【司法書士会】平成28年度業務研修会(訴訟法分野)「事実認定マスター講座」に参加してきた(2日目ー研修ログ)

昨日(平成28年11月6日)2日目の講義が終了しました。

昨日の研修を踏まえて

【司法書士会】平成28年度業務研修会(訴訟法分野)「事実認定マスター講座」に参加(1日目ー研修ログ) | ミナトノキズナ〜司法書士 岡田事務所
1日目の研修ログです。

昨日は、おおよそ「民事訴訟法の基礎」をグンと掘り下げてコアな部分に触れるといった講義だったように思いました。

今日は座る場所に変更がありました。こういった配慮も少しうれしいかもです。
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研修ログ

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事実認定

  • 事実を認定するということは普段の生活でもやっている事である(どのレベルで議論するのか)
  • 伝統的な喫茶店で客が「マッチと新聞とコーヒー」→注文はコーヒー(支払う意思有り)マッチはサービス、新聞は借りる(使用貸借)という風に認定する
  • 民事訴訟では一定のルールに基づいて出来事を認識すること(弁論主義・自白は証明を要しない・証拠裁判主義<憶測でいわない→経験則OK>・自由心証主義)cf.アメリカの陪審員→事実認定は「素人でも出来る」
  • 旨い事実認定をするためには社会経験が必要である。(前職の経験・業務での事柄が経験則として役に立つ)→汎用性のあるスキル
  • 「弁明」に対して裏付けをとって、事実を認定しなければならない。
  • 司法書士も事実認定をしている(東京地判H20.11.27)→運転免許証の偽造に気がつかなかった事案
  • 訴訟の争い方によって事実の認定が変わる(規範の争い・評価の争い・事実の争い)
  • 評価の争い→口頭でも評価の争いはおこる。黙示の意思表示といえるかも評価の争いである。ex.「結構です」は口頭による売買契約の意思を表示したのか
  • 黙示の意思表示の有無を判断する場合、意思表示の部分だけでは判断できず、その他のの事実を総合的に認定していくことが重要(→取り方で評価が逆になるという認識)
  • 事実の争い→推測の争い・思い込みの争い・嘘つきの争い
  • 嘘つきはきちんと司法で対応しないと行けない
  • 事実の階層①不要証の事実(争いのない事実・公知の事実)②動かしがたい事実(銀行の振り込み)③間接事実(借り主の懐具合の変化)④補助事実(契約書作成者の作成時とされる時点のアリバイ)
  • 証明とは「歴史的な証明や自然科学的証明ではない」
  • 証明度→間違いなくあるはずだ(高度の蓋然性あり)
  • 裁判官に争点について高度の蓋然性有りと認識されることが重要(ルンバ−ル事件→最判S50.10.24)(長崎原爆被爆者事件→最判H12.7.18)
  • 証拠裁判主義→あるべき書面がない・普通は作らない書面がある
  • 書面のない金銭消費貸借契約の存否が争点となる場合①当事者の関係②貸借の経緯③借り主の懐具合④借り主の借りる必要性・目的⑤貸し主の資金調達方法がポイントとなる
  • 書面(契約書・覚え書き・念書)→契約成否の判断は当事者の解釈である
  • 要件事実の判断に欠かせないところである場合は、裏付けとなる資料でもって信用性を立証していくしかない
  • 信用性をどこで判断するか(ex.密室でのセクハラの有無)
  • 経験則と推論→間接事実の積み重ねにより売買契約の成立を認めたケース<最判H10.12.8>
  • 原告の本人尋問だけで信用するのか(相手方が不明で公示送達)→裁判所の補充尋問が必要となる。
  • 事実認定の基本→直接証拠認定(あ型)間接事実推認(い型)→間接事実推認が圧倒的に多い。
  • 基本的には①証拠の合理的に評価②証拠の整合性③経験則④空白部分の推認・洞察
  • 「書証は点・人証は線」「バランス感覚と方向感覚」「葉をみる・木を見る・森を見る」「鳥の目と虫の目」
  • 証拠をよく見る→夫の暴力の診断書が「接骨院の診断書」という事例
  • 証拠をきちんと見ておけば、構成を変えて請求することも考えることが出来ることもある
  • 民事は訴訟上の事実認定→いい証拠が出なければ(いい証拠でも、いい利用が出来ない)
  • 実は、裁判官を紛らわす方が簡単にできる→そういった紛らわす訴訟代理人がいる(書記官からも噂が立つ)ので要注意→「悪事千里を走る」→アンフェアな訴訟代理人が扱う微妙な事案においては、勝つことはあり得ない
