本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第3回です。
相談業務をこまかくすると
司法書士の業務は「①事情徴収②事実の吟味・事実調査③資料収集④法的検討⑤具体的措置の選択⑥インフォームド・コンセント(正しい情報を得た上で依頼者との合意に至ること)⑦職務遂行⑧依頼者に対する報告・連絡」(司法書士の専門家責任15p〜一部加筆〜)というふうに分かれていて、①〜⑥に当たる部分を「相談業務」ということになります。
また、司法書士の業務については下記の通りとなっています。(司法書士法第3条第1項第1〜4号)
- 登記供託に関する手続の代理
- 法務局に提出する書類の作成
- 登記・供託に関する審査請求の手続の代理
- 裁判所・検察庁に提出する書類の作成
よって上記の業務につき相談業務ができます。(司法書士法第3条第1項第5号)よって仮に司法書士がこれらの事について相談に応じた場合には、例えその件について依頼にまでいかなかっても、相談料を請求する事ができると解されて(司法書士の専門家責任p16)います。
また、平成14年に司法書士法が改正された事により司法書士に簡裁訴訟代理権が与えられました。その事で「簡裁訴訟代理関係業務」の一環として民事に関する紛争の相談に応じる事が司法書士法の業務として追加されました(司法書士法第3条第1項第7号)
そこで「書類を作成に関連する相談」と「簡裁訴訟代理等業務に関する相談」との線引きについて司法書士は考えながら皆様との相談業務に応じているのです。
登記等の「書類作成に関する」相談
登記等の相談については、依頼者はある程度目的が決まっています(「相続登記をしてほしい」とか「役員変更に関する相談」など)。
よって
司法書士の行う相談も、通常は、依頼者の依頼の趣旨にそって適切な書類を作成する必要な範囲のものであり、依頼内容を法律的に整序するためのものであると考えられている。(司法書士の専門家責任p17)
つまりは「依頼者のやりたい事を法律的に整理してあげる」という事になります。そのためにはある程度の「法的判断」が求められるとは思いますが、
司法書士が行うべき法的判断作用は、依頼者の依頼の趣旨ない方を正確に表現し、訴訟の運営に支障をきたさない限度、すなわち法律常識的な知識に基づく整序的な事項に限られるという立場にある。(司法書士の専門家責任p18)
というもので、いわば「依頼内容に関して、法的なメニューを提示していき、最終の判断については依頼者にしてもらう」というスタンスで相談を受けている事になります。
ですが、いくらメニューの提示でいいと入っても限度があります。他人の法律的紛争に立ち入るということまではしませんが、「ダメなものはダメだ」という事ははっきりと言います。
民事の紛争に関する相談
民事に関する相談は簡裁訴訟代理権(いわゆる「簡易裁判所」において140万円までの裁判について代理をする事ができる権利)につき法務省から認定を受けた司法書士(いわゆる「認定司法書士」)でなければできません。この認定司法書士が受ける民事に関する相談は、もっとより「法的判断」が求められる相談となります。但し相談できる範囲については「訴額140万円」までとなっています。
では、それを超える相談だと判断された場合には、司法書士はどうするのかと言うと
その時点で依頼にその旨を説明して、7号相談(民事の紛争に関する相談)を打ち切る必要になる。そのような場合には、一般的に5号相談(書類作成の相談)に切り替える事はできない。(司法書士の専門家責任p23)
と本書では述べられています。「いまから書類作成の相談に切り替えます」というふうにできる場合はごく限られていて、大抵は「弁護士先生のところにいかれた方がいい」というふうにして相談を打ち切るしかなく、その方が依頼者のためでもあると私は考えます。
オールマイティーに法律相談ができるというわけではない
司法書士は、そんなに何でも相談に乗れるというわけではありません。私たちが依頼者に「法律的にできないものはできない」というのと同じで、私たちにも「法律的にできないことがある」のです。その事をご了承いただきたく思います。
本日はここまでとしておきます。次回も不定期ですが、やりたいと思います。有難うございました。