【司法書士業務】司法書士の専門家責任⑦〜登記義務者と登記権利者との利害対立洞察<その2>〜

本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第7回です。

登記申請を頼まれた時には、早く動くことが求められる

photo credit: Viernest via photopin cc
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私たち司法書士は、依頼者様から委任をされた時には「委任内容にそった登記申請を遅滞なく(速やかに)履践する事は、その基本的な義務(司法書士の専門家責任p73)」となっています。まぁ、そうですよね。

ここで、ちょっと豆知識です

私たちが法律専門家がよく出くわす時間を表す用語の種類のなかに「速やかに」「遅滞なく」「直ちに」とあるのですが、コレってどう違うのか分かりますでしょうか?実をいうと、私もイマイチ分かってません!

で、本書(司法書士の専門家責任)に書かれていたので、ちょっと勉強がてらご紹介してみます。

「速やかに」
できるだけ早くという意味があるが、訓示的な意味で使われる、その違反が直ちに違反になるとは限らない。
「遅滞なく」
時間的即時性は強く要求されるが、その場合においても理由ないし合理的な理由に基づく遅滞は許されると解される。
「直ちに」
最も時間的即時性が強い。違反した場合には違法と評価される事が多い。

前回の記事からの続きになるのですが、登記をする当事者が対立しているような場合、その双方から登記の委任を受けている司法書士としての立場として、どう考えて行動するのかについてですが、これはケースによっていろいろと考えて行動する必要があると思います。

本書に載っていた事例として「金融業者がある司法書士に根抵当権設定登記を依頼したところ、4か月ほど放置をしたために、その業者よりも先の順位で次々登記がされたので、この金融業者が被害を受けた」という事案(詳細は司法書士の専門家責任74P)において、以下の通り解説がされています。

本件根抵当権設定登記申請手続きの委任を受けたY(司法書士)は、特段の事情がない限りは、受任後合理的に手続きのために必要とされる期間内に手続きを進めるべきであり、その期間をはるかに過ぎたと評価せざるを得ない約4カ月後に至って他の根抵当権設置登記に遅れて本件根抵当権設定登記手続をなしたことは、Yに、委任の趣旨に反する債務不履行があったものとして、その結果X(金融業者)に生じた損害を賠償する義務があるというべきである。(司法書士の専門家責任75P~一部加筆~)

しかも、この事例は金融業者が「速く登記を入れてくれ」といって、司法書士に対し報酬等をすべて支払っているにも関わらず、この登記を後回しにしたといったケースだったので、「事情があった」としても、4か月もの放置して、その間何も連絡がないというのは前回にも書きましたが「報告義務」もなされていませんね。

ただし、

Xは、4か月もの間Yから登記事務処理等の報告もないのに調査をせず、A(債務者)に対する貸付を続け、他の抵当権設定登記が経由された後も1800万円の貸付をし、損害が増大する原因を作ったという事情があり、この点においてXにも過失がある(司法書士の専門家責任75P~一部加筆~)

というとおり「(金融の)プロなら、調査せんかい!」と裁判所は判断しています。ですが、当事者の方がプロではないような場合は、その「権利を擁護する」われわれ司法書士はキッチリと報告したり手続きを進めていく必要があるのです。

つまり

「遅滞なく」登記申請手続を進めることは司法書士の基本的職務であり、司法書士が登記義務者と登記権利者の双方から委任を受けた場合でも、原則として変わらない(司法書士の専門家責任76P)

わけです。

とにかく真っすぐに....
とにかく真っすぐに….

というわけで、本日は司法書士の専門家責任のレビュー第7回でした。

本日は、ここまでです。ありがとうございました。

この記事を書いた人

岡田 英司

神戸市にある湊川神社の西側で司法書士業務をおこなっております。

業務のこともそうですが、Apple製品、読書、習慣化その他雑多なことも書いていくことで「自分をさらけ出していって、少しでも親近感のある司法書士でありたい」と考えております。

お気軽に読んでいただければ嬉しいです。