今回の研修については、ある事例を使って「いかに書証での裏付けが取れないものを、様々な間接事実から結びつけていくのか」を学んでいく研修会となっています。
しかも途中でワークを取り入れながら、また双方向で先生の質問に対して答えていくというものになっているので、アウトプットもしっかり出来るようになっています。
<第1講>依頼者からの聞き取りポイント
- 書証がない場合の立証していくのにはどうしたらいいのか
- 聞き取った事実をどう評価するのか→裏付のない証拠を間接事実から結びつけていくのか。
- 信頼関係を依頼者と築くことが重要→いろんな行き違いが紛争の種になる。
- 初対面で自分のことを正直に話す人はいない→いかに話してもらえるか
- 裁判官に事実があったことを訴訟上表現することが重要
- 準備書面と陳述書は似て非なるもの
- 書面の書き方よりも事実の評価、立証が大事
- 全体を把握してから、細かいところに目を向けていく→信頼関係を醸成していくこと→自分の不利な事柄も話していくようになる
- 依頼者の発言に懐疑的にもなる→どこまで乗っかって話を聞いていったらいいのか→どうやって頭の中で整理するか(鵜呑みは論外、糾問するような態度もダメ)
- 真実かどうかを確認する方法→神のみぞ知る→周辺的な事実から「第三者からの目で見て」真実かどうかをみる
- 糾問型の質問をしても、心は開かない
- 事実を聞いていくときには「まずは依頼者目線で」大まかに聞いていく→両当事者と距離を置いて、俯瞰的に事実を認定していく→裁判官と訴訟代理人では「事実を認定していく過程が違う」のでズレがでる
- 依頼者からの発言の裏付があるのか
- ラポール(信頼関係)→「心が通い合っている」「どんなことでも打ち明けられる」「言ったことが十分に理解される」と感じられる関係を形成していく→「傾聴」
- 「傾聴」→迎合ではない。共感である→寄り添っていくことで、真実を開示させ、妥協点を探らせることもできる。
- 承認欲求を持って依頼者は来る→「専門家」の発言は大きく影響する
- 医者が患者に言うことと、法律家が依頼者に対して言うことは違う(依頼者が、こちらのことを理解されないことが多い)→そこをどう乗り切るのかが大事
- 客観的な根拠(裏付になる資料)を持って来てもらうこと
- 1回目の相談を有意義にするために、事前に何を調査するのか→ネットで当事者の情報、パンフレット、広告などを使って調べる→送られてきた資料の中で「法律的なこと」調べることが多い
- 誰が主体なのか(個人なのか法人なのか)を考えておかないといけない
- 時系列を書いたメモを作ってもらうように依頼してみる→メールやラインのやり取りの記録も出してもらう
- ちゃんとした契約書を作成しないと法的効力がないと思っている人もいる→手紙でも意思表示を示しているものがあれば、有効ななることもあるので、そのことを伝える
- 本人が大事だと思っていないものでも、思いがけない事実が認定できるものもある→「ありとあらゆるものを持ってきてもらう」
- 見ず知らずの人にいきなりお金を貸すと言うことはあまり考えられない(裁判判例)→そんなお金の貸し借りが出来るような関係が築けたかどうかがわかるようなものがあれば良い
- 「様々な社会的な背景があるから、こういう法律構成になるんだ」ということを踏まえて事実をみていく必要がある
<第2講>要件事実の確認と訴訟作成の要諦(内容面を中心に)
- 要件事実そのものの確認というよりか「依頼者から聞き取ってものをどのように載せていくか」ということに重点を置く
- <時系列>→時系列は基本的には作ったほうが望ましい(難解な場合の場合は特に)→Excelで作成することがいい
- 人間関係図は必ず作るようにしている→ここは重要である
- 主請求(なにを求めているのか)→依頼者から聞いた言葉からすぐに訴訟物を特定して良いのか?
- 依頼者にとっては「いくら戻ってくれば良い」ということが重要→本来の事実(今回の事例は2回に分けて金銭の交付がある)を聞き出す必要性がある→時間がたつほど、別の事実が出てきて初めの聞いていた事実とはずれていくことがよくある。
- 訴訟提起に至るまで→依頼者からしか事情を聞いていない状況なので、いきなり訴訟をおこすと「相手方から聞いたことのない事実」出てくることがあるので、いきなりやらない方がよい→資料がそろっていないことが多いので「探り」を入れるしかない→訴訟外での相手方への交渉をしていく方がベター→依頼者の気持ちに寄り添う事も必要だが…→内容証明郵便・面接・交渉から!
