【司法書士業務】特別研修の課題で必ず話題に上がる「二段の推定」の本当の意味を真剣に考えてみた。

昨日は、特別研修のチューターのための事前研修を受けてきました。
【食レポ】東京飯ログ⑦:久しぶりの東京です!今年も行きまくることになりそうです。 | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
昨日のエントリーです

「特別研修」とは、簡裁代理権の認定をもらうための認定試験を受けるために、法務省が定めた100時間の研修の事です。そのため、チューターは受講生がスムーズに研修に取り組めるように、研修を進行していく役目があります。
【司法書士会】特別研修のグループ研修は、私にとっても学べるいい機会です | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
チューターのことは、こちらにも書いています。

なので、出てくる課題に関してはチューターも、内容を把握しておくことが重要になります。

必ず話題になる「二段の推定」

誰が作ったの?
誰が作ったの?

で、ここで話題に上るのが「二段の推定」に関することです。

私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する(民事訴訟法第228条第4項)

大まかな意味としては「本人のサイン(署名)や印鑑(押印)がある私文書は、たいてい本物だということにする」ということです。例えば、契約した本人の署名や印鑑がある契約書が出てきた場合ほぼホンモノであるということになります。

そして、この論点では有名な判例があります。

私文書の作成名義人の印影が、その名義人の印影によって押印された事実が確定された場合、反証がない限りその印影は本人の意思に基づいて押印されたものと事実上推定され文書全体の真正が推定される(最判s39.5.12)

要は「私文書に印鑑(印影)があれば、その印鑑の持ち主が自分の意思で押印したことにしよう」というわけなのです。

例えば、XがYに「100万円を返せ」と訴えていたとしましょう。
ここでYの名前と印鑑がある契約書が証拠として提出された場合、このことに関してお互いに認識の食い違いがなければ、契約書が正当に作成されたことが認定されます。
ですが、仮にYが「印鑑を勝手に盗まれてので、勝手に作られた」と言う反論をした場合、これについて証明することができれば、印鑑があったとしても、契約書の成立は認められなくなります。

この「二段の推定」という考え方は

書面に印鑑がある
   ↓
自分にしかない印鑑が押されているのだから、当然自分の意思で(この法律行為を理解して)印鑑を押印したからである(判例)
   ↓
本人が押印したのだから、文書そのものが本当に作られたことになる(民事訴訟法228④)

というふうに、二段階で検討されます。

「印鑑がついてあるということが結構大事だよ」ということは、皆様もなんとなく想像はされていたとは思いますが、こういった理由があるからなんですね。

署名はどういう扱いになるのか

本当にあなたサインした?
本当にあなたサインした?

では「署名捺印がある(自筆で名前が書いてあって、印鑑が押してある)場合」はどう考えるといいのでしょうか。

先ほどの判例をよく読んでみますと、

私文書の作成名義人の印影が、その名義人の印影によって押印された事実が確定された場合、

とあるように、「印影」つまり『ハンコ』についてしか言及されていません!

では署名については、

そうです。

筆跡鑑定すればいいんです。

そうすれば一発でわかります。

いくら本人の印鑑が押されていたとしても、本人の署名が本人の筆跡でなければ、それは「本人の意思で作られた文書ではない」という結論にすぐ達します。

なので、そういった場合には

「何の権限を持って、本人以外の人が本人の署名捺印をしたのか」

ということを言っていかないといけないということになります。

この署名について二段の推定が働く場面として考えられるのが、「記名押印している場合」つまり名前の部分が印刷されていて、印鑑があるような書面が出てきた場合が当たると思われます。最近ではこういう書面も多いですよね。

大事な契約の場合には、たくさん署名をさせられると思いますが、こう言った理由があるからですね。

本日はここまでです。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

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