本日は「司法書士の専門家責任」のレビュー第9回です。
司法書士の書類調査の責任はどこまでなのか?
前回の投稿から大分時間が経ちましたが、引き続き「司法書士の書類調査の責任」という問題を考えていきたいと思います。
「登記権利者及び登記義務者の双方が同一の司法書士に登記手続きを依頼する場合において、双方がそれぞれ登記手続に必要な書類の一切を司法書士に交付し、その際司法書士が委任状に押捺されている印影が印鑑証明書のそれと一致するか否か等を審査して委任を受けた登記手続が即時可能であることを確認し、その確認を待って双方の決済を行う(司法書士の専門家責任p99)」のが一般的です。
ですが、登記手続の委任がなされていないのであれば、そこには書類調査の義務ははっせいすることはありません。(司法書士の専門家責任p99を要約)
つまり
将来委託することを予定してこれらの書類を預けた場合でも、その段階で直ちに司法書士登記書類の真否等についての調査義務が生じるとはいえない(司法書士の専門家責任p100)
ことになります。
ちなみに、司法書士の登記業務は「調査・確認・判断の段階」(前段)と「手続に関する書面を作成・調製し、登記申請手続を具体的にする」(後段)に分かれます。少し前は後段業務に重きを置いていたようですが、今は「委任契約がなされた以上、司法書士が登記申請をする前提として一定の登記書類調査義務を負う(司法書士の専門家責任p101)」ので分けて考えずに一連のものとして判断されています。
偽物の「権利証」との戦い
権利証というのは「その不動産の所有者である」ということを証明してくれる、すごく重要な書面です。和紙で作られて、上記の写真のような「登記済」というハンコが押されているものなんですが、このハンコが偽造されるケースがあります。私は未だ、そういうことにであったことはございませんが、稀に巻き込まれるということもあるということも伺います。
司法書士は、依頼された登記手続を遂行する過程において、申請添付書類、殊に登記義務者の権利に関する登記済証のように重要な真正に成立したものであるのか否かについては慎重に検討し、その職務上の知識及び経験に照らして、一見して直ちに分かるような記載内容について不合理な点があれば、これを調査して依頼者に告げる義務があるというべきである。(司法書士の専門家責任p104)
もし、司法書士がこれを看過した(見逃した)ような場合には、時として損害賠償の責任は免れられないということになることもありうるということです。
ただし、
公文書(戸籍謄本・印鑑証明など)については、一般的には、当該書面の形式が整っているか、登記簿ないし書面相互との対照との審査をもって足りると解される。(中略)委任状の偽造が巧妙だった(登記官も看破することが出来なかった)ことから、司法書士の義務違反を認めなかった。これは書類の真正を疑うに相当な理由を欠いていたということになる。(司法書士の専門家責任p109)
とあるように一目見て分からないような場合にまで、責任までは問われないようです。
久々のレビュー
このレビュー、久しぶりにやりました。というのもこれについてはPCからしかできないからなんです。今、親指シフトを練習中なのでやるのに少し勇気が必要でしたが、前に進んでみようと決意して、がんばってみました。
やっぱり時間はかかりましたが、やって良かったなあと思っています。これから少しずつ増やしていきたいと思います。
本日はここまでです。ありがとうございました。