【読書】「私の消滅」中村 文則 著

本日は、読み終わった本の紹介です。

私の消滅

中村 文則 文藝春秋 2016-06-18
売り上げランキング : 1567

by ヨメレバ

ブクログレビュー

著者 : 中村文則
文藝春秋
発売日 : 2016-06-18
読書日数 8日

筆者の小説は、本当に不思議な始まり方をする。ある部屋に通された主人公(ということでいいのか)は、鍵のかかったスーツケースと、テーブルに置かれている手記を見つける。その手記には、とある精神科医の半生が描かれていた。

自分の母親が何人もの男から暴力を受けていたにも関わらず、それを受け入れていた。その加減で連れ子として再婚した家族とうまくいかず、義妹を崖から突き落としたことなど…

どういう展開になるのか予測ができなかった。最後に、とんでもない結末が待っていた。

本書では、題材として「宮崎勤事件」が使われている。巻末には「分析はオリジナルである」と書かれていたが、本当にそうだったのではないかと思えるぐらい、ものすごい理論展開がされていた。

普段から読み続けるのは相当しんどいが、たまに違うエッセンスが欲しい時に、筆者の小説は、物凄い刺激を与えてくれると、改めて感じた。

今回のテーマは「洗脳」

こんな「ほんわか」してません!!
こんな「ほんわか」してません!!

前回、こちらの本を読みました。

【読書】「教団X」中村 文則 著 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
コレもすごい作品でした

この時も、筆者の考え方に圧倒されっぱなしだったのですが、本書も物凄いテーマでした。

唐突に「ある部屋の中」から物語が始まります。主人公(と言っていいのかは、今となっては分かりませんが)は、その部屋の中でスーツケースと手記を見つけます。

その手記には、「小塚」という精神科医の半生が描かれているのですが、それがまた、とんでもない内容になっています。

手記の前半には、幼少時に、母親の連れ子として、別の家族と暮らすことになったが、その義妹に手を出して、崖から突き落としたとか、母親が何人もの男から暴力を受けていたのだけれど、それが快感に感じている姿を見て、自分にも「母親を犯したい」と言う感情が出てくるようになったとか、とにかく、壮絶かつ狂乱の幼少時を過ごして来たことが書かれています。

手記の後半では、「小塚」が、ある1人の患者の治療を受け入れたことが書かれています。その女性は、別の精神科医から「記憶を操作され」たために、主従の関係になってしまっていたのです。その恐怖概念から逃れらなくなっていました。

で、それを治すために「小塚」のところに来るようになります。いろんな治療(内容は、とても専門的で、難解です)を施していきます。そのうちその女性に恋をしてしまうのですが、生活はうまくいかなかったようです。そして、治療を続けていった結果、彼女の全ての記憶を奪ってしまっていました。彼女はその場から姿を消しました〜

と、その「部屋の中にいる」主人公は、それ読んでいくうちに、段々自分を責めるようになり、気が狂っていきます。

最後のオチで、この「不思議なやりとり」の真意が分かるのですが、とにかく驚きの展開で、相変わらず物凄い世界観に圧倒されまくりました。この不思議なやりとりは、実は「自分の愛した女性を死に追いやった奴らに、復讐していた」ということなのですが、その手口が、ぶっ飛んでいたわけです。

今回のテーマは「洗脳」

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本書を通して出てきたのが、タイトルからもなんとなく読み取れると思いますが、

『相手の記憶を操作して、そこに自分の記憶を植え付けることが出来るのか』

ということでした。この方法をとれば、人の記憶を操作して、苦しみを与えることも出来、又、自分自身の記憶すらも操作しよう試みています。前作同様、相変わらず「むちゃくちゃ」でしたね。

本書は前作に比べると、短い方だったので、初めはわかりにくかったことに変わりありませんでしたが、後半の締めに向かっていくにつれ、段々と「フリの部分」がつながっていく感じが理解できたので、結構「おおーっ」ていう感覚を持つことが出来ました。

また、本書では実は「宮崎勤」の事件が題材として使われているのですが、その分析がとてもリアルに感じました。「あとがき」には「自分のオリジナルの解釈だ」と書いていたのですが、それにしても、すごい解釈だと感じました。
宮崎勤の家族、事件後の悲惨な末路… – NAVER まとめ

普段、こういったことを考えることがない中で、たまに「怖いもの見たさ」で読んでみるのもいいなと、ちょっと思います。ただ、コレばっかりになってしまうと、なんだか、自分らしさがなくなりそうで恐ろしいですが!

夏の暑いときに、こういう「ホラー系」を読んでみるのもおすすめです。あと、世の中で起こっている色々な事柄を「いろんな角度で考えたい」時に、気付け薬的におすすめ出来るかもしれません!

本日はここまでです。ありがとうございました。

私の消滅

中村 文則 文藝春秋 2016-06-18
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by ヨメレバ

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。