- 訴えの種類によって書きぶりが変わる
- 間接事実もできるだけ書く→訴訟代理人として相手方の出方が分からない段階でどこまで書くのか(書きすぎると相手に塩をおくることになる)→相手方が分からない場合は、あまり書きすぎない方か良い→後で覆させないような間接事実は記載した方がいい(準備書面が出るたびに「出した方の事実が正しいのかを認定する」ようになる事がある)
- 返済期日を変更するだけの場合は「準消費貸借」と見る必要はなく「弁済猶予の合意」と見るべき→金利を変更したり、別々の契約を一つにまとめるような場合なら「準消費貸借契約」とする方がよい
<第3講>答弁書の作成の要諦
- 被告側として相談する立場としてどうするのか→書き方だけではない。
- まず把握するのは「次回期日」と「答弁書提出期限の把握」
- 「基本書証」→原被告の法律関係や紛争の本質に関わる証拠のこと(処分証書やこれに準じる証拠があるか)→ついていない場合「何故ついていないのか」を考えなくてはならない
- 被告等からの聴取・調査・資料収集→まずは信頼関係の構築と全体像の把握→「裁判所から来た書類に書かれている事が決定事項になるのか?」と思っている(内容証明が来ただけで、特別な感情がでる)
- 専門家「反論の余地が保証されている」⇔一般のかた「裁判所の決定に従わなくてはならない」<不安の要因となっている>
- 訴状に対する被告の対応→依頼者からの聴取を踏まえてどのように争うか「基本方針」を決定する→初めが間違えると戦えなくなる(ただ状況によっては動くので、臨機応変に対応する)
- 実質的事項→請求の趣旨に対する答弁(請求棄却を求める)請求原因に対する認否・被告の反論 抗弁・積極否認
- どの程度書くのか→できるだけ書いた方がいい(やぶ蛇になって揚げ足を取られてはいけないが)
- 事前交渉の有無・依頼者の連絡時期と期日との接着で、答弁書を書くかどうか判断する
- 30日以内に期日を入れる事が多い→(相手及び相手代理人が何者なのかが分からないので)緊急になることが多いので「全部棄却→認否は追ってする(認否を留保する)」→そうした場合は第1準備書面は「詳細をキチンとして(書証もできるだけつけて)早めに出すことを心がける
- 裁判所に対して誠実に対応することも、裁判官に有利に働くこともあるので、そういう努力をするべきである
- 不自然な状態で裁判が進んでいくと「何が争点になるのか」ということがわかりにくくなる。(今回の事案だと100万の貸金にしてもこの人間関係では高額、しかも贈与だというのもどうか、50万については契約書を交わしていて、100万については契約書自体がない)
- 人間関係に関して詳細を書くようにすることが重要になる。
- 代理人として「立証責任」がないからといって、それで終わりではない→事実の認定をやりやすくするためには「立証責任」の有無にかかわらず、事案に関わっている以上は、知っているべき事は言った方がいいのではないか(不利になることがある)
〈第4講〉訴訟進行上の事実主張のポイント並びに被告の(最終)準備書面及び尋問事項書の要諦
- 双方に代理人がつくと、和解が多くなる→判決になったときに裏付けの強さについて、多少評価がブレる→その感覚と代理人との感覚が同じだったら「判決が予測」出来るため、その中間点も予測できるから。(とんでもない判決を書かれるよりはマシ)→依頼者も納得させることができるのなら尚更である。
- 相手から出てきている証拠も評価して「自分たちが、どのような状況に置かれているのか」「和解点はないのか」ということを依頼者とともに探るのが大切
- 1人の人間がやってる事として一般常識として、どう行動するのかを考える(自分がその立場だったらどうするのか)→それと実際起きている事実から「不自然さ」を指摘し、そのギャップから「自分に有利な」間接事実を導き出す。
- 揺るがない事実→当事者に争いがない事実→まずはそこから探し、矛盾せずに同じことを書いていくことが大事
- それから「互いの推認させる事実」を想定してみる
- 双方の主張で揺るがない事実と整合しやすい事実は何かを考える
- 尋問事項→揺るがない事実と争いがある事実とをつなげるためのもの
- 陳述書をなぞるような質問はしない
- 反対尋問がうまくいかないのは「自分が聞きたいこと」聞くから→本人からきちんときく
- 民事は「相手の矛盾点をつく」ことができれば良い→あり得るストーリーは何かを導き出しすこと→行動を裏側から見るイメージ
- 出てきた証拠を評価して上で、最終の言い分を全てまとめた準備書面が「最終準備書面」→自らの立場に有利な証拠援用、相手方の有利な証拠への反駁。
- 貸した方が「借金」だったとしても、借りた側から「借りた認識がなければ」返還の合意はないと言える
- 揺るがない事実について、誤魔化すような答えの場合、証人そのものの信憑性がなくなる
1日目まとめ
今回取り扱った事例は、実際にあった事件を元に作成されたもので、こういう「当事者同士が本当の事だと思い込んでいる」ことを、「社会通念的に不自然な事案だ」と認識して、それを「こちらの有利な間接事実をつないでいくかがカギとなる」というものでした。
私たちはどうしても依頼者の言うことを信用しすぎて、肩入れし過ぎるために、本来の事実を見逃す事があると思います。それを「客観的に物事を見る必要がある」と言うことを考えていかなくてはならないのだと思います。
明日は、このことを踏まえて、どのように尋問事項を決めていくのかということを学びます。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。