久しぶりのシリーズ連載です。
そもそも「賃貸借契約」って?
本来なら「転貸借の要件とは」見たいなことをエントリーしようかと考えていました。
【司法書士業務】ルームシェアトラブルのお勉強③ ルームシェアをするための最低条件とは | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
前回のエントリーです。
ですが、前提として
ということがわからずに、転貸借のことを勉強したダメだろうと思いました。
賃貸借とは
当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第601条)
とあるように
①当事者間で、ある特定の物を一定期間の間、有料で貸すことについて契約して
②上記契約に基づいて、物を借主に渡す
ということが必要になります。
今回は「ルームシェアトラブル」をテーマにしていますので、特定の物は「不動産(マンションや一戸建てと言った「建物」)」になりますが、この場合、民法という原則法に「借地借家法」という特別法が適用されます。
この、借地借家法の趣旨として
この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
(借地借家法第1条)
とあり「不動産(土地・建物)」の賃貸借契約に関しては、民法より優先されて適用されます。
家の賃貸は特別
この「借地借家法」という法律は、基本的に「借主」に有利にできている法律です。
それの典型例が
前条の異議(借地権者が申し出た更新拒絶の意思表示)は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。(同法第6条)
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
(同法第28条)
この2つです。
オーナーが借主を追い出す(次の更新を拒絶する)ために「正当事由があること」について、とてつもなくハードルが高く設定されています。
裁判での判断(判例)を幾つかあげると
- 自己使用の必要に正当性があるかどうかの判断には、賃貸人および賃借人双方の利害損失の比較考察のほか、公益上、社会上その他各般の事情も斟酌しなければならない。(大判S19.9.18)
- 8か月に及ぶ家賃滞納であっても、旧賃貸人の倒産による敷金回収不能の恐れなど、賃借人の不安心理等の事情を勘案して信頼関係の破壊はないと(東京地判H25.9.11)
など、オーナー側に不利な判例が多いのです。
なぜなら、賃貸借契約というものは「当事者間の高度な信頼関係を基礎とする継続的契約である」からです。不動産賃貸という物は「見ず知らずの人に一財産を有料で貸すという行為」ということになりませんか?そうだと、気軽にはできないのが普通です。
つまり、オーナー(当然借主もですが)は「賃貸借契約というものは単純な契約とは違うんだ」という認識を持って契約をするべきで、慎重に事を運ぶ必要があるのです。
だからと言って、借主ばかりに有利でいいのかというと、そうは問屋が下ろしません!次回は「賃貸借の種類について」書いてみようと思います。
本日はここまでです。ありがとうございました。