本日は、ルームシェアについてお勉強をしてみます。
【司法書士業務】ルームシェアトラブルの勉強② ルームシェアのメリット・デメリットを考察 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
前回のエントリーです。
転貸借ってなに?
ルームシェアの問題を考える上で、はずせない論点と言えば「転貸借」です。
皆様には「転貸借」という言葉は、あまり馴染みがない言葉だと思いますが、私たち法律専門家には「毎度おなじみ」です。というのも、研修材料や試験問題になりやすい事例が多いからです。つまり「揉め事に発展する要素が、めちゃくちゃある」ということになります。
大雑把にいうと「又貸し」です。これだと馴染みが出てきたのではないでしょうか。
短かな話題で考えると
これが転貸借です。
不動産でいうと、A所有の建物(マンション)をBがまず借ります。そのマンションをBがCに貸した場合、BC間の関係は「転貸関係」になります。
民法上では「転貸借」をすることが法律違反だということではありません。ただし、
- 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
- 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる
(民法第612条)
という決まりがあります。
先程の事例に当てはめると、BがCにマンションを貸す場合は、Aの承諾がなければならず、もしそれに違反した場合はAはBとの「賃貸借契約」(この場合を「原契約」という言い方をすることがあります)を解除することができるということになります。
基本的に「賃貸」というのは「自分の物(所有物)」を他人に貸すので、賃貸人との信頼関係がとても重要になります。
「アンタやったから貸したのに、そんな見ず知らずの人に貸さんとってぇーや」
ということですね。なので民法でも、そのあたりを重要視しています。
ただし、裁判では直ちに解除できるといったことにはなかなかならないようで、ある程度の「転貸借を認めてもいいような特段の事情」を転借人が立証(裁判で証明すること)ができたらOKといった判断もされています。
- 賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(最判S28.9.25民集第7-9 979P)
- 賃貸人の承諾を得ないで賃借権の譲渡または転貸が行なわれた場合であつても、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、譲受人または転借人は、譲受または転借をもつて、賃貸人に対抗することができ、右の特段の事情については、譲受人または転借人において主張・立証責任を負う。(最判S44.2.18民集第23-2 379P)
ルームシェアをするための最低条件とは
なんです。だとしたら、この場合、どのタイミングで「ルームメイト関係が成立する」のでしょうか?
民法上は「口約束でも契約は成立する」ので、互いが「ルームシェアしよう」といった時から成立すると思います。
その際、ルームシェアを許した本人(その物件の住人)は、自分の賃貸借関係とのことを考えなくてはいけません。
原契約上の特約に「無断で転貸することは禁止する」という条項が入っているかの確認をすることが大切です。(というより、普通は入っています)その場合は必ず家主(マンションオーナー)にルームシェアをすることについて承諾をする必要があります。ですが「無断転貸禁止」の特約が入っているような物件では、転貸借が認められることはほぼないと思ってもらって間違いがないと思います。
もし自分が「ルームシェアを積極的にしたい」というのであれば、転貸の禁止条項がない物件を契約し、かつ、家主さんとコミュニケーションをしっかりとっておくことで、その当たりがスムーズにいくのではないでしょうか?
なんてったって「信頼関係の構築」というのが、一番大事な問題なので…
次回は「転貸借」を有効にするためにはということを考察してみたいと思います。本日はここまでです。ありがとうございました。