  • 同居している親子→代理権授与したという間接事実or実印を冒用しやすい(事実認定の相対性)→他の証拠で決着をつける
  • 書証の定義→文書に記載されている作成者の意思・認識を裁判所が閲読して、その意味内容を事実認定のための資料とする証拠調べのこと→書かれた状態なので固定している→書類の出来た時期が非常に大事
  • 処分証書→法律行為が記載されている文書(契約書) 報告文書→領収書・登記事項証明書
  • 文書の成立真正に基づいて作成されたものであること→文書の意味内容の信用性を考える前提
  • 二段の推定→前段(印象と同位置の印影→押印)後段(署名または押印→文書成立の真正)
  • 前段の推定を破る反証→印章の共有・印章の預託・盗用・本人による押印の可能性なし(その場所にいない)
  • 後段の推定を破る反証→白紙に署名した・変造された・押印しているものは自分の印章ではない(否認)署名部分は自分のものではない(否認)
  • 文章の成立の真正を争う場合→事実の争い 契約の解釈を争う場合→解釈の争い 書翔の記載内容を覆滅したい場合→事実の争い
  • 処分証書と報告文書の混在→処分証書に報告事項が記載をしていたからといって、それで報告文書の役割を担っていることにはならず、別の証拠で報告証拠をしていく
  • 書証は当事者の関係性と時間軸でみる
  • 重要な書証を時系列で並べていく事が大事→証拠証明書できちんと要点を押さえる
  • ダメな陳述書→準備書面を「ですます」にしただけ 断定する陳述書 おなじ事実関係の別訴訟で提出された内容の異なる陳述書 相手方を中傷する
  • 迫力ある陳述書→本人でなければ語れない事情を、より具体的に書く必要がある(暴力をふるわれた事の陳述→どのぐらいの大きさのテーブルをひっくり返したか?投げつけられたCDや雑誌で、けがしたのか)
  • 書証が出たら必ず原本を確認する→捏造や関連を装うものもある(裁判所に提出された写しと原本とで内容が異なる事案)
  • 痛んでいない会計帳簿・ホッチキスの錆・記載部分がざらざらしている(砂消し)和紙は変色しやすい
  • バインダー方式の帳簿の証明力は弱い(着脱が簡単だから)
  • 朱肉・インクの状況(インクの濃さ・濃さ等)
  • PC・ワープロのフォントによる書面作成時期・用紙・記載位置(若干のズレ・文字間隔のズレ)記載欄への書き込みで「書き始め」が欄外になっていた→信用性なし
  • 文書の作成時期→印紙・切手の発行時期・法律の改正前に作られるべき書面を「現行法」での書式で作成されている等(昭和63・平成元年)
  • 裁判官が指摘した場合→書証の撤回をしたとしても「そういう訴訟活動をする」という当事者の心証を形成する
  • 郵便番号・消費税率・市町村の名称変更等・代表者名・代表者印・契約費以降に就任した代表者の署名あるもの
  • 文書の内容や提出時期を吟味する(客観的事実との整合性・内容の不自然さの有無・虚偽文書が作成される誘因の有無)→送れて出てきた領収書の写しには注意
  • 人証→内容が固定していない
  • 「観察し・記憶し・表現する」証人の性格や能力で左右される
  • 虚偽でないとしても過剰であることがある→「私の目を見てください」という証人の目を見ても嘘である
  • 評価のポイント①→証人・本人の雰囲気・態度と信用性
  • 評価ポイント②<供述者の信用性・信頼性(誰が話すか?)>→適格性(真実把握・表現能力・コンディション)誠実性(利害関係・善意・真摯・同様の有無・人柄)
  • 評価ポイント③<供述内容の信用性・信頼性(何を話すか?)>→自然性(供述内容の流れ・経験則に合致・弁論の全趣旨に矛盾していないか)合理性(根拠と首尾一貫性)整合性(顕著な事実・確実に認定できるじじつ ・間接事実・書証・他の証言等の間で矛盾をしていないか)
  • 書証があっても事実認定か難しい場合→内容の不備・馴れ合いがあった・矛盾する・提出されるべきものがない等
  • 人証があっても事実認定が難しい場合→証言が曖昧・評価的な事実ばかり・承認の事件との利害関係の有無が隠れている・双方とも虚偽・証人同士が口裏合わせや馴れ合い表現
  • 事実の位置づけを考える(→中身を見ないと分からない)
  • どうしたら事実認定力がつくのか→理論を学び実践(経験)すること「事実認定力をつけるという意識とOJTでの実践」

