本日は、本の紹介です。
無戸籍の日本人 | ||||
|
ブクログレビュー
読書日数 15日
「無戸籍の子供」を自ら持つことになってしまった筆者が、その人たちとの関わりや相談を受けることによって、法律との壁との戦いを書き綴ったノンフィクション。「クローズアップ現代」にも取り上げられた「民法772条」の問題がテーマとなっている。
事例がいくつか取り上げられているのだが、とにかく内容が壮絶である。
「当たり前にあるもの」が無いという事実を突きつけられて、それを救う手立てになるはずである法律が、彼らを全く救うことのできていない現状が、自分の周りで起こっている。
筆者自身が「無戸籍の子供」を持つことになったことで、その辛さを知るからこそ、その人たちに寄り添い、一緒に戦うことができるんだとも思う。
自分には全く実感が湧かない。想像ができるんだといっても、どこまで理解してあげられるのかは自身が無い。
でも、自分も法律に身を置くものとして、こういった問題とも向き合っていけるような素養を身につけておきたいと思った。(『無戸籍の日本人』のレビュー 井戸まさえ (prelude2777さん) – ブクログ)
当たり前にあるものが無いということ
こういったノンフィクション物はなかなか手が出せないというか、初めてといっていいと思います。
本書は、とある司法書士の先生から「司法書士は読んでおいたほうがいい」と強く推薦をされた本です。
初め著者の名前を見たときに「どっかで見たことあるなぁ」と思っていたら、自分の選挙区で議員をされていた方でした。
井戸まさえ日誌
著者のブログです
この本を読むまで、日本には「戸籍が無い人が1万人以上いる」という事実を、恥ずかしながら知りませんでした。
戸籍が無い(いわゆる「無戸籍」)というのは、いかに人を過ごしにくくしているんだということがわかります。
住民票が取れない。健康保険に加入できない。学校にも行けない…
これが、そうはいかないのです。目の前に大きく立ちはたがる、条文がこちらです。
民法第772条(嫡出の推定)
- 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
- 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
でも、ここで筆者は立ち上がります。こういった「法律の隙間に陥ってしまった」人たちを救うために、様々なことに取り組んでいきます。国会議員になってからは、法改正に携わる立場になって、官僚や現職の法務大臣の所にも足を運び、色々とやるのですが、その時の「保守派」といわれる勢力にやられてしまうといった内容も、しっかりと書かれています。
離婚後300日問題-民法772条による無戸籍児家族の会
ここでの活動がクローズアップしています!
クローズアップ現代でも取り上げられて、最近ではようやくこの事に関心を持ち始めてきてようではありますが、それでも完全には解決する見通しは立っていないようです。
でも、一人でも「自分の存在を取り戻すために」必死に戦い続ける筆者たちの熱いモノを感じることできるノンフィクションだったと感じています。
現代の法律の限界
この本を読むまでは「戸籍」なんかは当然に今の「家族」という考えの象徴であるから、このままでいいと考えていました。
でも、それが「一方的な見方しかしていない」ということを思い知りました。知らない間に「差別」をしてしまっていたんですね。
結婚や出産も、本当に多様化しているにもかかわらず、そこに踏み込もうとしない「民法」や「戸籍法」の存在があり、また、それについて何も考えようとしない私たちも存在しています。著書でも
一日だけの違いで父が決まったり、否定されたり。子供の立場からすれば過酷としか言いようがない。
このようにDNA鑑定の扱い方一つにも対応できず、限界にきている民法772条の「嫡出推定」。この改正なくして、「無戸籍問題全面解決」への道はない。(無戸籍の日本人P222)
と言っています。
こういったことに対して「おかしい」と声を上げることも必要だし、また、声を出しつづけることの大切さもわかったように思います。
ここで、一つのブログを紹介してみます。以前からブログを読んでいて知っていたのですが、こういったカテゴリーのエントリーを書いていることを最近になって知りました。
ジェンダー | ヨッセンス
本当に凄く為になる情報が沢山あります!
もしかしたら、こういった視点を持った人が一人でも多くなっていくことが「無戸籍の子供」がいなくなる一つの近道なのかもしれないとも思いました。
それにしても内容がすごすぎて、読み終わった直後は、ちょっと放心状態だったかもでしたが、なんとか自分なりにまとめることができたように思います。
本書の最後には、この問題に取り組んでいる専門家が紹介されています。心強い専門家チームだと思います。
というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。
無戸籍の日本人 | ||||
|