本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第23回です。
昨年度中に本当は終わらせたかったのですが、少しばかり残りました。頑張って進めたいとおもいます。
何でもかんでも「訴えたらいいのではない!」
この「第三者に対する責任」という言い回しがわかりにくいかと思います。
本書においては
認定司法書士が訴訟代理人として民事訴訟を提起し、その訴訟活動を展開していく過程で第三者に対して民事責任を負うことになり得る場面について考察する。(司法書士の専門家責任p317)
と定義しています。
具体的には「不当訴訟」(本書318p)と「職務過誤としての違法な弁論活動」(本書326p)が取り上げられています。
「不当訴訟」というのは、簡単に言うと、訴える側の自分勝手な都合で裁判を起こすといったものです。こんなことをすると、裁判所も困りますし、訴えられた方も、こんな無駄な裁判に自分の時間を取られることになってしまいます。
そういった裁判に専門家である私たちが手を貸すということは「専門的知識・技能を活用して依頼者の利益のみならず関わりを生じた第三者の利益をも害することのないようにすべき注意義務(司法書士の専門家責任p317)」を怠る結果となってしまいます。
なぜなら
訴えを提起された者にとっては、応訴を強いられ、そのために弁護士に訴訟追行を委任してその費用を支払うなど、経済的、精神的負担を余儀なくされるのであるから、応訴者に不当な負担を強いる結果を招くような訴えの提起は、違法とされることのあるのもやむをえない。(司法書士の専門家責任p319)
と考えられるからです。
では「不当訴訟」の基準についてですが、一例として
- 主張自体失当の請求や証拠との関連で勝訴の見込みのない請求
- 証拠を捏造して訴訟追行しようと画策するケースまたはそれに準ずるケース
- 提訴者に害意や不当な目的(嫌がらせの目的、他の懸案事項の交渉の圧力とする目的等)がある場合
(司法書士の専門家責任p321より抜粋)
が挙げられています。
なので、
司法書士は、依頼者に民事紛争解決を委任された場合において、訴えの提起をするときには、提訴の可否・当否を吟味すべき義務がある。(中略)司法書士は、この義務に違反すると、不当訴訟であることを理由に第三者(相手方)から不法行為責任を追及されることがある(司法書士の専門家責任p323)
のです。
言葉遣いにも注意が必要!
裁判は、悪く言うと「喧嘩」でもあります。テレビドラマでの裁判のシーンほどではないにしろ、実際の裁判で、時々お互いがヒートアップしてきて言葉遣いが乱暴になりがちなことがあったりします。ですが私たち司法書士をはじめとする法律家は「言葉を扱う」資格でもありますので、やっぱり気をつけけていないといけないわけなのです。
司法書士が訴訟代理人として弁論活動をするに当たり、名誉毀損的弁論として不法行為責任を問わることを避けるためには、相手方の名誉を毀損する意図に基づく事実主張をしないことである。(中略)依頼者がことさら虚偽の事実を語り、それを鵜呑みにして主張することがあるとすれば、大きなリスクがある。さらに、訴訟代理人が相手方の不誠実な行動や対応に立腹し感情的になってしまうという「代理人の当事者化」に陥ることのないように心すべきであろう。(司法書士の専門家責任p336〜337)
と言えます。
また「要証明題と関連性のない事実を主張すること(本書p337)」ー提起している裁判とは関係のない事柄(例えば関連性の薄い人物の特定できる情報など)や、あまりにかけ離れた事実を裁判上で主張することーは控えるべきだし、「表現内容、表現方法・態様が適切さを欠き、相当性を逸脱するような書面作成を抑制すること(同p337)」ー相手のことを犯罪者呼ばわりすることなどは止めること等ーは、書面作成を専門としている私たち司法書士の職責として求められていると思います。
本日はここまでにしておきます。ありがとうございました。