本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第8回です。
なんやかんやで頼られる存在ではある
司法書士は司法書士法第3条第1項において
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
となっています。つまり登記手続代理業務全般は独占業務となっているわけなのです。法律上そうなっているのだから、皆様も「司法書士は登記手続のエキスパートだ」という思われていると思います。
なので、もし登記に事故があった(思っていたものと違うものが出来てしまった)場合、司法書士に損害賠償の手が伸びる事になります。なぜなら、
- 不動産野価格が高額であること
- 不動産登記手続に誤りがあったという事実それ自体は多くの場合外形上明白であり、証明の困難が存しないこと
- 司法書士は個人の資格で独立の事務所を開設して業務を行っており、不動産会社のように解散する事がないこと
- そのため取引の相手方に対する損害賠償請求に実効性がない場合に、最後の拠り所として、司法書士を被告にする訴えが提起される場合がありうること
- さらに、詐欺的な不動産取引においては、しばしば不動産登記に対する信頼が悪用されるため、いずれかの段階で司法書士に関与させられているケースが多いことを指摘される
(司法書士の専門家責任p84)
特に上記5に関していうと「権利証などの文書が偽造されたものを出されたとしても、そこは専門家なのだから見破ってほしい」という期待がかけられます。なぜなら、もし仮に司法書士のところが突破された場合、登記官も見過ごすようなことがあれば「実体のない登記」が完成してしまい、そのことで登記制度の信用の根幹を揺るがす大変なことを引き起こしてしまうからです。
どこまで求められるのか(最近の裁判例)
最近では「司法書士の登記関係書類の調査義務は、形式的把握から実質的なものとして把握され、義務が広がる方向に進んでいる(司法書士の専門家責任p85)とされています。(これに関しては前回の投稿を参考にしてください。)
つまり
司法書士としては、登記の専門家として登記の実体法的正確性の担保という公益的職責を負うものと考える。したがって、私的自治・契約自由の原則があるからという理由で登記権利者(不動産売買による所有権移転登記を受ける場合の「買主」など)が司法書士に対し調査義務を免除すること自体が許されない。(司法書士の専門家責任p96〜一部加筆〜)
わけです。なので
登記権利者が司法書士に対し調査義務を免除していたとしても、司法書士は専門職として課せられている登記書類調査義務に違反した結果、実体を反映しない登記が作出され、それによって損害を被った第三者からの損害賠償請求に対する面積の効果は生じないと解するべきである。(司法書士の専門家責任p96~一部加筆~)
わけなのです。
「調べなくていいよ」ということを言われても司法書士は調べます。そうでなければ「プロの仕事」とはいえないのです。
それでも万能ではない
それでも司法書士は人間です。完璧にいつも見破れるとは限りません。それに司法書士は「なんとかする人」ではなく「なんとかする人のお手伝いをする人」であるので、基本的に物事を決定するのは、依頼者になられる皆様方です。
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最近ではネットの情報も馬鹿にはならないと思いますので、そういったところで学習をした上で、取引等に臨まれることをオススメします。
本日は個々までにしておきます。有難うございました。