本日は「司法書士の専門家責任」レビュー1回目です。
司法書士の仕事を大まかに説明すると「登記手続代理業務」と「裁判所に提出する為の書類作成」がメインだったのですが、平成15年に司法書士法が改正され「簡易裁判所での訴訟代理業務(140万円まで)」ができる様になりました。
なぜ、このような事になったのか、それは、
「司法制度改革は〜中略〜司法書士代理を構想しようという流れになった。それは、これまで司法書士層が登記代理を中心として地道に、質の高い仕事を積み上げてきて、社会、あるいは社会の構成員ある市民が司法書士層に対して信頼していたという事が基礎にあるという事になる」(司法書士の専門家責任p1)
いわば私の先人達が、司法書士としての役割を全うされてこられたからであるという事です。だからこそ、これからの制度発展の為に「司法書士として、どう社会に貢献できるのか」を真剣に考えないといけないです。
司法書士と依頼者との関係とは
私たち司法書士に依頼をされるお客様(以下「依頼者」といいます)との関係は「委任契約」であると言えます。
どういうことかと言いますと、依頼者から「お願いします」と申込があって、こちらが「いいですよ」と承諾をして初めて関係性ができるという事になります。
ただ『司法書士の公共的性格から、修正される場面がある(司法書士の専門家責任p4)』という事が言えます。
例えば「登記手続に関する業務」は、司法書士が独占しているわけですから「安い仕事はできません」とか「忙しいからできません」などという理由で断る事はできません。ですが、依頼者から「アンタ(司法書士)気に入らんから、この仕事頼むのやめるわ」といつでも言う事ができます。
また、仕事を受ければ「委任者からの要求によって仕事の進捗状況について報告する義務(民法645条)」がありますが、『司法書士としては、依頼者からの求めがなくても、適時に適切な報告をする事が必要であると思われる。(司法書士の専門家責任p4)』とある様に、依頼者に言われなくても報告していかなくてはいけません。
司法書士の注意義務とは
司法書士は、依頼者に対しては委任契約である以上、民法上の注意義務(644条)を負う事になりますが、それ以上に職務上の注意義務が課されています。
本書によれば、
司法書士は、顧客の利益擁護一辺倒に止まるのではなく、社会正義を実現すべき公益的役割をも有する事に留意するべきである。すなわち司法書士は顧客との信認関係に由来する義務に基づき最大限の努力を傾注してその権利実現・利益擁護に邁進するべきであるが、そのために社会正義その他法規範に違反し、また公益ないし公的価値に抵触することは許容されないのである。(司法書士の専門家責任p7)
つまり「依頼者の事を考えるのは当たり前、それ以上に資格者として、社会の為に正義を曲げてはならない」という事になるのではないでしょうか。
そういった事を踏まえて、司法書士には依頼者に対する説明義務が課せられています。
依頼者と司法書士には、法律知識において差があります。ですから「依頼者の目的を達成するため」に、法律的な情報を丁寧に説明する必要があります。
また、司法書士は依頼者とは別個独立している存在でなければなりません。なので依頼者から法律的に無理なことをお願いされたとしても「できない事はできない」という必要があるし、場合によっては「後にできなくなる可能性があるのなら(利益相反など)、後々そうなる事を予想して依頼者に分かりやすく説明する」必要があります。
契約の時期はいつなのか?
では、司法書士と依頼者の契約はいつ成立するのか。基本的には口頭でも成立しますが「報酬など基本事項を説明したうえで、委任契約書を作成する執務を徹底する事が要請される(司法書士の専門家責任p13)」とある様に大概の場合は「委任契約書(業務依頼書)」がかわされる事になると思います。
本日は第1章「司法書士と依頼者との関係」についてレビューしてみました。有難うございました。