商業登記規則が改正になっています。施行が2月になるようです。
架空の取締役の登記が横行(?) – 司法書士内藤卓のLEAGALBLOG
何故そうなったのか?について解説しています。
「なりすまし」を防ぐために!
今までは、取締役を新たに選ぶ場合、一般的にはその方の住民票の添付は求められていませんでした。住所の登記も基本的には不要です。
ですが
会社法(平成17年法律第86号)では、代表取締役については、その氏名及び住所を、代表権を有しない取締役等については、その氏名を登記することとされる。このうち、代表取締役については、実在しない者や他人の氏名を冒用した登記を防止するため、代表取締役が就任を承諾したことを証する書面の真正を担保する措置として、その書面の印鑑について市区町村長が作成した印鑑登録証明書の添付を義務付けている。
しかしながら、代表権を有しない取締役等については、実在しない者や他人の氏名を冒用した商業登記が行われている可能性があるとの指摘がなされている。このため、代表権を有しない取締役等の登記の申請に当たり、他人や実在しない者の名義が冒用される事例の把握に努め、その結果を踏まえ、登記事項の真正を担保するための所要の措置の要否を含め、対応策について検討する必要がある。
代表権を有しない取締役等の真正を担保することは、詐欺的投資勧誘の特徴の一つである事業者の追跡・捕捉の困難性を改善し、役員等の第三者に対する損害賠償責任を追及することなどを通じて、詐欺的投資勧誘の抑止とその被害回復にも資するものと考えられる。
以上を踏まえ、警察庁、金融庁、総務省、法務省、経済産業省及び国土交通省は、上記建議事項2に基づく措置を講ずべきである。(詐欺的投資勧誘に関する消費者問題についての建議 : 消費者委員会 – 内閣府)
とあるように、「ただの人数合わせとして(又は、それ以上の悪意ある目的を持って)実在しない人物を登記することができてしまう」制度について、テコ入れをしなくてはいけなくなったようです。
原則は「最初だけ」!!
この度新設される商業登記規則第61条第5項は
設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した住所につき市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書を添付しなければならない。
となっています。
ここで、少し疑問が出ちゃいました。
先ほどにも書きましたが、今までの運用だと、一般的な株式会社では取締役の住所は登記事項ではないため、取締役の就任承諾書に住所の記載をする必要はありませんでした。
また、議事録上に「被選任者は即時就任を承諾した」と記載があって、その議事録に新任の取締役の記名押印があれば、就任承諾を証する書面として扱いが登記実務上認められています。
上記の条文の赤字のところだけみると
とも解釈できそうですね。
ですが、平成18年の会社法の改正によって「有限会社」の設立ができなくなったことを受けて、会社の機関編成はかなり自由度が広がり、取締役は3人必要ではなくなりました。
その場合の会社(取締役非設置会社)の新取締役の就任承諾を証する書面には「実印+印鑑証明書」が必ず必要です。(商業登記規則第61条第2項)再任(同じ人が役員に就任すること)の時は必要がありません。その場合には住民票を添付する必要はありません(新商業登記規則第61条第5項但し書き)なので、そんなに慌てることもないと思います。
あくまでも新設の条文が適用されるのは「取締役会設置会社(取締役会がある会社)」ですので注意が必要です。そういった登記手続相談も随時受け付けでおります。お気軽にお電話ください。
というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。