読み終わり直後のレビュー(ブクログから)
「あきら」という二人の主人公が自分たちの運命に向かい合いながら、それでも力強く生きていく物語。
やっぱり池井戸作品は、仕事や人生に対する考え方と勇気をもらえるなぁと。
今回も舞台は銀行なのだが「銀行は、何に対して金を貸すのか」ということに、真正面から受け止め考えていく必要があること、そして「ビジネスは、どんなことを思ってやり遂げていくのか」「自分らしい生き方とは何か」「自分の望まない運命が立ちふさがったとしても、それに対してできることはないのか」など、今作も筆者からのメッセージに心が揺さぶられる。
今回は単行本としては最新であるが、書かれたのは「下町ロケット」よりも前であるとのこと。
今作はドラマ化にもなっているということで、ぜひ見てみたい。
運命に翻弄される二人の「あきら」
今作は二人の「あきら」が運命に抗いながらも、前を向いて生きていくという物語です。
山崎瑛は、幼い時に父親が会社を潰してしまい、夜逃げを余儀なくされます。小さい妹を手に、買っていた仔犬を置き去りにして、親戚の家まで行くのですが、なぜ父親がそんな目に合わなければならなかったのか、なぜ自分たち家族が生まれ育った家や工場を手放すことになってしまったのか、それがずっと頭の中に残って生きていくことになります。
一方、階堂彬は東海郵船グループの御曹司で、祖父はかなりの権力者で豪腕経営者。父親も優秀な経営者で、何不自由なく育ってきていますが、そんな中で育ってきているので、大人たちの会合に出なくてはいけなかったり、また父親からは「お前は跡取りだ」みたいに決めつけられたりして「会社なんかなかったら、もっと自分の人生を謳歌できるのに」と感じながら育ってきています。
お互いの高校時代に、ニアミスをしますが(正確にいうと幼少期でもニアミスしていますが)互いに大学を出てから、運命の出会いが待っています。
二人は「産業中央銀行」に同期入社するのです。その時の新人研修で「融資戦略プログラム」というロールプレイングで対決するのですが、それが後に、この銀行では語り草になります。
そんな二人は何故銀行マンになったのか。その後の二人には何が待ち構えているのか。それは、今作品を読んで欲しいと思います。
グッとくる最終章
池井戸作品は、ほぼ読んでいます。
しかも、ドラマ化されるということで、やっぱりファンとしては手に取りました。
連続ドラマW アキラとあきら
ベストセラー作家・池井戸潤の最新作を最速ドラマ化。向井理×斎藤工のW主演!天才2人の”宿命”を描くヒューマンドラマ
実際は700ページにも及ぶ作品でしたが、結構スイスイと読めるところは、池井戸作品ならではって感じです。
最終章「最終稟議」では、山崎瑛が渾身の稟議を、保守的な上司に対して展開するのですが、そのシーンでは「何故自分が銀行マンになったのか」「自分たちができることの最大の努力とは何か」など、力強い言葉が出てきます。幼少期に自分が体験したことが、ここで生かされているんだという実感。
「過去の体験は、決して無駄にならない」
自分も40数生きてきていますが、嫌なことや思い通りにならなかったことも、無駄じゃないと思って生きているとは感じています。
こんなしおりも入っていました。ドラマは見たいですね。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。