私たち司法書士が「名義変更(いわゆる名変)」という言葉を使う場合、皆様の思っているそれとは違う意味のことになります。
正確には「登記名義人表示変更」の事を意味します。
なぜ必要なのか?
不動産登記には「今までの歴史、経過をキチンと記録する」という大きな使命があります。
つまり、ある不動産が「誰から誰の手にどういう理由で渡っていったのか」が分かるようにしなくてはなりません。
例えば、とあるマンションを売却することを考えてみます。
売主さんが数年前に購入したもので、現在は別に住んでいるような場合だと「登記記録に書いてある住所」と「住民票に書いてある住所」が違いが出てきます。
このままマンション売却の登記を申請すると「ちょっと待った!」が入ります。
登記記録に書いてある「A町の甲さん」と、住民票などに書いてある「B町の甲さん」とは別人だ!と登記所は判断して取り合ってくれません。
では、どうするかというと、売買登記の申請の前に「A町の甲さん」と「B町の甲さん」は同一人物であることを証明して「所有権登記名義人住所変更登記」を入れなくてはなりません。
されど名変
「なんや、それだけかいな!」とお思いでしょうが、中にはそれが困難な場合がございます。
出張などで住所が転々とされている方などは特に要注意です。
つまり、「登記記録の住所から現在の住所まで、どういう風に変わっていったのかを全て繋げて証明しなければならない」ということです。
役所の取り決めの中に「住民票の中の人が全部いなくなったら、5年で抹消する」というのがあるので、住民票だけでは証明しきれない場合も出てきます。
そんな時は「戸籍の附票」というものを取得します。
これは「戸籍の中に入っている方の住所の移り変わりを全て書いてあるもの」です。たくさん住所が変わっているのなら、これだけを取得すればことが足ります。
ただ、本籍を変えている場合は、それより前の戸籍の附票を取らなくてはいけません。ちなみに5年で附票も抹消されてしまうので注意が必要です。
出ない時はどうする?
先程の5年ルールに引っかかった為に証明が出せない場合は役所で「出なかったことの証明書(廃棄証明書)」を必ずもらってきてください。
そうすればその証明書と不動産の権利書のコピーとをつけた「上申書」を作成し、実印(当然に個人の印鑑証明書をつけて)を押印して登記所に出します。そうすれば認めてくれます。
不動産登記に「いつまでにやらなければならない」という決まりはございませんが、長い間放置すると後が困ることが多いのも事実です。
「思い立った時が申請の時」というのを頭の片隅に置いていただければと思います。
本日はここまで。ありがとうございました。