【司法書士業務】司法書士の専門家責任㉒〜訴訟代理における善管注意義務と倫理〜(中)

本日は、後半を書こうと思っていましたが、思いの外書くことが多いと感じましたので、明日に結びを持っていこうと思います。
【司法書士業務】司法書士の専門家責任㉒〜訴訟代理における善管注意義務と倫理〜(前半) | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
前半はこちらです。

「賛助する」というのは一体何か?

どんと助けます!!
どんと助けます!!

昨日のエントリーでも書きましたが、裁判業務に関しては「双方代理が硬く禁止」されています。ざっくり言うと、「訴える側の代理人は、訴えられる側の代理人になることができない)ということになります。まぁ、なんとなくイメージはできると思います。

ですが、もっと細かく追求していくと「一旦聞いた相談者の事件の相手方から、裁判業務の依頼があったら断らなくてはいけない」ということも出てきます。

司法書士法第22条第3項では、こう取り決められています。

第3条第2項に規定する司法書士は、次に掲げる事件については、裁判書類作成関係業務を行つてはならない。ただし、第三号及び第六号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 司法書士法人の社員又は使用人である司法書士としてその業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの
五 司法書士法人の社員又は使用人である司法書士としてその業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
六 司法書士法人の使用人である場合に、当該司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務に関するものとして受任している事件(当該司法書士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件

この「賛助」という単語の意味なんですが、

賛助とは、協議を受けた具体的事件について、相談者が希望する一定の結論または利益を擁護するための具体的な見解や法律的解決手続きを示したり、助言したことをさす。(司法書士の専門家責任p303)

となっています。依頼者というのは、ある程度の答を持ってきているものなので、それに応じた答えを司法書士が言った場合がこれに該当することになります。

では、「賛助しなかった」つまり「依頼者の思っていた答えと違うことを言った場合」はどうなのかというと、

賛助とまではいかなくても、その協議の程度および方法が信頼関係に基づくと認められる場合にも,同様である。(同法22条3項2号)。協議の程度とは、協議の内容や深さに着目するものであり、協議の方法とは、協議の回数、時間、場所、資料の有無など協議の態様に着目するものであり、信頼関係に基づくと認められるとは、協議の程度と方法を全体としてみたときに、依頼を承諾したと同程度の信頼関係に基づくものと判断される場合をいう(司法書士の専門家責任p303)

その事件についての相談を聞いた時間だったり、回数だったりすることがあるので、「立ち話程度ならオッケーでも、無料相談会の時はダメだったりする」ことがあります。
なので、

依頼された事件がかつて相談で受けたものかどうかがはっきりしないことがある。そのようなときには、法律相談会の主催者に連絡し、その氏名や相談内容等を確認するなど慎重を期すべきであろう。(司法書士の専門家責任p304)

と言えるとおもいます。

ただ「断る」だけでいいのか?

それだけじゃダメなんですよね!
それだけじゃダメなんですよね!

司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を断ることはできないが、「簡裁訴訟代理等関係業務に関するもの」は除かれている(司法書士法21条)すなわち、訴訟関係業務については、従来の業務と異なり、依頼者との間で継続的で強い信頼関係が維持される必要があるため、依頼に応じる業務を課せられてはいないことに留意すべきである。((司法書士の専門家責任p310)

とあるように、司法書士として毅然と業務を断ることも大事であるのですが、だからと言って単純に断ることは、サービス業としてはあってはダメだと思います。なぜなら、相談者にとって「利益相反だから」ということは、全く関係がないからです。

私としては、業務を受けられないということが発覚すれば、他の先生を直接ご紹介するよりかは「司法書士会」や「弁護士会」で開催されている相談会をご紹介すると思います。なぜなら、とっかかりとして「相談会」というのが悪くはないと思うからです。

【司法書士会】相談会のご案内と無料相談の良い点悪い点 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
相談会についてはこちらを参考にしてもらえると嬉しいです。

ここの論点は本当に充実していると思います。明日、結びにつなげたいと思います。本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。