読み終わり直後のレビュー
なかなか認められない演劇作家が、東京の街を打ち拉がれながら歩いていた時に、突然女の子に声をかけるという暴挙に出るが、そこから付き合いが始まっていく。
主人公の永田は、なかなか認められないながらも劇団を主宰していて、その脚本を書いてはいるのだがが、劇団員との衝突ばかり繰り返していた。
そんな中で出会った沙希。彼女は唯一自分のことをわかってくれているような存在だった。
だが、永田は「演劇に純粋すぎて」屈折しているので、なかなかソリが合わないようになっていく。
が、最後には、ほっこり泣ける作品だった。
筆者独特の言い回しや、台詞の畳み掛けみたいなのは、やっぱり健在というか、ちょっとした言葉のセンスが好きである。
次回作も楽しみだ。
前作は本当に話題になりましたね。
私が読んでいた頃は、まさかこんなに大きな社会現象になるとは思ってもいませんでした。
そんな「火花」から約2年の歳月を経て、書き下ろされた作品です。
ストーリーについては、読後のレビューを見て頂ければいいのかなと思います。
「演劇という世界」の厳しさ
私は、大人になってから「演劇」というものを見たことがありません。うっすら覚えてるのが、小学生の時に行った「宝塚歌劇」です。
あと、以前勤めていた会社(名古屋にある)の社員旅行で「吉本新喜劇」を生で見た経験があります。
こう行った現代劇というのは、なかなか目に触れることが出来ない中で、この話を理解することができるかなぁと思いました。
でも、劇を続けるっていくときの過程とか、そのときに感じる演者と脚本家との意識のズレや、それを埋めていくときにお互いが感じ取る「誤解や苦悩」など、一つのものを作り続けていくということの難しさを感じました。
「自分に素直に」なること
そんな主人公の「自分に納得いく作品を作り続けている」という苦悩の中で、それを解放するために、沙希と付きあっていて、沙希の前でひつこく「ふざけ続ける」ことで、自分自身の感情をコントロールしていたんですね。
そんな沙希は、本当は「東京から出たい。田舎に帰りたい」と思っていた中で、突然の出会いから付き合いだした永田の存在は、少なくとも、異質でありながらも「心の拠り所」になっていたんだと思います。
でも、周りから見たら「おかしな関係」に映ってたわけです。それをとやかく言われたお陰で、二人の気持ちにすれ違いが出てきます。
環境が変わると、人も変わっていく。周りの影響を受けて、自分の「素直な気持ち」にブレが生じていく。
主人公がその事に気付いた時は、すでに遅かったのですが、それでも「素直い会いたいって言えばよかった」と思いのたけをぶつけて告白するところは、なんか「屈折した純真さ」みたいなのが出ていました。
少し切ないながらも、ほっこり笑える。
前作とは全く違いながらも、筆者の「恋愛感」みたいなのが感じ取れる、いい作品だと思いました。
また、何か賞が取れるんでしょうか。楽しみです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。