結構時間をかけて読みました。元から「スペードの3」というところから、どんな作品か気になりました。
読了直後のレビュー(ブクログレビュー)
歌劇の世界で、ファンの目線と当事者の目線で描かれた短編作品。少しずつリンクされていて、いろんな立場での女心ご描かれている。
小学校からずっと「いい子に見せる」ように仕切っていたのが、そのままファングループの統括になって、同じように仕切っているが、それを20数年ぶりに、そのグループで出会った同級生に見透かされる。
その同級生は、小学校の時にクラスメイトから、容姿などから色々差別を受けていたのだけれど、中学をきっかけに、演劇部に入って変わる。その時、歌劇団の女優のファンになった。
その女優は、同期のライバルに勝てないまま、悶々としているときにのだが、自分も引退を考え出した時に、昔のことを振り返っていく。
この物語のテーマは「そのまま満足せずに、変われるように努力すればいいんだ」ということと「過去に何があったとしても、それは問題なく、今どうやって人生と向き合うのかが大事だ」ということだと思った。
切り札三種類で構成されている短編集
「スペードの3」には、題目通りの「スペードの3」と、他に「ハートの2」「ダイヤのエース」という2篇の短編が収められています。
大富豪というトランプゲーム、ご存知でしょうか。高校時代、メチャクチャやりましたね。
結構ローカルルールも多いですが、主要なルールとしては
- 手元のカードを早くなくす
- 3が一番弱くて、2が強い。
- 革命になると、3が一番強くなる
というものです。
このはじめの「スペードの3」というお話は、とある歌劇団に所属する女優を応援するファングループを取り仕切る、一人の女性にスポットが当てられています。スペードの3というカードは「一番弱いカードだけど、JOKERに唯一勝てるカード」「革命が起こったら、一番強いカードになる」というもので、その切り札を何時使うのかがポイントになるわけですが、その意味をしって、このストーリーを読むと、なんだか「良いタイミングで変わっていかないといけない」と感じます。
無理に変わらなくったっていい
ですが、最後の「ダイヤのエース」では、その女優にスポットが当てられています。
その女性も悩みながら仕事を続けていたのだけど、最後やめる直前になって気づくことがあるのですが、その言葉が自分と全く同じ心境だったのです。
私自身、なにか大きな出来事(最近では、父親が他界したことぐらい)があったわけではないのです。なので、自分としては、ものすごく薄い人生を歩んでいるのではないか。そんな風に悩んでいた事がありました。
ですが、この女性と同様「そんな人生でも良いじゃないか。それも自分だ」と思えるようになり「過去は過去で、出来事として受け入れて、今やこれからどうやって生きていくかということに焦点を当てていこう」と考えられるようになってから、かなり生き方が楽になったと思います。
前に読んだ「何者」もそうでしたが、日常にあふれる人間の繊細な心情を描くのが、本当にうまいなぁと思います。読んでいて、結構考えさせられるのが、良いと思うわけです。
一冊読むのに、1ヶ月以上かけるのは、自分としては不甲斐ない感じですが、楽しく読めた方だと思います。
最後まで、おつきあい頂き、有り難うございました。
講談社 (2017-04-14)
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