講義1日目の研修ログです。
第1講 訴訟代理人として知っておくべき基本事項
- 民事訴訟事件でも、比較的争点が明確で、類型的で、取り組みやすい事件である
- 原告代理人の知識があれば、被告側も大丈夫である
- ①交通事故によって発生した②物的損害の賠償請求を内容とする③簡易裁判所での訴訟事件→請求原因がだいぶ限られる(民法だけで話が出来る)
- 人身損害(治療費等・慰謝料)→事故でめがねが壊れたら「人身損害」である(物的損害ではない)
- 証拠が弱い時には、「民事調停」を使う
- 簡裁における物損事故の事件は増加傾向→裁判所の事件処理負担増の一因となっている
- 被害額は少額である
- 争点が類型的→損害額、過失割合が中心。(法的な解釈はそんなに難しくない)被害感情の過熱しやすさには違いは無い(金額の多寡は関係無い)
- 証拠が限定的
- なぜ「物損事故訴訟」なのか→①受任業務の幅の広がり→研修や認定を取っているのに、使わないのはもったいない②紛争の様相が類型的で、習得した技能を活用しやすい③(司法書士の)社会的な期待→本人訴訟が多い中で、代理人としてついていれば、裁判事務もスムーズになる。④多くの場合、依頼人の事件処理のコストの転嫁が可能(弁護士費用等の担保特約の普及→訴訟するときは最低限の費用がでる)
- 「簡にして要(不要な物は書かない)」→簡裁は常に忙しい(今まで上がってこなかった事件が上がってきているのに、人が増えない)→読み手に配慮して書面を作成する(配慮なかったら、斜め読みしてしまい、伝わらない)
- コスト感覚を身につける→事件の規模に見合わない仕事の仕方をしない(力のいれどころを考える)
- 押さえるべき所を知る→「落とさない」主張(依頼者との信頼関係をふまえて)
- 「主張の一貫性」(とくに事故状況)→物損事故訴訟では、実況見分調書がないことが多い→当事者の主張内容の合理性が事故状況認定の重要な要素になる→当事者の主張だけで判断することになる→主張の変遷が命取りになりやすい
- 「主張の客観性」→客観的な事実や証拠に基づく主張だと、裁判所も司法委員も理解しやすい。主観的な主張は、真偽を判断しづらく、認定の根拠とは成りにくい。
- 事故発生の日を聞くのは重要→時効にかかっているかどうか(不法行為だと3年、民415<債務不履行>だと10年)
- 時効中断事由は当てにしない方がいい。
- 発生場所(裁判管轄の関係)
- 事故の当事者の確認(違う人が来ている場合もある。人車の別、車両の種類)
- 事故発生の状況の状況→図を書いて、丁寧に聞く
- 損害内容(修理費等)→被害者の知識が足らない事もある
- 依頼者の希望や譲れない点→費用対効果を考える場合も必要である(費用倒れなど)
- 最初の段階できっちり「事故状況」を確認すること!
- いきなり訴訟をしない理由→相手の出方が分からない状況で訴訟するのがリスクあり。示談で終われば、被害者等の負担やコストが少なくする。「勝てても取れない」事もある→相手が保険に入っているのか、事故に適用されるか。いきなり訴訟すると、弁護士費用が認定されない事がある(「示談したけど、無理だったから、訴訟した」というふうにすれば…)
- 相手がキツい人だったときは、当人にも受任通知を出す場合もある
- 受任通知は「示談の始まり」という性格のものである
- 満額は主張するけど、対案はだす→示談するのか裁判するのかについては、確認すること
- 訴訟した方が良いかどうかは何をもとに判断するか→判決の見込み・費用と時間・依頼人の意向→2つ欠けると示談する必要があるのではないか
- 判決では有利になりそうなのに、依頼人が乗り気ではない場合、依頼人を説得して訴訟をする場合もある(相手方の提示する物があまりにもひどい場合)
- 裁判の期日は1ヶ月おき→1ヶ月というのは、依頼者にとっては長く感じる
- 依頼人が納得しない場合→リスク説明を丁寧にするべき(同意書を書いてもらうこともある)
- 対物賠償責任保険→加害者の被害者に対する賠償責任を補償するための保険→被害者側にとっては賠償金支払いをスムーズに受けられる会中という点で重要。加害者側は使用すると等級ダウン
