本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第4回です。
相談業務における「専門家責任」とは
前回のレビューでも書きましたが「相談業務」は、司法書士業務の大半を占めています。
なので
相談の過程において、司法書士が相談者の言いたいことを聴くことができたか、相談者の理解能力に応じた説明をすることができたか、どのような姿勢と心構えを形成して相談に当たることが相当かなどの面接技法(面接スキル)に関わる問題も大切である(司法書士の専門家責任p34)
であると言えます。
ですが、本日はそこではなく「専門家責任」という観点から、倫理という問題を見ていきます。
司法書士は「法律相談において、相談者が自ら問題状況を解決するための方策・手続を教えるなど、何らかの法的措置を講じるようにするために説明・助言義務がある。(司法書士の専門家責任p35)」と言われています。ですから「義務に違反し、その結果相談者に不測の損害を与えた場合には、法律相談契約上の善管注意義務による債務不履行としての損害賠償義務を負う(司法書士の専門家責任p35)」ことになりますので、いい加減な回答は絶対しておりません。ではどのような倫理観を持たなくてはならないのでしょうか?
中立公正で真摯誠実に
私たち司法書士は「常に品位を保持し、業務に関する法令実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない(司法書士法第2条)」と法律に書かれている以上、公正・誠実にやらなければ、すぐにクビになります。ですが、相談者はある一方向からの言い分に過ぎません。これを鵜呑みにすることなく「一定の証拠・データに基づいて事実を認識することが大切(司法書士の専門家責任p36)」であるので、それを肝に銘じながら相談業務を執り行うように心がけなくてはなりません。
秘密を守る
司法書士法には
司法書士又は司法書士であった者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない(司法書士法第24条)
という大きな規定があります。「秘密は墓場まで持って行く」ことを守らなければ、思い処分を食らってしまうのです。これを設けることによって
司法書士の守秘義務の実質的根拠は、これらの規範により、依頼者が自分の秘密に属する事柄、プライベートな事柄を、安んじて司法書士に相談できることを保障するところに求められる(司法書士の専門家責任p37)
つまり依頼者の嫌なことや不利なことを聞けることでより正確な回答や手続選択が出来る様になるということです。
誤りのない回答を!
当然ながら私たちは専門家ですから
法令実務に精通して、依頼を引き受けられるだけの十分な力量を備えていることが要請される(司法書士の専門家責任p37)
わけです。ですので必死に勉強をし続けていかなければ、到底依頼者のニーズやトラブルに対応なんかはできないのです。
ただし「出来ないものを無理にやることは避ける」必要があります。これについては、
登記申請代理については「力が及ばないので、やりません」と拒否するのは原則許されない。しかし、認定司法書士が訴訟代理事件などその他の事務について、自分が自信のない依頼を断ることは、正当な事由になると解される。(司法書士の専門家責任p38)
つまり、自信がないまま事件を受けたところで、依頼者様に迷惑かけるだけなので「依頼者様のためになる行動を取らなければ」なりません。
また、専門分野以外のことについてはとにかく専門家に繋げるように努めています。その方が問題も起こりにくいからです。
相談業務は奥が深いですね。
というわけで、本日はこのぐらいにしておきます。ありがとうございました。