本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第22回です。
もう10年…
司法書士が簡裁代理権を取得できるようになって、10年がたちました。その間「原告本人訴訟率の推移をみると、平成16年度には91.65%であったが、平成23年度には62.83%になっている(司法書士の専門家責任p299)」ということをみても、ある程度は司法書士が訴訟代理人としての地位を確立しようとしていることがわかると思います。
なぜ、司法書士に簡裁代理権が付与されるようになったかというと、
第1に、司法システムないし司法制度全体の意義として、リーガルサービス提供の総量の増加である。
第2に、司法書士は登記申請代理業務をしており全国各地に(弁護士過疎地域あるいはゼロワン地域にも)遍在していることから、市民に身近な法律専門職である司法書士を有効に利用することにより司法に対するアクセスを広げるという意義があった。
第3に、司法書士からみると職域の拡大にもなったのである。(司法書士の専門家責任p299〜300より抜粋)
という3つの意義があったとされています。
なのでこれからは「不動産登記申請代理の分野において、過誤を防止し、水準を向上させる(本書p300)必要がありますし、「新たな職域である簡易裁判所における訴訟代理人としての役割を過不足なく果たしていくこと(同p300)」も要求されていきます。
決定的に違うことがある
司法書士は今まで、登記申請業務に関して、長い年月をかけて信用と専門家としての地位を確立してきました。長年の諸先輩方の努力なしで、私を含める司法書士が仕事としてできているのです。そのことは何度も書いております。
例えば不動産売買に基づく所有権移転登記手続申請代理業務については、売主と買主の双方を代理することが一般的でした。なので
売買に基づく所有権移転登記手続については、その登記が完成することによって売主も買主も満足が得られるものであるから、その申請代理行為は登記権利者、義務者のどちらからも感謝されるものであった。(司法書士の専門家責任p301)
ところが、こと「訴訟関係業務」においては、
対立当事者の一方に立ってその者の利益のために業務を行うことになる。すなわち、訴訟代理は、常に対立当事者の一方の代理人となるものであるから、双方代理は厳しく禁止され、利益相反行為を回避することが要請される。(司法書士の専門家責任p301)
のです。
このことは司法書士法第22条(業務を行い得ない事件)や司法書士倫理第61条にもしっかりと決められています。
では、具体的にどういった内容になるのかについては、大事なポイントだと思いますので。明日詳しく書こうと思います。本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。