「AX」(伊坂 幸太郎 著)は、家族への向き合い方を考えるキッカケをくれると思う【ネタバレあり】

読後直後のレビュー(ブクログレビュー)

AX 伊坂幸太郎

読書日数 22日

謎の組織に属する暗殺者が、とんでもなく恐妻家で普段の生活にビクビクしながらも「幸せに生きてこられなかった人生を取り戻すために」家族を守り抜く物語。

主人公は、生まれながらにして悪の道を歩み続けてきたせいか、何かしらの感情が抜け落ちている感じがしている。それが、ある街角で出会ったチラシをもらった女性に声をかけられた一言で、恋に落ち(と言っていいかわからないが)結婚することになった。

だが、そこからは、常に妻の一挙手一投足に気を遣い過ぎ、ほとんどが「イエスマン」となる状態になっていた。高校生の息子までが呆れかえる始末。

だか、思いがけない縁で繋がった、はじめての友人を失ったあたりから、自分はこの仕事から抜けたいと思うようになる。そして、それを実行に移すことにするのだから、不慮の死を遂げる。

それから10年後、息子がその謎に迫るのだが…

急に主人が死ぬという、ものすごい展開だが、最後のオチもものすごくよく、「馴れ初め」をエピローグに持ってくるというのが、なんとも憎らしかったし、少しホンワカした。

主人公が暗殺者だったのに、感情のあり方がとても、理屈っぽくて偏狭で、それがなんとも可笑しかった。

主人公は暗殺者だったが、ノートに「奥さんの攻略法」みたいなことを書き溜めるほどに、必死で奥さんに気を遣っていたのは「家族の平穏を守り抜く」という、幸せを噛み締めていたんだと思う。

どんな人間でも幸せになる権利はあるんだと。

恐妻家はいろいろ考える

この主人公「兜」は、文房具の営業マンですが、裏稼業では組織の暗殺者でかなりの強者です。

ただ「かなりの恐妻家」なんです。

とにかく妻の一挙手一投足にビビりまくっていて、どれだけ妻の機嫌を損ねないようにするのかに必死です。高校生の息子が「お父さんが不憫だ」と思うほどです。

また、「兜」は、物心ついた時から悪事を働いてきたせいもあるのか、ところどころ感情が抜け落ちているところがあります。

なので考え方が偏りすぎていて、それがまた、コミカルにも思えてきます。

ですが、そんな悪事ばかり働いていた「兜」も、普通の生活の中の縁で「友達」ができます。ですが、ある出来事で失い、そのことがきっかけで「組織から抜けたい」と強く思うようになります。

足を洗おうとする「兜」に、組織の魔の手が及ぶのですが、最後は文具店の営業で知り合った、百貨店の警備員「奈野村」に狙われます。そして、自ら命を捨てることになります。

でも、それは「自分なりの家族の平穏な幸せを守り抜く」という、強い意志の表れだったのです。

「兜」の死から10年後、息子は結婚して、普通の生活をしていたのですが、どうしても、父親の死の真相が知りたくなります。

父親の部屋を整理していると、部屋の鍵が一つ出てきます。その鍵が何だったのか。その謎を追っていくことになります。

父親は誰しもが「家族の幸せ」を願っている

「兜」は、暗殺者稼業をしてきていて「自分は幸せになる権利なんか当然にない」と思い込んでいたと思いますが、それでもヒョンなキッカケで出会った女性と結婚して、1人息子を授かり、家族の平穏な幸せを守り抜いてきたわけです。

たしかにビビりすぎるぐらいの「恐妻家」ではありました。それは自分が生きてきた中で、嫌だったかもしれません。ですが、そんな「恐妻家な自分」に、幸せを感じていたんではないでしょうか。

「兜」の考え方や感じ方に、かなり共感できましたね。(私も恐妻家なところがあるせいもありますが)

ただ、この物語は「誰にでも幸せになる権利がある」ということを言いたかったんだと思います。

「生きとし生けるものは、みんなが幸せになるべきだ」と強く思うのです。そのために

「自分が家族のためにできる精一杯のことを、どれだけやれるのか」

改めて、思う必要があるのではないでしょうか。

この作品は「グラスホッパー」に続く殺し屋のシリーズだということ。

前から気にはなっていたので、読んでみようと思います。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。