本件(事前課題)の事実認定

  • 単独事件と合議事件との基準→事案の複雑化・訴額での基準(1億)・社会的影響があるか・単独の負担を減らすため
  • 複数の抗弁が出たときは順番は基本的にない(全部等価値)→cf.相殺の場合は判断理由にも「既判力」が出る(→別の債権を使うから)ので、判断の順序は最後になる→一番価値のあるものに絞って事実を認定する事が有効のことかある
  • 争点を決定つけるものは出ていないが、証言とは食い違っているようなものもない
  • 文書送付嘱託(登記申請書)→登記については争いが双方なかったので、そこまでする必要はなかったのでは?
  • 本件では人証で決定づけるような事案→代理権の授与・表見代理の要件(基本代理権)→直接証拠がない場合は間接事実の積み上げ
  • 直接証拠を人証で得るには「〜を認める」ということをいわせればいい→否定している以上は、その否定していることにつき真実かどうかを他の人証でみる
  • いろいろな事実を重層的に見ていく必要がある(一つの証言で相対的に評価が分かれる事がある)
  • 事実関係(尋問)の切り取り方(見方)をみて、抗弁等にどう当てはめていくのかということを考えていくようにする。
  • 裁判官に介入尋問もある→結構いやがられる
  • バランス的にどうとらえるかを「評価ポイント」を参考にしていく
  • 認定の手法→有権代理の間接事実を積み上げていった結果、それが認定される。反対の事実もで出来ているが、それを証言している者に信用性が乏しいので、認定されない。

まとめ(質問)

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  • 抹消登記の判決には原因は主文に明示せず、判決理由中に出る→判決登記をするときは「理由中の判断」をみて登記原因を決めている→もし分からなければ、登記原因を「年月日判決」を記載する(S29.5.29民事局長回答)→本当は主文に原因を記載した方がいいのではないか?
  • 二段の推定では「印鑑の共用」という時点で崩れる(署名が本人のものでなかった場合でも228④の前提が崩れる)
  • 必要性がない・相当性がない・関連性のない陳述書を書いてしまった場合、名誉毀損の対象に鳴り、損害賠償責任を問われる→そうやって膨らませることが、トラブルの元となり、裁判が長引く
  • 以前は証人に会うことも許されなかった→今は「聞くべき事を聞いてもらいたい」という当事者が満足するために、事前に打ち合わせをするのが主流→今は「弁論準備手続」をした上で交互尋問しているので、精度は上がっている
  • 準備書面を「ですます調」にした証人尋問は意味がない→当事者本人の肉声でしゃべるということに意味がある。(どっちに転ぶか分からないものであれば、なおさらである)

まとめ(研修の総括)

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最後の「事前課題に関する事実認定」の講義では、証人尋問調書を細かく読み取って行くことで「争点について、どうやって人証から読み取って行くのか」ということを、かなり丁寧にやっていただきました。

そこで、かなり双方向の講義というのが、有用だったと思います。ただの答え合わせでも終わらせることも出来るところを、あえて受講生に答えさせることで、理解を深めていくというのが、良いと思いました。

もがきながら取り組んでいた事前課題の自分の回答を、最後の講で見返してみると「全然あかんやん」と素直に思えました。それは尋問調書に書かれていた事実を「細かく読み取って行く」ということが出来ていなかったからですね。

どうしても裁判事務ということで、かなり萎縮しながらの(抵抗しながらの)取り組みを今までしていたと思うのですが、事実の認定は「人生経験」のエッセンスも必要なんだということも理解したので、意識して今後は取り組みたいと思います。

今回の必須図書はこちらです。

民事事実認定論

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おまけ

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今日のお昼時に「上等カレー」を発見しちゃいました!

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久しぶりに、こういう「まろやかカレー」を食して、午後の部も乗り切りました!
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というわけで、2日間の長丁場の研修で「ただ乗り切る事だけ」を考えていたんですが、終わると寂しさを少し感じました。こういう研修会には、参加をしていこうかと思っています。今回は大阪だったので近場でしたが、また関東での研修会なんかだと、若干雰囲気も変わると思うので、それはそれで行く価値もあると思います。

本日はここまでです。有り難うございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。