【読書】「スクラップ・アンド・ビルド」羽田 圭介 著

今日は、読書習慣化の時間で読みおわった本を紹介します。

ブクログレビュー

読書日数 8日

現在無職の息子が、介護老人と過ごしていく日常。そのなかで「介護するということ」と「自分とのむきあい方」みたいなものを見つけていこうとする主人公の葛藤(というか闘い)が描かれている。

とある仕事を辞めてから次の職が決まるまでの間、無職だとは言いながらも資格試験の勉強をしながら再就職の為の面接を繰り返す日々。途中に彼女とのラブホに通う日々がありながら、祖父の介護を手伝うという使命があった。

「死にたい」「寝たきりおわり」ということを毎日繰り返しつぶやく祖父。主人公は、その祖父の願いをかなえるべく、どうしたら良いのか考えた結果「過剰な介護をすることにより、人間が生きていく上で必要な能力を奪っていく」という結論に達し、それを忠実に実行に移す。

それと同時に「自分が力強く生きていくためには、とかく自分の体や筋肉を、必要以上に『破壊と再生(スクラップアンドビルド)』させなくてはいけない」ということか、急な筋トレに目覚めるようになる。自分の生に対して向き合う姿と、祖父の弱らせる為の必要以上な介護をするせいかつを続けていくことになる。

最後のオチとして、祖父は「死にたい」とは言っておきながら、生に執着していたのだということが分かり、今までの祖父と向き合っていた時間はなんだったのかという思いが込み上げてくるのだけど、祖父との介護を通じて、自分自身がどう生きていくかということを見つめられるというきっかけがあったように思う。
だからこそ、それが態度や行動に出て、無事に再就職が決まったんだと率直に思った。(『スクラップ・アンド・ビルド』のレビュー 羽田圭介 (prelude2777さん) – ブクログ

もう一つの「芥川賞」作品

今年の芥川賞は何かと盛り上がりました!
第153回 芥川賞・直木賞|第153回 芥川賞・直木賞|ローチケHMV
作品のリンク集です!

一つはすでに読みおわっていました。
【読書】「火花」 又吉 直樹 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所

この本を読みおわった時点で、もう一つの作品が気にはなっていたので、早い段階で「積ん読」状態にはなっていたのですが、もうすく年の瀬ということで、読んでおこうと、手にしました。

主人公は、20代後半の青年で、前職を辞めてから約1年間の話です。実家暮らしは当然ですが、そこでは、要介護が必要な祖父がいます。毎朝、祖父のわがままが炸裂する中、母は怒鳴り散らして「自分でしろっ!」など、数々の暴言を吐きまくるのです。

祖父は「こんなんなら、早く死にたい」と毎日のように愚痴を言うのですが、これを聞いた主人公は、祖父の切なる願いを叶えてあげようと「必要以上に介護をすることで、人間の必要な能力を奪うことにより、弱らせていけば、苦しまずに死なすことができるのではないか?」という、なかばトンデモない結論を出して、それを忠実にこなしていこうとします。ただの「優しさ」とは違うということです。

これだから、目先の優しさを与えてやればいいとだけ考える人間は困る。被介護者の自立をうながす立場に立つなら姉も叔父も気安く手をさしのべるべきではない。苦痛なき死という欲求にそうべく手をさしのべる健斗の過剰な介護は、姉たちによるなにも考えていない優しさと形としては変わらないが、行動理念が全然違う(本書p81)

こうあるように、ものすごい考え方に傾いていきます。

同時に、自分がもし年老いたらこうなってしまうのかと、祖父の介護を通して考えることになり、結果としていい方向に考えることができるようになります。

三〇にもなっていない己の衰えを情けなく思ういっぽう、健斗の気持ちは自分の恵まれた点を再発見できた喜びで明るい。そもそも自立歩行てきてるじゃないか、俺は。祖父がなによりも嫌がる階段の上り下りを、こうしていとも簡単にできてしまっている。中途採用面接に落ちたぐらいでめげるな俺。(本書p40)

そうやって自分も祖父に「自分の成長を助けてもらいながら」生活をしていきます。

初めての作家さん

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最近、よくテレビに出でいるとのことですが、あまりバラエティを見ることがないので出演頻度はよくわからないのですが、たまたま見た番組に出演していたのを拝見した時、結構おもしろい感覚の持ち主だとは感じていました。

この本を読もうと思ったのも、それきっかけだったかもしれません。

結構ページ数が少なく、また字も若干大きめのフォントを使っているせいか、読みやすい印象を受けました。筋トレをするところの比喩が面白かったですね。

こういった文学作品というのは、しっかりとしたストーリーという感じがなく、すーっと時間が過ぎていく中での主人公や周りの登場人物の心情などが変わっていくといったところを読み解こうとうするものが多いので、私はそういった能力がまだまだ低いなぁと実感しています。

徐々にこういった作品も、もう少し積極的に読み解いていこうと思います。

本日はここまでです。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。