本日は読み終わった本の紹介です。
ブクログレビュー
温泉街のとある集落で、一人の少年が不思議な少女と出会い、1年一緒に過ごしていく中で、自分が成長していくことへの葛藤と、恋心に揺らぎながらも「人として与えていくこと」や「自分であること」がわかっていくといった物語。
相変わらずのストーリー展開で、「コズエ」との別れのシーンでは、人間が生きていく上での本質というものを小学5年生が必死に感じていこうとする様は、ぐっときた。
最後のどんでん返しも、本当にハートフルな感じで、主人公の少年の成長の様を見ながら、自分が小学校の時を振り返ったら、そんなことを考えていたんだろうかと思ってしまうほど何もなかったなぁと痛感した。
思春期に思う「自分の成長」のこと
今作の舞台は、とある田舎の温泉街です。主人公の慧目線で話が進んでいきます。
小学5年生になった慧は、転校生コズエと出会います。その少女は、可愛いので、いろいろみんなにちやほやされだすのですが、時に、じっと澄んだ眼で慧を見つめてきたりします。その時に「あれっ」と思うようになります。
コズエは、慧の両親が経営している温泉宿に「オカアサン」と一緒に住むようになり、慧の関係が親密になっていきますが、その時から特に「まく」という行為に執着するようになってから、二人で裏山にあるお城のの石垣に行くようになります。
そうすると突然、
「私はこの星人じゃない。『コズエ』の体を借りて、ここにきた」
という告白を受けます。
それからというもの、二人で裏山の石垣に行くたびに、「コズエ」から不思議な話を聞くようになったあたりから、自分が「穢らわしい大人になっていくこと」に恐怖を覚えるようになります。
でも、自分の体は変わっていってしまう。そのうち、この町に住んでいる「だらしがない大人たち」と同じになるんだと。そのことをとても嫌がるようになります。
この感情って、私達が小学生時分に思ったことって、少なからず間あったと思うのですが、慧のように、「追い込まれるような気持ちで」考えたことはなかったですね。でも、その葛藤ぶりもわかるような気がしました。
また「コズエ」に対しても、段々と恋心が芽生えていきます(それを慧自身は認めたくはなかったようですが)
時を経て「大人になった」という実感を持ちます。それが後押しトタなって、コズエに告白をします。この告白が、どうなっていくのか。また、慧は様々な出来事を通じて「人として生きていくといことは、どういったことなのか」を学んでいきます。
キャラクター描写が面白い
この町では、様々なキャラクターが出てくるのですが、この作者の描くキャラクターは変わった人が多く、その描写も面白いです。
大人になっても、最新刊の漫画を公園で大声で朗読している「ドノ」や、公園で会う人会う人に「僕は、きみの未来だ!」と言いまくってる「ミライ」。そして、集落で浮気が発覚し一大事件を起こしたにも関わらず、未だに女好きが治らない父親など、本当に「だらしない」大人たちがたくさん出てきます。
でも、その人達を通じて「人というのは変わっていてもいい。自分らしく生きていくことが大事なんだ」ということを慧が学んでいくわけです。
最後は「人間を始め、万物はいずれ朽ちて粒になるけれど、それが次のものに受け継がれ、そこで生きるんだ。自分はみんなで、みんなが自分だ」というところに行き着きます。
人間描写がおもしろくて、ところどころ笑えるんだけど、このメッセージを受けとると、グッと来ます。清々しい読後感でした。
ちなみに、表紙や挿絵も筆者自身が書いているそうです。それがストーリーを後押ししてくれます。人生の見方を変えられる一冊かもです。
本日はここまでです。ありがとうございました。