【司法書士業務】司法書士の専門家責任㉒〜訴訟代理における善管注意義務と倫理〜(後半)

昨日の続きです。本日で最後にします。
【司法書士業務】司法書士の専門家責任㉒〜訴訟代理における善管注意義務と倫理〜(中) | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
昨日のエントリーです。

司法書士としての事件受任の形態

こんな聴き方はしませんよ!
こんな聴き方はしませんよ!

裁判業務を受任した場合、

  1. 依頼者から話を聞いて
  2. その事実が本当にあったかを裏をとって
  3. 法律的に組み立てて
  4. 相手の言い分や反論から、何で食い違っているかを検討し
  5. 証拠を検討して
  6. 最後は、何を持って解決とするのかを判断する

といったように、たくさんのプロセスや判断基準を検討しながら、ある程度時間をかけて手続きを遂行していきます。登記の場合だと、1ヶ月程度で終わることがほとんどだと思いますが、裁判事務だとそんな短い期間で終わることはないと思います。

こういった手順の中では「司法書士は、事実を知る当事者(依頼者)と、法律判断する裁判所との中間にいる(司法書士の専門家責任p308)」ため、当事者の知っている事実や方針に関してはしっかりと聞き取って、裁判上で使えるように解釈していく作業が必要になってきます。

司法書士に訴訟代理権が付与された現在においては、本人の意向・希望を前提とした訴訟代理型モデルが基本とされるべきであろう。訴訟代理の受任か、裁判書類作成の受任かは、依頼者の意思いかんによることになるが、法的な主張あるいは手続遂行が依頼者本人では難しいのという場合には前者、そうでない場合には後者とするのが相当であろう。司法書士の専門家責任p309)

といった判断基準を持っておく必要があります。

報告・説明は丁寧に…

しっかり報告します!!
しっかり報告します!!

でも、依頼者にとっては、上に書いてあることに関しては、どーでもいいんです。要は「自分の依頼に答えてくれたらいい」のですから。なので、そこに対しては、誠実にキチンと対応していく必要があります。

そのために、

司法書士が、依頼者から聴取し、調査した事実を法的観点から吟味・検討する段階では、司法書士は、「平均的認定司法書士としての技能水準に照らして、当該事象に対して、およそ考えられるあらゆる面から法的に吟味・検討すべき義務」がある。
(中略)
どのような活動をしていくかの具体的措置を選択する段階では、司法書士は、「問題解決にふさわしい措置を選択する義務」がある。そうして選択した措置について依頼者に対して説明して承諾を得る段階では、司法書士は「依頼者が意思決定をするのに必要にして十分な説明をする義務」がある。(司法書士の専門家責任p311)

といった3つの義務があるとされています。

なので、進捗状況の報告を依頼者には定期的に行う責務が私たち司法書士にはあります。もし、こういった報告等がない場合は「どーなってますか?」と報告を促すことをしていただいて構いません。

ですが、逆に依頼者様との連絡が取れなくなるといったことが、時々おこります。ある手続きで裁判所から求められる書面を取得して来ていただくような時に、連絡が取れないといったことになりますと、手続きが滞るばかりか、下手をすると手続き自体が全てやり直ししなくてはいけなくなることがあります。

このエントリーで一貫して申し上げてきたことですが、登記の場合とは違って、裁判手続きは基本的に長期化します。そんな中で「継続的な信頼関係」を築いていくためには、こういった「連絡をとりあう」ことはとても重要だと思います。

もし、携帯番号の変更や、引越しなどで住所が変わった時には、すぐに依頼されている司法書士まで報告していただきますと助かります。

というわけで、3日に渡って書きましたが、いかがでしたでしょうか。「裁判業務」というのは、私たち司法書士にとっては、やっぱり特別な業務だと思います。

本日はここまでです、ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。