- 免責金額の設定に注意→「免責金額10万」だとしたら、加害者は10万、保険会社90万になる(保険料が安くなるから)→被害者としては、全額保険会社からとれない(免責分は加害者本人から取らないといけない)
- 自転車の場合、自動車保険では補償対象外となる場合ある
- 車両保険→被害者が事故の車両の修理買い換え等が必要になった場合に備えるもの→被害者が車両保険を請求すると、損害賠償請求権を保険会社に代位することになる
- 弁護士費用等担保特約→賠償請求時の代理人費用や手続費用を担保するためのもの(300万が上限→弁護士費用が300万超える場合は被害額が1000万ぐらい)→自分が請求されている場合は、弁護士費用の担保特約は使えない→賠償保険に入っていれば、保険会社の示談代行サービスで弁護士が使える→事実上保険会社の支配基準に拘束される
- 民715(使用者責任)民719(共同不法行為)契約責任(債務不履行 民415)
第2講 物損事故訴訟における訴訟作成の要諦
- 「必要なことが漏れなく欠いてあること」→請求が認められない(請求棄却)
- 「無意味な記載が無いこと」→伝えたいことが伝わらない
- 一定の書式を守った上で、事案に応じた改変を行う→事故の状況・損害の額等
- 訴えの提起は訴状を裁判所に提出してしなければならない(民訴133)
- 簡裁は口頭で訴え提起は口頭で出来る(民訴271)→ほぼ無い
- 訴状には要件事実をもれなく書いておかないといけないのか?→被告が無答弁、期日不出頭でも、欠席判決が取れなくなってしまうから
- 過失割合・慰謝料については、裁判所が判断するので、欠席判決でも減らされて判決がでる
- 主張の後出し戦略と先出し戦略は、どっちが適しているのか?→物損事故に限っては、先出し戦略(裁判官の先入観を誘う)cf)争点を広げすぎる「後出し戦略」は、後で証明をする必要がある。
- 「誰が請求するのか」→訴え提起後に請求権者を謝っていた場合、請求棄却判決が見込まれるため、ロスが大きい
- 取り下げにおいて、代理人として注意をする必要がある点→時効の問題(取り下げは「裁判がなかったことになる」事になるので、時効中断効がなくなってしまう)
- 物損訴訟では「事故の被害車両の所有者」→原付等には車検証とかがないので、自賠責保険証書等で確認する
- どっちが110番を呼んだかによっては、自分が過失を犯したと思ったかどうか判断される場合がある
- 割賦販売契約で所有権留保している場合、大抵使用者が修理費等を出すことについての条項があるので、その約款等を証拠として提出して、使用者が請求できる
- 訴え提起後に請求の相手方を誤っていた場合(当事者適格がない場合)出し直す必要がある
- 被告とすべき者の一部を落としていた場合「訴えの追加」をする→同じ請求をだして、訴え併合する→別訴提起して訴え提起をした場合は、倍の印紙を払う事になる
- 被告が増えるということは、敵が増えるということである→物損の場合は、あまり考える必要はない
- 会社も必ずあるとは限らない→運転の当事者を残しておく意味はある
- 依頼者が請求したい損害と請求すべき損害は違う→請求すると言うことは「請求を根拠づけるための立証をもとめられる」から
- 認められる余地の乏しい請求をする事によるデメリット→①請求額があがると「印紙代」が上がる→認められないものに印紙だすのか?②敗訴してしまうリスク→依頼者の視点に注意する(期待値を無駄に上げることになる)③裁判所の評価が悪くなる
- 請求できるか否かは「過去の判例・裁判例」が中心的な基準となる
- 「どのように請求するのか」→一般不法行為責任、使用者責任、共同不法行為責任について取り上げる
- 「使用者責任」を発生させるためには、使用者(従業員)に民709の一般不法行為が発生していることが前提となる
- 共同不法行為責任を考える場合は?→多重事故(玉突き事故→単独だったら分けられるが、無理な場合)
- 不真正連帯債務→負担部分がない(当然に求償は生じない)→両方に対して全額請求が可能
- 請求に関しては、条文内容に基づいて請求をする。
- 附帯請求の遅延損害金を請求→請求しない理由がないから(正当な損害の一部)和解の際の譲り代(ゆずりしろ)になるから→附帯請求分は、印紙代がかからない
第3講 物損交通事故訴訟の争点
