本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第12回です。
登記業務は簡単には断れない
私たち司法書士は、登記業務については簡単に断れないということについては何度か書かせていただいております。
なぜなら
司法書士会に入会している司法書士でない者は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、これを行ってはならないものとされていること(司法書士法19条1項)及び上記業務の性質、内容等にかんがみ、司法書士は、正当な事由がある場合でなければ上記業務に係る嘱託を拒むことができないものとされており(同法8条)嘱託を拒んだ場合において、嘱託人の請求があるときは、その理由書を交付しなければならないとされている(平成15年法務省令第27号による改正前の司法書士法施行規則23条)
(司法書士の専門家責任p137~8)
からです。
司法書士はどのような場合に依頼を断ることができるのかについては、前回のレビューにも書きました。
【司法書士業務】司法書士の専門家責任⑪〜依頼に応じる義務<その1>〜 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
今回事例として取りあげたのは、平成16年の最高裁(H16.6.8)にて「司法書士に職務過誤あり(司法書士の仕事のやり方に間違いがあった)』と判断されたものです。詳細については本書にありますが
「ある土地の売買に伴う登記手続を売主及び買主から依頼を受けた司法書士が、取引の当日になって、急に『現売主の前の持主が本当に所有者だったか疑わしい点があり、そのため今回の登記が正しいものとして出来ない』と判断した。そのことが原因となって売買契約そのものが解除になってしまった。そのために損害を被った売主が裁判を起こしたところ、司法書士の落ち度を認めた」といった内容です。
断るにしても…
確かに司法書士の職務として
関係資料から事実関係を押さえて、実体的な権利関係がどのようになっていて、嘱託された所有権移転が実体的に問題ない形で実現するかを検討することになる。司法書士が、そのような検討の結果、問題なく権利移転ができそうであるという認識が形成できればよいが、そうした認識ができないときには、どのように対応していくことが望ましいといえるか(司法書士の専門家責任p140)
を考える必要があります。
この判決では「司法書士が拒むことの正当な事由の有無の判断を通じて、司法書士の職務のあり方を考えさせられるものになっている(司法書士の専門家責任p140)」のです。
この判決の教訓を考える
では、司法書士として、こういった「職務の重大なミスを犯さない」ようにするには、どうしたらいいのでしょうか?本書では以下のようになっています。
- ミス・ジャッジをすることのないよう法令実務に精通すべく、日ごろからの研さんが大切
- 執務の上で案件が問題だと感じた場合には、さらに調査する姿勢が求められる
- 登記申請代理事務の依頼を拒否するにしても、その時期と依頼者に対する伝え方に配慮する
(司法書士の専門家責任p146より抜粋)
司法書士といっても、所詮は「サービス業」です。いくら正しいことを依頼者に言ったとしても、伝え方や伝える時期によってクレームにもなったり、逆に感謝されることもあったりします。それを肝に銘じて日々の業務に取り組まないといけないということですね。
というわけで、本日はここまでです。ありがとうございました。