添付する親族図の作成」のために使う職務上請求書は1号様式(3号業務である)
- 雇用司法書士の場合→自分の会員証+被雇用者の司法書士の職員付請求用紙+委任状
- 訴訟物の価格の算定のための資料として取る固定資産評価証明書の交付申請書→登記のためには使えない!
第2部 綱紀について
- 違反事実が出たとして、弁明をしたからといって、内容がひっくり返ったことはない(十分に審議をしているため)→逆に違反事実がなかったと判明した場合は、弁明することもない。
- 調査に対して協力を拒否した場合、業務の違反をしていると推定される。
- 過去3年間で21件→直近3年間は減っているとはいっても、全体としては増加傾向にある。
- 成年後見・非弁行為については増加傾向にある
- 横領事件に発展してしまうと、業界自体が不利益を被ることになってしまうので、十分に注意するように(制度自体を揺るがすことになりかねない)
- 法令遵守は当たり前だが、依頼者との信頼関係を築くこと!
- 綱紀調査には、協力的にしてほしい。
- いつどんな形で綱紀案件にかかるかわからない(とばっちりとして食らうこともある)が、自分の執務に問題ないと確信しているのなら、問題ないと考えるようにする。
まとめ
今回の研修は、かなりわかりやすいもので、そして、何気なく使っていた「職務上請求書」というものに対しての理解がかなり深まったと思います。私自身も少し勘違いをしていた点が見つかったので、良かったと思っています。
こういう機会でないと、戸籍法や住民基本台帳法など、目を向けることはあまりないように思いました。
是非、こういった研修は新人の皆様にも受講していただいた方が絶対にいいと思います。「依頼者様の利便性の向上」のためにある職務上請求用紙を正しく使用することで、司法書士の信頼も上がると思います。
というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。