- 物損事故訴訟は「書証」があるかないかで決まることが多い→裏付けとなる証拠を収集・提出できるか
- 経済的全損(物理的全損ではない)→修理は出来るが、直すためのコストが車両の時価額を超える場合→低い方の時価額の方が損害として認められる
- 見積書だけでも良いのではないか→実際修理をしているとなれば、領収書をだけと言われる(値引きしているのであれば、値引き後の額が損害となる)
- 写真の見た目でたいしたことが無いと思われる場合もある→修理の見積については、キチンと出す必要がある
- レッドブック(自動車価格月報)→全ての自動車の時価額が掲載→オートガイド社発行→弁護士費用特約がついている場合は、その保険会社に尋ねてみる
- 必要ない修理費目も上がっている場合も考えられる→知り合いの見積書(修理見積の作成者)も関係無い部分が上がっている場合も考えておく
- レッカー代は、実際使って、実際払っていないと請求出来ない(見積はダメ)
- 評価損・格落ち損→新車が被害に遭った場合(シャーシが歪んでしまった場合などに限られる)→登録からある程度経過している場合は、認められない場合がある→修理費用の2割とかで主張する場合が多い(修理費用の見積書等)
- 代車のグレード、期間、必要性が問題となりやすい→グレードについては、基本的には認められない(良い車を乗っていることが、客観的に認められる場合は、まれに認められる)
- 交渉が長引いたからといって、その期間の代車使用が直ちに認められる訳ではない→2ヶ月は少し長い→相談者には、期間を限って、グレードも控えた方がいいと言った方がいい
- 休車損害は立証は難しい→過去3ヶ月の売上げと経費を出して、それを元に計算する
- 請求する側が「遊休車両(予備の車)がないこと」を立証する必要がある
- 訴訟代理人費用→依頼人と専門家との委任契約の内容に関わらず、損害額の1割程度にするのが通例→実際の報酬とは違うということは伝える必要がある→和解の場合はカットされる場合が多い。
- 物損による慰謝料は難しい→請求するかどうかは依頼者と相談する
- 積荷損害は入念な損害立証が必要である
- 遅延損害金は年5分→事故日から
- 商行為の場合だと6%→請求しない限り遅滞にならないので、事故日から取ることが出来ない
- 一般不法行為責任(民709)→具体的な事実と法的評価(条文)を記載すること
- 過失割合→物損事故訴訟における最大の争点
- ドライブレコーダーは、万能ではない→他人の車の場合、データの存否確認と任意開示を求めることになる
- タコグラフチャートは今ではあまり使われない→ドライブレコーダーが動いていなかったときに使うことがまれにある
- Googleストリートビューに過去の写真が使われていたりする→以前にはなかったもの(あったもの)が証明できたりする
- 損害発生レポートを証拠として出す場合は、保険会社に確認を取る必要がある
- 交通事故証明書の甲欄→過失が大きい(と警察が判断した)人が書かれている
- 実況見分調書→物損の場合だと作成されない→当事者の署名押印欄がない→当事者の言い分と食い違うケースもあるので、あまり鵜呑みにしない
- 物件事故報告書は弁護士(弁護士23条照会)しか取れない→文書送付嘱託(民訴219)→物件事故報告書について行うのかは、要検討(裁判で使うことはしない方が良いのではないか)弾劾証拠としてつかえるのではないか
- 陳述書はチャットできてて当たり前→客観的な証拠と照らし合わせること!
- 物損事故訴訟では、客観的証拠がないことが多い
- 事故状況の説明の一貫性に配慮すること→事故状況の確認と一貫性
- 主観的証拠は客観的証拠との矛盾・齟齬に注意すること
まとめ
本日1日目は、交通事故の物損事故訴訟に関する、基本的な知識の確認をするというものでありましたが、自分にとっては、あまりやってきていなかった分野でしたので、勉強になりました。
依頼者さんと向き合うときに、費用対効果のことを考える事はしていたつもりでしたが、その内容がもっと踏み込む必要があると、改めて認識しました。
明日は、実践的な内容になると言うことで、当日課題を見ましたが、やっぱりスッキリとは分からないですね。明日も楽しみです。